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日常に溶け込む等身大の世界観を、耳心地のよいポップなサウンドと透明感のある声に乗せて歌うシンガーソングライター・ゆいにしお。日々に潜む小さな発見やハッとする視点、独特の言語センスを織り交ぜて綴られた歌詞に共感するファンは多い。
もともとファンと近い距離感で歌を届けてきた彼女が、2022年4月にオフィシャルファンサイト「tasty city」を開設。10月には、サイトと同名のメジャー1stフルアルバムをリリースした。デビュー前はグルメサイトのライターとして活動するなど、食への関わりも深い彼女が命名した“tasty city”。ファンサイト名に、どんな思いを込めたのだろうか。
また、あえて自ら“食しばり”に限定したプレイリストへのこだわりや、タイアップ曲を多数収録したデビューアルバムについて、飾らない自分らしい言葉で大いに語ってくれた。
ー1stアルバムの収録曲「mid-20s」が全国33のラジオ局でパワープレイされるなど好調ですが、そもそもは日本コロムビア主催<半熟オーディション supported by Eggs>のグランプリでプロの道が開けたそうですね?
はい。中学か高校の頃、友達の誕生日のために曲を作ったらすごく喜んでくれて。それが私の音楽の入り口で、大学のサークルでも音楽はやってました。ただ、ライブハウスに出たことはなく初めてのライブが、オーディションの1次審査で(笑)。
ー逆に、度胸がありますね(笑)。
せっかちなので(笑)、いきなり実力を出してすぐに結果が欲しいみたいに思ったんだと思います。オーディションは随時受けていたので、<半熟オーディション>も全然手応えがなかったんです。
ーそうなのですか?
当時は、たびたび最終予選落ちみたいな状態で、「今回もダメかなー」って。一緒に受賞されたバンドとかも結構毛色が違う感じだったので、自分のグランプリは意外でしたね。
ーファンサイト名や今回選んでいただいたプレイリスト「生活が楽しくなるtastyな音楽」から、食や食べることへの愛を感じます。
食べることはずっと好きですし、それは家庭の影響が大きいですね。「美味しいもの食べたら元気が出るよね」みたいなマインドをみんな持っていて、この前は家族でローストビーフの食べ放題に行き、おなかがパンパンになって帰ってきました(笑)。今は離れて暮らしているので、互いに美味しいものを贈り合ったり。人を繋ぐツールとしても食は役立ちます。
ー素敵ですね。プレイリストのテーマ「生活が楽しくなるtastyな音楽」には、どんな思いが込められていますか?
単に食べ物の音楽だと面白みに欠けるなと思ったし、私が作る曲も普段の生活で聴いてほしい音楽なので、それとちょっと近しい感じの曲を選びました。自分で決めたテーマですが、するするっと曲が浮かんだのは最初の3曲くらい(笑)。最初に浮かんだのはxiangyuさんの「ミラノサンドA」でした。
ー真っ先に選んだ理由は?
私、「おなかすいたな」って思ったらすぐに食べちゃうくらい、ドトールのミラノサンドがすごく好きなんですよ(笑)。だからこそ、ド直球な曲を作った人がいると知ってびっくりして。ドトールでたまに流れているみたいですよ。
ーそれは、相思相愛の間柄ですね(笑)。自身の曲から「町中華」を選んだポイントは?
