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文: 村田タケル 編:Mao Oya
DIGLE MAGAZINE読者の皆さまこんにちは!
この連載は私が運営しているインディー・ミュージック・パーティー<School In London>のプレイリストと連動し、最新の海外インディー・アーティストの楽曲紹介をしてます。気に入ったら、ぜひプレイリストもチェックしてもらえら嬉しいです。
サウス・ロンドンを拠点にするバンドの中では珍しく(?)Vampire WeekendやDirty ProjectorsのようなUSインディーからの影響を強く感じるPushpin。アコースティックサウンドで奏でられる彼らの一音一音には、瑞々しい生命力を感じることができ、その奇天烈なリズムにも自然と身体を預けたくなるだろう。個人的な話で恐縮だが、僕がフジロックフェスティバルで観た生涯のベストアクトの一つ、2010年のオレンジコートで見たDirty Projectorsの演奏に匹敵する衝撃を彼らの楽曲から受けた。バンドは2021年中に4枚のシングルをリリースする予定で、そのうちの3枚がリリースされている。
R&Bという曲名が思い違いをさせるこの楽曲は、今年4月にリリースしたデビューアルバム『New Long Leg』が全英チャート4位を獲得したDry Cleaningに次ぐポエトリースタイルと現行UKのエッジーなギターサウンドのコラボレーションが溶け合った珠玉のロックソングだ。ベースラインが心地良く鳴るミニマルなイントロに、サビ部分では一転してSonic Youthを彷彿とさせる歪んだギターサウンドがクライマックスまで勢いよく突き抜ける展開に心を奪われる人も多いだろう。
Sports TeamやHotel Lux、Furを代表例に昨今のUKインディー・ギターロックの注目株を一早く手掛け、日に日に存在感を強める新興レーベル〈Nice Swan Records〉による『Nice Swan Introduces』というニューカマーのピックアップ企画があるのだが、今回の楽曲はそこからのリリースとなっている。彼らはUKインディーが活況を見せているはロンドンだけではないということを象徴する都市の一つでもあるリーズを拠点として活動中。
現在のUKインディー・ギターロックの活況は実際に登場したアーティストだけではなく、彼らに積極的にステージを与えていったベニュー、そして友人関係にあった二人の青年が立ち上げたインディペンデントマガジン『So Young Magazine』との相互作用によって少しずつ醸成されていった。その『So Young Magazine』が2021年に立ち上げたレーベル、〈So Young Records〉の第1弾アーティストとして契約したのが、ロンドンを拠点に活動するFolly Groupである。廃墟で行われるダンスパーティーのように、狂乱的なリズムやサウンドをオーディエンスと一緒に共有し、夢中にさせる。ドラムがメインボーカルを務めている点も含めて、カナダのCrack Cloudに対するロンドンからの対抗馬のように感じる。6月11日にデビューEP『Awake And Hungry』をリリース予定。
UKはマンチェスターのスリーピースバンド、The Early Mornings。雷が落ちるような激しいギターリフでスタートするこの楽曲は、直後に変則的で角ばったポストパンク調に転じる。躍動するそのエネルギッシュな展開を経て、終盤にはまるで透き通った早朝を迎えるかのようにシューゲイザー的な深淵な景色へと変化する。ボーカルのAnnie Leaderのぶっきらぼうで擦り切れた歌声にはThe Breedersのような90年代USオルタナティブ・ロックの香りを感じるのも魅力だ。バンドは6月18日にデビューEP『Unnecessary Creation』をリリースする。前回紹介したUS・ケンタッキー州のWomboを気に入ってもらえた方には是非オススメ。
UK・ケント州のパンク・デュオSlavesの片割れLaurie Vincentと、これまでプロデューサーとしてのキャリアがメインだったJolyon Thomasによるニュー・プロジェクト。2015年には<SUMMER SONIC>でも来日を果たしたSlavesはその音楽性から”最凶のパンク・デュオ”とも呼ばれているが、LARRY PINK THE HUMANの音楽はエレクトロニックな要素も積極的に取り込んだポップな音色に仕上がっている。
Slavesのプロデューサーも担当していたJolyon Thomasは、これまでM83やRoyal Blood、Kendrick Lamarなど多種多様な音楽に携わってきたが、(彼が手掛けた作品がこちらに纏められているが、見事なラインナップである http://www.jolyonthomas.com/)裏方ではなく表現の主体者として携わることで、彼らのクリエイティブの可能性は大きく拡がったようだ。昨年末にリリースされた「WASTED DAYS」ではIDLESのJoe Talbotを客演として迎えているように、Slavesのサブプロジェクトとして捉えるには勿体無いほどに本気度が伺える。今後の活動も要注目な新しいプロジェクトだ。
グズったままに大人になり、外の世界を知る。今にも泣き出しそうに絞り出される歌声。US・ニューヨークを拠点に活動するblairは、理想と現実のギャップに対する様々な感情を一つも零すことなく音楽にぶつけている。表現豊かなタメの効いたドラミングの中で鳴るローファイでエモーショナルなギターと歌声。テイストが近いアーティストとしてはPavementやSnail Mail、Girlpoolが思い浮かぶが、彼らの音楽の魂の宿りは唯一無二な凄みを感じる。2019年にデビューしたばかりの新しいバンドではあるが、『Pitchfork Selects』や『Rough Trade Recommends』といった有名プレイリストにもリストインし、急速にファンベースを獲得している。
今回は6組のアーティストと新曲の紹介でした。お読み頂きありがとうございました!
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