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文: 黒田 隆太朗 写:山口こすも
大事なことを誰にでもわかる言葉で伝える、むぎ(猫)は凄いアーティストだ。だから彼は老若男女に愛されてる。一度は永眠した猫が、5年間の天国暮らしの後、カイヌシによって新しい身体を与えられ蘇生。歌も踊りも楽器も演奏こなしちゃうハイスペックな猫として、二度目のニャン生(人生)を謳歌している。今年は3月にリリースした『君に会いに』でメジャーデビュー、2年連続でRISING SUN ROCK FESTIVALに出場するなど、持前のポップセンスと愛らしいキャラクターを武器に順調にキャリアを進めた。彼の初めてのEPが『ねっこほって e.p.』だ。
前作同様1曲毎に音楽性が変わっていくヴァラエティ豊かな作品で、DJみそしるとMCごはんを招いた「ミラクルバウムクーヘンアドベンチャー」や、バスタオル愛をボサノヴァに乗せる「My Favorite Towel」など、彼のアイディアとユーモアをたっぷりと楽しめる作品である。今回の取材では、むぎ(猫)のルーツとなった楽曲でプレイリストを作ってもらいインタヴューを行った。「ルーツを掘ることで自分を知る」と語るむぎ(猫)の根幹にあるものは何か。彼の音楽愛を紐解きながら、命の大事さについて聞いた。
ーむぎ(猫)さんのルーツとなるプレイリストを作っていただきました。非常にエナジー溢れる曲が多いですね。
うん、そうかも。特に自覚していたことではないんですけど、確かにサラサラとしたものより、ドロドロとした音楽の方が好きですね。
ー何故?
そこに人間味とか命を感じるからだと思います。人間も猫も生きていると良い部分だけじゃなくてダークな部分もあるし、それを内に抱えて生きていかなきゃいけないんじゃないですか。そういうものが歌に詰まっている楽曲が好きですね。
ーそれこそTURTLE ISLANDは生へのエネルギーそのものですよね。
本当にそうですね。TURTLE ISLANDは豪快でパワフル、彼らのお囃子にはもの凄い量の命のエネルギーが含まれている気がします。彼らがやっている<橋の下世界音楽祭>というフェスを見に行った時、そのエネルギーに圧倒されて本当に凄いバンドだなと思いました。
ーLÄ-PPISCHの「Toys」もエネルギッシュな曲ですね。
飼い主がスカロックに初めて触れたのがLÄ-PPISCHだったんですけど、ヴォーカルのMAGUMIさんが歌いながらトランペットを吹いたりするんですよ。そのパフォーマンスが凄くカッコいいなと思って。曲もいいですし、ちょっとブラックなところも好きで、ハジけた雰囲気もカッコいいですよね。むぎ(猫)の木琴叩いて歌うっていうパフォーマンスに通じるなと思います。
ー他にむぎ(猫)さんのスタイルやスタンスに通じるものはありますか?
THE BLUE HEARTSは飼い主が一番好きなアーティストなんですけど、「ながれもの」は歌詞とメロディが合っていて、すべての歌詞がぴたっと自分の気持ちにハマりますね。<おもしろい事を考えて/みんなを楽しくさせたいな>なんていつもむぎ(猫)が思っていることだし、その次の「打ち明け話にうなづいて/みんなと仲良くなりたいな」の歌詞もそうですね。この曲は全部の行にうんうんって頷けます。
ーやっぱりむぎ(猫)の活動では、聴いてくれる人を楽しませたいという気持ちは強いですか?
強いですね。やるからには「つまらない」とは言われたくないし、面白いものを作りたいなって思っています。計画を練っている時間も凄く楽しいですし、エンターテインメントだと思ってステージも考えています。
ーなるほど。
そういう意味ではLOVE JETSもそうですね。彼らは顔が見えないところがいいですね。
ーというのは?
LOVE JETSを演じているというか、彼らはふざけている感じもするじゃないですか。たとえ素顔でステージに立っているアーティストでも仮面はあって、演じている部分はあると思うんです。LOVE JETSはその仮面が完全にエンターテイメント化した形としてあのスタイルになっていると思っていて、そこに魅力があると思います。
ー今出てきたアーティスト達に顕著ですが、むぎ(猫)さんのルーツには強烈なパンクスピリットがあるんだなと。
うん。パンクは好きですね。
ーでも、むぎ(猫)さんがアウトプットする曲はすべてかわいらしいポップですよね。
むぎ(猫)はある意味入り口だと思っています。むぎ(猫)を通して初めてライヴイベントに来るお客さんもいっぱいいるので、そういうお客さんに音楽って面白いなって思ってもらいたい気持ちがあるんですよ。むぎ(猫)はいろんな音楽がある中で、それを知ってもらうためのポップな入り口を用意していると思います。
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