食べ物の歌はいっぱいあるんですけど、なかでもしっかり町中華を歌っている曲なので、わかりやすいかなと。町中華って、ラーメンや餃子以外に、オムライスとかカツカレーとか「これ、中華?」みたいな料理がいっぱいありますよね。ちょっとファミレスみたいな感覚がいいなって。
ーさとうもかさんの「アイスのマンボ」もなかなかインパクトがありますね。
3年ほど前から、さとうもかさんがすごく好きで。全曲聴いてきた中で「さとうもかっぽい曲だ〜!」と感じて選びました。「ウイスキーが、お好きでしょ」はいろんなカバーがありますが、大好きな折坂悠太さんのバージョンを選んでいますし、基本的に自分が好きなアーティストさんを推しています(笑)。
ー“ゆいにしおの大好き”が味わえるプレイリストだと。
そうですね。リスペクトする土岐麻子さんの曲は何かしら入れたくて、最初は「Ice Cream Talk」もいいなと思ったんです。けど、「ひとくちいかが? feat.土岐麻子」は女子会の様子を歌っていて、今回のテーマに合うなと思いました。坂本真綾さんが歌う曲って、素敵な楽曲ばかりですよね。この曲が入っているアルバム(2021年『Duets』)とかもすごくいい曲ばかりです。
ー土岐さんが所属していたバンド、Cymbalsの曲も。
Cymbalsは中・高校の頃、兄に教えてもらいました。当時は、それが渋谷系だとは知らなかったけど、めちゃくちゃいい曲だなって。そこから次第に渋谷系って言われる曲を聴いたので、私の好きなサウンドを知るきっかけになったのがCymbalsかなと。
ー音楽家としての原点なんですね。お兄さんも音楽が好きでいらっしゃるんですか?
兄とは、実家に帰ると一緒にギターを弾いたりしますね。
ー家族で演奏するなんて、名作映画『サウンド・オブ・ミュージック』みたいですね。
そんな爽やかな感じではないですよ(笑)。でも、Cymbalsを教えてくれたことには感謝しています。
ー他に、吉澤嘉代子さんやMyukさんなど、女性アーティストの曲が並んでいます。
吉澤嘉代子さんの「洋梨」は本当に面白い曲で、「なんかもうやられた…」って。食べ物っていうより、女性のちょっと怖いところとかもある魅力的な曲なので選びました。実は、音楽とは関係のないところで偶然Myukさんとは繋がって、友達同士なんです。「Pancake」は最近出た曲なんですけど、Myukさんの素敵な声がすごく活かされているし、MVは女の子が踊りながらパンケーキの粉をぶちまけたりとかしている映像で、“生活と食べ物”の感じがしてすごいいいなって。
ーasuka andoさんの「あまいひとくち」はどこが推しですか?
もともとすごく好きな曲です。トロピカルでレゲエな感じで、とろけそうなものを食べてるのかなって想像を掻き立てられるようなところがいいですよね。
ー4月に開設したオフィシャルファンサイト「tasty city」も、ご自分にとって大切な“食べること”にちなんだ名前ですね?
はい。以前から私のライブを見てくださった方からお誘いいただいたのですが、Bitfanでは自分が好きなアーティストさんがいっぱいファンクラブを開設していたので、私も開きたいなと思いました。それに、お客さんからも「ファンクラブ作らないの?」と言われていて。コロナ禍でライブが思うようにできないこともあって、繋がれるツールになればいいなとも思いました。
ーファンの方とはSNSでも繋がれると思いますが、どんな点でオリジナリティを打ち出そうと?
こだわっているのは“手作り感”や“自分の世界観”を出すことです。私は絵やイラストを描くことも好きなので、入会特典としてファンの似顔絵を描いてプレゼントしたりしました。
ーそれ、すごく嬉しい特典ですね!
ありがとうございます。そういうオリジナリティを出しつつ、今までライブ会場限定で出していたフリーペーパーを、コンテンツとして制作するようになりました。なので、ライブに来れない月も、ファンクラブに入っていればそれを受け取れるからいいなって思って。
新しいお客さんへの情報はTwitterとかInstagramとか手軽に見れるもので発信しつつ、ファンクラブではもっとコアな情報が届けられる場になったらいいかなって思っています。
ーちなみに、tasty cityという名前の由来は?
ファンのみなさんは“tasty city”という街の住人で、私は“ゆいにしお市長”という設定、コンセプトから名付けました。
ーゆいにしお市長!
(笑)。そういう設定もみなさん楽しんでくれてるみたいで、優しいなって。最初のミーティングでは、『あつまれ どうぶつの森』のような感じを出したいと、プレゼン資料を作ってスタッフさんに説明してました。
ー市長という設定もご自身発信ですか?
