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文: 久野麻衣 写:松村雄介
ーご自身で公開している「okkaaaが影響をうけたサウンド」というプレイリストには宇多田ヒカルさんがトップに来ていますがやはり一番影響を受けているのは彼女になりますか?
そうですね。宇多田ヒカルさんと岡村靖幸さんが大きな影響を与えてくれた二人です。僕の家では毎朝J-Waveを聴いてて、宇多田ヒカルさんはよく流れていたし、カーステレオでもよく流れてました。岡村靖幸さんは親の影響で好きになって、そこからPrinceも好きになって。エッジの効いたポップスにハマってたんです。その後はR&B的なサウンドに惹かれていったのでD’Angeloとかも聴くようになりました。
ー宇多田ヒカルさんは久々にツアーを開催してましたよね。
そのライブに行ったんですけどすごく楽しかったです。実在するんだって思いました(笑)。
ー宇多田さんのどういう部分に惹かれたんですか?
父親と一緒に「Heart Station」を聴いてるときに「これ韻踏んでるんだよ。」って言われて、ああいう日本語の使い方とか、歌詞の使い方ってすごく素敵だと思ったんです。しかもその中にJ-R&Bみたいな、普通のポップスにはないようなおしゃれな感覚があったのも大きかったですね。
ーバックグラウンドとしてはJ-POPの影響が大きいんですね。
そうですね。日本的なサビの使い方とかは、ずっと聴いてきていたから自分の曲にも影響していたりするのかなとも思います。
ーでもPrinceやD’Angeloなど洋楽も好きなんですよね。
それは岡村ちゃんの影響なのかな。「Princeをオマージュしているんだよ」って聞いたときに、どんなんだろうと思って聴き始めたんです。岡村ちゃん自体が本当にエッジの効いたポップスだったから、プリンスとかを聴いても超かっこいいって思うようになってたんだと思います。
ー音楽を始めたきっかけはなんだったんですか?
もともと世界史を覚えるためにラップをやってたんです。そこから自分でtofubeatsさんの「水星」とかを使って歌詞を書いて歌ってみたりし始めました。その当時SoundCloudラッパーみたいなのを色んな人がやっていたので、入りやすかったんですよ。
ーそこから現在のような本格的な活動を始めたのはどうしてですか?
大学生になって、自分にどれだけの価値があるんだろう、個人時代を生き抜くためにどうすればいいんだろうって考えたときに、武器の一つとしてそれまでやっていた楽曲制作をちゃんとやってみようかなと思ったんです。
ー表現方法でいえばミュージシャンとしてだけでなく文筆家としてご自身のメディアでエッセイなど書かれていますよね。昔から文章くのが好きだったんですか?
最初に文章を書くきっかけになったのは自分で始めたAAAのファンブログでした。そこから書くことが好きになって。思ったことを文字に起こしていくと自分の考えも整理されるし、何かの課題に対する持論を述べることが好きなんです。そういう持論を述べるようなブログを高校生の時に始めて、それが今も続いていている感じです。
ーそのブログはどういう題材で書いていたんですか?
高校生の頃は評論っぽいものを書いてました。「CDが売れなくなっているってのをどう解決していくか」とか。最近は、自分を表現する手段としてエッセイという表現方法がすごく好きになってきました。星野源さんのエッセイがすごく好きで、ああいう文章を自分でも書きたいなと思います。
ー他に好きな作家さんはいますか?
村上春樹さんですね。ああいう夢をみているような、捉えどころのないような感覚がすごく好きで。言い回しもすごく好きなんですけど。
ーそこはokkaaaさんの楽曲にも通ずる部分がありますね。
確かに影響は大きいかなとは思います。
ー歌詞を書く際には意識していることはありますか?
“ワビサビ”みたいな倫理観が僕の歌詞を構築しているなとは常に思っているんです。自分を表現しようと思ったときに、日本に住んでるからという理由でアイデンティティが機能しているのもあるんですけど、それとは別に今のトレンド感として、グローバル化によってラテンとかアジアとか“地域性の特性”が最近再発見されてきたところがあるなと思っていて。そういうトレンド感を自分で編集したい、取り入れたいなと思ったので、日本の特徴みたいなのは生かしていきたいなと思っています。
ー先日リリースされた「シティーシティー」はどういったテーマで制作されたんですか?
僕の今の楽曲を作る上での大きなテーマが“分断”なんです。分断と排除が進んでいるフィルターバブルの世界を自分の曲にできないかなと思って。Twitterとかでもたくさん好きな人をフォローできるじゃないですか?でもフォローしないと知らない世界があるし、一歩出れば全然関係ない世界が広がっている。その感覚は今のSNS時代を生きているからこそ感じることだと思っていて。自分が曲を作るなら、デジタルエイジを語りたいんです。
そのテーマを今回は“人間”と“獣”という世界観に落とし込みました。「シティーシティー」というタイトルの一方のシティーは“人間”で、もう一方のシティーは“獣”として分断を暗喩する表現方法で書いてみました。
ー“人間”に対して“獣”を選んだ理由は何ですか?
獣を選んだのは“人称”という概念をなくしたいというのが着想でありましたね。
ーシティーという舞台にはまた何か意味があるのでしょうか?
