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文: 黒田隆太朗 写:Kazma Kobayashi
我々はずっと孤独なのかもしれない。人生の中で多くの出会いと別れを繰り返す。そこで喜びと悲しみを分かち合い、傷つけ合って愛を知る。やがて諦めることを覚え、次の世代に未来を託すだろう。そして、ひとり切りで最期の時を迎えるのだ。だが、叶わなかった夢や、果たせなかった約束も、きっと誰かが繋いでくれる。そうやって生と死が巡っていくのだろう。
Ring Ring Lonely Rollssが久しぶりのアルバム、『うまれてきてよかった』をリリースした。ロックオペラを掲げて作られた、全12曲で描く“愛と孤独”についての物語。詳しくは3人のインタビューに譲るが、生まれてから死ぬまでの一生を描いたアルバムである。
そこには彼ららしい小気味良いロックンロールもあれば、強気で得意気なハードロックもあり、痛快なオルタナティブロックなんかも聴こえてくる。あるいは、おおらかに包み込んでくれるようなミッドバラードや、斜陽の時を思わせるノスタルジックなナンバーもある。そして、演劇のラストを思わせるクラシカルな1曲で大団円を迎えるのだ。
作品の流れを強く意識しながらも、個々の楽曲がバラエティ豊かなものになったのは、人生の浮き沈みを表現するためだろう。我々の人生は寂しくも華々しいものだと、この音楽は力強く訴える。<言葉とメロディは死なない>のだと、彼らは高らかに歌っている。
ー「ロックオペラ」と聞いて最初にイメージする音楽は?
大坂元紀:
The Whoの『Tommy』かな。あとはDavid Bowieのアルバムとか、『ロッキー・ホラー・ショー』とか。浦野けんじ:
僕はQueen。森ともか:
私もQueenだなあ。浦野けんじ:
『オペラ座の夜』とか『華麗なるレース』とかね。メンバーみんなQueenは大好きです。ー新作には「1974」という曲が収録されていますが、それこそ『シアー・ハート・アタック』が出た年ですしね。
大坂元紀:
あ、そっか。最高じゃん。それだよ。浦野けんじ:
それ使おう(笑)。ー意識して名付けたわけじゃないんですね(笑)。
大坂元紀:
「1974」は語呂で決めました(笑)。タイトルに意味はないんです。ーただ、音楽的には実際「King」以降のリリースでQueenの影響がありますね。
大坂元紀:
「KING」を録った辺りでけんじくんがメンバーに入って、ギターヒーローみたいな感じが出てきたし、ライブでも重い音の方が合うようになってきたんですよね。ピアノとギターの両サイドが活躍できる音楽を考えてたら、一旦そこら辺やってみようかなと。ーなるほど。
大坂元紀:
あと、シンプルに若い曲がライブで歌えなくなってきたんですよね。めちゃくちゃ売れてれば同じ路線でやることもあるかもしれないですけど、人は変わっていくから。歌いたいことも変わるし、作る曲も一緒に歳とっていかないと気持ち悪いんですよね。もちろん前の曲も愛してるのでその内やると思いますが、その時々でやりたい音楽をやろうっていう感じです。ー「ロックオペラ」を志向した理由はなんですか?
森ともか:
最近ハードロックとクラシックの二大政党みたいなのを確立してきた感じはあるよね?大坂元紀:
そうだね。浦野けんじ:
確か最初に「Killer Song」作ったんですよね。その頃はアルバムのことは考えてなくて、シングルで出そうって話でこの曲を録ったんですけど…動き出そうっていうタイミングでコロナ禍になってしまって、ライブも何もできなくなって置いといたんですけど。「Killer Song」は録っていく内にどんどん自分達の中で良くなっていって、そこで“ロックオペラ”というテーマが出てきた気がします。大坂元紀:
歌詞を書いてる時にも、同じ主人公でひとつの作品を作った方が、自分のやりたいことが伝わるかなって。自分の作る曲は全部“生と死”みたいなテーマがあるし、12曲を通して『フォレスト・ガンプ』とか、『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいな、人の一生を描くような音楽を作りたいと思いました。ーそれでアルバムを通してひとつのストーリーが浮かんでくるような作りになったと。
大坂元紀:
そうですね。アルバムで聴いてもらいたいっていうのが、一番最初にありました。なので“コンセプトアルバム”って言った方が早いんですけど、それ言ってもあんまり伝わらないかなって思って。それでロックオペラを掲げて、生まれてから死ぬまでの時間の流れを書いた12曲を作ってアルバムにしました。ー曲数には意味があるんですか?
大坂元紀:
人が成長していく流れであると同時に、春夏秋冬の季節にもなっていて、1月から12月を描いた作品にもなっています。なので12という数字には拘りましたね。具体的には1曲めは12曲目の逆再生から始めるようになっていて、2曲目の「Killer Song」が生まれ変わりの曲です。ー生まれ変わり?
森ともか:
本当は「Killer Song」が一番最後だったんです。赤ちゃんとして生まれるのが今3曲目になっている「MILK」で、「Killer Song」はわかりやすく言うと死を描いたもの。そこで死んで生まれ変わるという楽曲です。ー生まれ変わるところから始まり、赤ちゃんから年老いるまでのストーリーが続いて、最後には逆再生でまた戻っていくと。
浦野けんじ:
通しで聴くと聴こえ方が変わると思うので是非流れで聴いてほしいですね。大坂元紀:
繰り返してほしいよね。森ともか:
若い頃の元気な感じで始まって、途中から何かを諦めたりしながら、俯瞰して人生を見れるようになって、それから結婚して家庭を持って、だんだん寂しさを感じながら孤独や死と向き合っていく…というストーリーを、通して聴くことで感じてくれたら嬉しいです。編集部のおすすめ Recommend
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