それはスタッフさんからの提案でしたが、「なら、やったろかな」みたいな(笑)。はじめはファンクラブって結構敷居が高く感じて、自分にできるか不安でしたが、Bitfanはチャット機能などが充実していて、気軽に更新できるし楽しみやすいなと感じます。配信も気軽にできるので、思ったよりもハードル高くなく楽しめる感覚ですね。
ーファンサイトではチャットを使ってファンの方と交流も行えますが、ファンとの交流で意識していることは?
もともと素を出しているんですけど、あまり出し過ぎて幻滅されないように気を付けてます(笑)。さらけ出し過ぎると、多分ドン引きされると思うので…。ただ、自分を隠すタイプでもないし、本当にドン引きされるまでは大丈夫かなと(笑)。
ー今後、tasty cityでやってみたいことは?
ファンクラブ限定ライブとかはやってみたいですね。<ゆいにしおと行くバスツアー>とかも楽しそう。だいぶオーソドックスですけど。
ーみんなで食べものを巡るとか、楽しそうですね。
それ、いいですね! 食べ放題ツアーやりたいです。世代の近い女性を応援するような曲ももっと書きたいと思っているので、いつかギャル限定ライブとかもやってみたいです。
ーデビューアルバムのタイトルも『tasty city』に決めたのはなぜですか?
タイトルがギリギリまで決まらなくて悩んでいたとき、マネージャーが「歌詞に食べ物がいっぱい入ってるし、今年はファンクラブも作って大事にしてきた言葉だよね」ってぽろっと言ったんですよ。それを聞いて、すとんと腑に落ちたんです。自分では、「やけにビールが多いな」とは思ってたんですけど(笑)。
ー全曲で作詞作曲を手がけていますが(※「Rough Driver」など一部共作)、曲作りで大切にしていることは?
共感してほしいという気持ちが第一なので、自分と近い世代に歌う曲ならその世代が引っかかるような言葉を使ったり、老若男女に届けたい曲では誰にでもわかるような言葉を選ぶようにしています。
ー同世代に刺さってほしいと思いながら書いた曲とは?
「mid-20s」は、まさにそうですね。“ヨントン”っていうK-POP用語を入れたんですが、私自身はK-POPに詳しくないんです。けど、友達がそう言っているのを聞いて印象に残っていたので入れました。
ー改めて振り返って、アルバムに立体感を与えた曲はどの曲だと思いますか?
「スパイスガール」と「スポットライト」ができたことは、このアルバムの鍵かなと思っています。
「スパイスガール」では、ピリッと辛い料理って美味しいよねって歌っているんですが、そこに辛かった瞬間も人生の旨味を出すための出来事なのかなっていう思いを込めました。こうした取材でアルバムのコンセプトを聞かれたときに同じようことをよく言うので、この曲ができたからコンセプトができたのかなって思います。
ー「スポットライト」はいかがですか?
制作も終盤になって、食べ物系の曲ばかりではなく違う角度で“美味しい”を書いてみたいと思ったんです。それで、“美味しいところどり”みたいな視点で曲を書きました。これによってただ食べ物ばかりのアルバムじゃないんだよという、良い締めになったんじゃないかなって思います。
ーこのアルバムを作りながら、ご自分の変化を感じたりしましたか?
はい、ありましたね。聴いてくださる人の顔を、より思い浮かべるようになりました。自分の言いたいこともそうですが、聴いていて楽しいかどうかや、引っかかるかどうかをすごく意識するようになりました。よりイントロを短くしたほうが耳に届きやすいかな…とか、ちょっと小狡いことかも考え始めてます(笑)。
ー聴く人により優しい音楽になった、と。
そうです、そのとおりです。
ーでは、最後にアーティスト・ゆいにしおとして今後の目標を教えてください。
大きいライブハウスで演奏もしてみたいですし、今まではあまりフェスに出る機会がなかったので、素敵なイベントに出たいです。まさにDIGLE MAGAZINEさんが主催していたようなイベントに出てみたいので、呼んでもらえるように頑張りたいです!
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