僕は東京生まれ下町育ちなので、東京が自分を構成している要素の一つなんです。大好きだし、常に憧れを抱いているから、シティーというものが大きな存在で、それを書きたいなと思って舞台をシティーにしました。そこは“分断”というテーマではなく、自分の文脈からの要素ですね。
ー東京のどんなところが好きですか?
昔は東京の無機質な感じを書くのが好きだったんですけど、今はもうちょっと東京の面白さを書きたいと思っていて。まだ噛み砕けてはいないんですけど、無機質の中にも人の優しさというか、温かみが垣間見れるところがあって、それが東京の良さなのかなって思います。
ーそれは下町育ちだからですかね。
確かにそうかもしれませんね。温かさを思い浮かべる時は下町周辺ですね。
ーそういった歌詞を書くときと、エッセイなどの文章を書くときと、それぞれどんな違いがありますか?
歌詞は定型的じゃないから、自由に書けるのがすごい好きなんです。何か固まってないものを作る、抽象化させる。そういう感覚は他にはないですから。エッセイなんかの文章は、打って変わってちゃんとした定型文で伝えたいことをしっかりと書くことに軸を決めないといけないので、その違いはあります。似てるところもあるんですけど、そこで棲み分けしてます。
ー今のご自身のテーマは“分断”だとおっしゃってましたが、昔からそのテーマで歌詞も書かれてるんですか?
昔は体験したことにエモさがあって、「こういうことやったんだぜ」とか「こういう自分ですよ」って書くのが凄い好きだったんですけど、最近は「こういう世界観を作ろう」って歌詞を書き始めるので、自分にあった事とかが出発じゃないんですよ。GarageBandで曲を作ったり、リリースしたり、創作そのものがエモいと思っていて。
ー目標を達成していく為のプロジェクトを進めている感覚ですね。
そうですね。僕の音楽活動はokkaaaっていう自分を推し進めるための一つのプロジェクトだと思ってます。でも音楽だけが先行しちゃいけないなと思っていて。文筆のほうも自分を構成するものなので一方が欠けてしまうともう一方もなくなっちゃうんです。全部まとめて一個の自分なんですよ、僕の中では。
ー活動を始めて1年程になると思いますが、自分の中で一番の変化はどんなことですか?
ライブを始めたのは大きいですね。今までは宅録してそのままサウンドクラウドに上げるのが好きなタイプで、自分の音楽でライブをすることはなかったので。
ーライブ活動を始めてみていかがでしたか?
15分とか30分の空間と時間の中で、どういった空間デザインをしていくかっていう曲とはまた別のアプローチだったんで凄い面白くて。どういう風な筋、軸を見せていくかを考えるはアルバムを作るのに似てるなって思いました。なのでライブをやるようになってから、アルバムを作ってみたいなっていう思いも生まれましたね。
ー初めてのライブはどうでしたか?
緊張とかはなかったですね。そもそも自分の曲を誰かの前で歌うこと自体エモくて、「え、そんなことやっていいんですか?!」って感じでした。
ー人前で歌えることの喜びの方が大きかったんですね。
そうですね。だからこそ、「そういうところまで来たんだな、ここは後に引けないな」って思いました。音楽を頑張ろうっていう決断というか、そういうところまで自分をちゃんと持って行ってあげようって。
初めて人の前で歌ったのは自分が主催したイベントだったんですけど、これからの音楽活動をする上で大きな意味になりました。
ー今の目標はどんなところに定めていますか?
「okkaaa君がしてること面白いから一緒に仕事しましょう」って言われるようになりたくて。それができるようになるまで、自分の活動を進めていきたいですね。当面の目標としてはワンマンをやりたいです。
ー演出とかも楽しみですね。
それもやりたいですね。あと今は小説を書きたいと思っているので、2019年にはそれもやりたいです。自分の表現のバランス感覚を保ちつつ、2019年はもっと精力的に頑張ります。
ーokkaaaさんは2019年で20歳になるんですよね。“20歳=大人”と世間ではなりますが、自分もまだ子供だな、早く大人になりたいなとかって感じたりしますか?
早く大人になりたいっていうのは前からあったんですけど、最近は18,19の間をずっとぐるぐるしてるのが最高だなって思って。それこそ村上春樹の世界じゃないですけど、その感覚が最近出始めちゃって、ちょっと寂しいですね。それも“詫び寂び”というか、失ってしまうものをとどめておきたいっていうか。
ーそういう思いがまた作品に表れたりしそうですね。
10代だからこそ書ける歌詞もあるんだろうなとは思ってます。だからこそ20代になったらどんな歌詞になるのか楽しみです。
ー今しか書けないことと考えると、“フィルターバブルの世界”のような今の時代と自分を紐づけることもその一つですよね。
時代性を常に読んでたいなっていうのはありますし、ヒップホップが今凄い盛り上がってるのは、時代性を読んでるからだと感じていて。もっと大きなくくりで言えば、東日本大震災以降の言語観を自分で持ってたいなって思うんです。あれ以降Twitterの利用者数がぐんと伸びて、いろいろな言葉がインターネットの中に出てきた。“インターネット語”じゃないですけど、そこを背景として歌詞を書いていきたい。それが20年前とか30年前には書けない、今にしか書けない言葉の感覚なのかなって思いますね。
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