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一十三十一の音楽を聴いていると、夢の中にあるリゾートへと誘われるような、心地の良いトリップを味わえる。日常と地続きの場所でありながら、確かに煩雑な現実とは一線を画した異空間…こうした束の間の逃避行こそ、ポップミュージックから受け取れる最良の時間のひとつだろう。「“ここではないどこか”へ連れていく、開放感のあるサウンド」が理想という彼女は、これまで持ち前のセンスと多くの気の置けない同志と共に、良質な作品をいくつも発表してきた。中でも2012年にリリースした『CITY DIVE』は、10年代シティポップにおける素晴らしき1枚だ。
今回のインタビューでは彼女のポップソング原体験を出発点に、その音楽遍歴を辿る取材を試みた。キャリアの転換点となった『CITY DIVE』の制作背景や、先日立ち上げたファンサイト「toi toi toi」についてのエピソードなど、少し足早ではあるがたっぷりと語ってもらっている。なお、インタビューの最後には、「BIGSUN on my mind -80’s only-」と題したプレイリストも用意してもらった。そちらも併せて是非一十三十一の世界を楽しんでもらいたい。
ー一十三十一さんは、作詞に関してはどなたからの影響が強いと思いますか?
両親が私の生まれた78年から、北海道でトロピカルアーバンリゾートレストラン・BIG SUNを始めたんですね。そこでは山下達郎さんや大滝詠一さん、吉田美奈子さんや大貫妙子さん、そしてユーミン(松任谷由実)などブリージンな音楽がかかっていて、言うなれば生まれる前から聴いていました。リアルタイムで聴いていたのが『DAWN PURPLE』、『TEARS AND REASONS』、『U-miz』辺りで、中学生の時はコンポから流れる『DAWN PURPLE』を聴いて目覚める朝でした(笑)。作詞に関しては、子供の頃から今なおインスパイアされているのは、ユーミンさんてことになりそうですね。
ー素晴らしい(笑)。
達郎さんや大滝詠一さんの音楽から感じる、“ここじゃないどこか感”みたいな世界観も、ずっと憧れています。北海道に住んでいながら、両親がバリバリの西海岸の店をやっていたので、いわゆる北海道の感じとは違っていて。365日アロハシャツみたいな世界で、雪が降ろうとうちは気持ち良い風が吹いている、みたいな環境だったから(笑)。ちょっとトリッピーな感じが私のルーツにはありますね。
ーなるほど。
ただ、思春期になると私の趣味が渋谷系に突入していくんですね。お兄ちゃんがフリッパーズ・ギターのファンで、その影響で私も中三の終わりから高校にかけて、どっぷり傾倒して。渋谷系の音楽全般的にだったり、ORIGINAL LOVEもよく聴いていました。特に高校時代は、小沢君(小沢健二)のことしか考えてなかったと思います。
ー(笑)。今やコーラスを担当されているから凄いです。
19年の時を経て、彼のアルバムに自分の声が入っているのはちょっと信じられない事件です。
ー小沢さんの楽曲のどんなところに魅力を感じていました?
犬(『犬は吠えるがキャラバンは進む』)も大好きでしたけど、よく聴いたのは『Eclectic』です。言葉遣いも独特で面白いし、ポエティックだけど邪魔にならないというか。言葉がサウンドに馴染みつつ、それでも主張してくる感じが素敵です。
ーなるほど。
日本語って言葉が強いから、ダンスミュージックに乗せるのはちょっと難しいですよね。でも『Eclectic』はそこが絶妙なバランスで成り立っているんです。コーラスワークも斬新だし、サウンドの透明感も聴いたことがなかった。NYで録ってるせいか、“日本じゃない異国のどこか”みたいなムードがあって、その頃小沢君が住んでたであろう土地の空気を感じられる。今でも凄く好きなアルバムです。
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