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文: 天井潤之介 写:Hide Watanabe 編:TUDA
DYGLがニューアルバム『Thirst』をリリースした。ソリッドなギターロックのバンドアンサンブルはそのままに、音楽性の懐を大きく押し広げた前作『A Daze In A Haze』。それからわずか1年余りで制作された4枚目の今作は、自分たちのスタイルをさらに拡張させながらも、4人の息遣いを肌で感じられるようなネイキッドでロウな作品になっている。ありふれた言い回しをするなら、それは「等身大」という言葉もふさわしいかもしれない。
「今までで一番“4人で制作した”という意識が強く感じられる作品(加地)」とかれらが自負する『Thirst』。メンバー全員が曲作りに積極的に関与するアプローチを推し進め、レコーディングも初めて自らの手で行われた今作は、「ロックバンド」の持つダイナミズムと、そしてDYGLが個性豊かなミュージシャンシップの集合体であることを改めて物語るアルバムだ。それも軽やかに、あくまで自然体で、どこまでもみずみずしく――ボーカルの秋山信樹が描き出す心象風景は親密だが広く開け放たれたように雄大で、フォーキーなメロディや音色が際立つサウンドと相俟って、『Thirst』は聴き終えたリスナーに深い余韻を与えてくれる。
久しぶりのワンマンライブを終えた翌日、都内のオフィスで4人に話を聞いた。
ー昨日(11月24日)はワンマンのライブとしては久しぶりだったと思うんですけど。
秋山信樹(Gt,Vo):
そうですね、いつ以来だったかな……最後にやったのは何かのショートツアーだった気がするんですけど。昨日のは前半が新曲だけ、後半が今までの曲っていう2部制の変わったスタイルのライブだったので、やってみるまでどんな感じになるんだろうっていう不安もあって。とりあえずまあ、ひとまず終わってホッとしてます。ー新曲のリアクションや手応えはどうでしたか?
下中洋介(Gt):
思ったよりよかったなっていう。楽しそうにしてくれている顔が見えたので、それがすごく嬉しかったです。ー今回の『Thirst』は『A Daze In A Haze』と「連作」という位置付けだそうですが、曲作りも前作から地続きに始まった感じですか?
秋山信樹(Gt,Vo):
そう思ってます、個人的には。下中洋介(Gt):
3rdの曲をライブで演奏していて、その中で自分たちのバンドの音像みたいなものが変わってきて。それを踏まえて曲を作るので、意識的にも無意識的にも自分たちの演奏が変わっていくのが分かりましたね。ー『A Daze In A Haze』は、メンバー全員が曲作りに積極的に関わるようになり、音楽的にもそれまでの枷を外してオープンになったというところで、バンドの変化を印象付ける作品だったと思います。リリースから時間がたった今、改めてそのあたりの手応えについてはどのように受け止めています
秋山信樹(Gt,Vo):
前作『A Daze In A Haze』はきっかけとして本当に大きかったなっていう感じがあって。考えも整理されたし、一回肩の力が抜けたっていう意味でもリラックスして作品作りができた。あのアルバムができて少ししてから、バンドが変化し始めてるなっていうのを自分でも感じるようになって。『Thirst』はその一つの結果を証明できたアルバムになったかなという気がします。改めて、これまで出した4枚の中でも起点となる重要な立ち位置のアルバムだなと。ー今回、バンド自身でレコーディングしようとしたのはどうしてですか?
加地洋太朗(Ba):
今まで3枚録ってきて、みんなそれぞれ音作りとか家で宅録するのも好きでいろいろやってきてたんですけど。でも、もうちょっと自分たちでどこまで音にこだわれるか、どこまで録れるか――それこそ海外のアーティストだと自分の家で録ったり自分たちだけでやってるものも多いので、そういうのも試してみたくてやった感じですかね。秋山信樹(Gt,Vo):
これまでの経験を経て、1回自分たちでどこまで出来るか挑戦してみようっていうのがありました。そういう意味では今回が一番インディなアルバムになったんじゃないかなって感じですね。1stはニューヨークのRed Bull Studiosでやらせてもらって、2ndのロンドンではプロデューサーのホームスタジオのような作業場所で、、3rdでは初めてフルで日本でのレコーディングをやるって感じで。そして4thでは自分たちだけになるっていう。次は宅録アルバムかな(笑)。ー音楽的なところでいうと、前作の『A Daze In A Haze』に関しては90年代のオルタナティヴロックと呼ばれるバンドだったり、2000年代のポップパンクやメインストリームポップとか、そのあたりがプロダクションの面も含めてリファレンスとしてあったとリリース当時のインタビューでも話されていて。対して、今回の『Thirst』のサウンドのポイントはどのあたりにあったのでしょうか?
秋山信樹(Gt,Vo):
今作では、前作でしていたようなポップパンクとかメインストリームのポップスをあえてサンプル的に活かしてみようみたいなことからはまた違うアプローチになってると思います。時代としては90年代〜ゼロ年代のいろんなジャンルがグチャってなってる感じ、ああいうエネルギーみたいなものを今の形で表現したくて。“今”のミクスチャー、“今”のオルタナティブというのを自分たちなりに見つけようとしている感じかなと思います。3rdではまだ1stや2ndのルーツを大事にする意識からの転換点だったので、一旦白紙の状態を作りたかった。その上で自分たちがどうやったら納得いくか、面白いと思えるかっていうのを試そうとしたというか。『Thirst』ではその理想に少し近づけたかなっていう感じはあります。ポップスとかってむしろ、一回聴いただけでどれくらい早く伝わるかが大事だと思うんですけど、今回は今まで自分たちが作ってきたものの中でも、何回か聴いて行くうちに新しい発見を得られるような、そういう面白さを目指して作りました。加地洋太朗(Ba):
“ミクスチャー”っていうとメタルとかファンクのイメージもありますけど、“ジャンルレス”っていう意味の方が結構近いかもしれないです。下中洋介(Gt):
僕は90年代のオルタナティブロックと言われる曲が好きなので、エネルギーはそっちに持っていきつつも、自分と似た感覚を持ってるんじゃないかと思わせる人が世界にいっぱいいて、そういう人たちだったらどうするかな?っていうのを考えながらやっていました。嘉本康平(Dr):
秋山や下中も言ったように、3rdはやっぱり90年代以降の音楽の、引用的な部分も大きかったんですけど、今回はもうちょっとそれを噛み砕いて吸収して、自分から何が出てくるかみたいなところにフォーカスしてたのかなっていう気がしてて。それが今作で完成したっていうよりは、その先を見据えた上での「今の状態はこんな感じ」っていうのが出せたアルバムになったと思います。TAG;
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