birdが思う“理想のボーカリスト”とは。歌を通して交歓する、彼女の芯にあるもの|Bitfan Crossing #10

Bitfan Crossing

文: 天野史彬  写:関 信行  編:黒田隆太朗 

DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。今回はシンガーソングライター・birdが登場。

一昨年デビュー20周年を迎えたシンガー、bird。1999年に大沢伸一主宰のレーベル「RealEyes」よりデビューし、その後も冨田恵一など様々な音楽家と繫がりながら独自の歌の道を歩み続ける彼女に、「birdにとっての理想のボーカリスト」というテーマでプレイリストを作ってもらった。アレサ・フランクリンからハイエイタス・カイヨーテ、さらに大貫妙子まで、時代や国を超えた豊潤な歌心を体感できるプレイリストだ。

このプレイリストを軸に、birdに「自分自身にとって歌とは何なのか?」ということをじっくりと語ってもらった。自分の身体に、命に、どこまでも自然であるように――そうやって歌を歌い続ける彼女の活動の芯にあるものを感じ取れるテキストになったと思う。インタビュー後半には、現在、運営中のファンクラブ「bird’s nest」についての話も。歌と同じくらい「温泉」も魅せられているという彼女の、穏やかで自由な現在地を感じてほしい。

声という楽器とずっと向き合っていく

―今回はbirdさんに「理想のボーカリスト」というテーマでプレイリストを作っていただきました。まず、birdさんにとっての理想のボーカリストとは、言語化するとどういった存在ですか?

憧れるのは、ずっと長く歌い続けてらっしゃる方ですね。私も歌い始めて20年を超えましたし、“ひとつのことを長くやる”ということに、今、すごく興味があるんです。デビューした頃は先のことなんて全然わからなかったですけど、数年前に20周年のライブをやらせてもらって。

20年って、人が成人するまでの年月じゃないですか。そう考えると、「私はものすごく長い時間、歌い続けてきたんだな」って、感慨深くて。そういうこともあって、歌に限らずですけど、ずっとひとつのことで走り続けていられる方に惹かれます。あと、聴いたら「あ、この人の声だ」とわかる人。プレイリストに選ばせてもらった人たちは、私が声の好きな人たちばかりですね。

―デビューされた頃と、20年を経た今で、歌に対する向き合い方に変化はありますか?

プレイリストにも入れましたけど、最初に「ああ、声ってすごい」と思ったのは、大学の軽音楽部の先輩にアレサ・フランクリンを聴かせてもらったときで。「この人の声は、一体なんなんだろう?」って、人間の声の強烈な生命力を感じたんです。

「私もこんなカッコいい歌を歌えたらいいな」と思った、そのときの想いは、今もあまり変わっていないです。もちろん長く歌い続けていると、その間に歌い対する距離感は近づいたり離れたりしますけど、ずっと同じようにあり続けるのは、「ああ、楽しいなあ」と思える……そんな、歌っているときの楽しさですね。そこも変わらないです。

―birdさんにとって、歌うことはとても普遍的な行為なんですね。

そうですね。ひとつの曲を歌うにしても、歌い方や声の出し方は常にいろんな方向から模索していくし、それによって生まれる聴こえ方の変化や、私自身の体の中の変化も、すごく気になるし……そこに向き合うことはもう、終わらないことなんですよね。

―歌は身体表現であるがゆえに、歌い続けていくことは、自分の体に向き合うことでもある。

年齢を重ねると体も変わるし、声も生き物だから、変わっていく。その変化が常に新鮮です。私の場合、20代の頃は勢いだけでガンガン歌い続けていられたけど、年齢とともに消耗は早くなってしまう。

なので、最近は、どういうふうに自分をエコモードにコントロールしながら、聴いている人の感覚が変わらないように歌えるか? ということを模索するようになっていて。「この歌い方だったら、聴こえ方は同じでも、軽やかに歌えるな」とか……そうやって、自分の今の体に合っている歌い方を発見しようとする。

それは、声質とかの話というより、「どういうふうに自分の体を使うか?」ということの問題なんです。歳を重ねる毎にそういうことを考えるようになっているし、この先もずっと模索し続いていく気がします。

―今回、プレイリストの1曲目はキャロル・キングの「Music」ですが、birdさんにとってキャロル・キングとはどういった存在ですか?

私は大学に入ってから歌を始めたので、それまではほとんど音楽を聴いていなかったんです。先ほどお話したように、私の音楽のスタートはアレサ・フランクリンで、大学生の頃にアレサ・フランクリンのコピーバンドも組んだんですけど、どうしても自分の声とアレサの声は違うんですよね。

「これじゃないのかも」と思い始めて、いろいろ音楽を教えてもらっていくうちに、キャロル・キングに出会ったんです。キャロル・キングの声って、中音域がすごく気持ちいいんですよ。私も高い音が出ないので、キャロル・キングの中音域のふくよかな声の気持ちよさを知ったときに、「これなら私も近づけるかもしれない」と思ったんです。それから、キャロル・キングの歌を聴いたり、自分でも歌うようになりました。

次ページ:歌はコミュニケーション

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天野史彬

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関 信行

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シンガー & ソング・ライター
1975年 京都出身

ソウルフルな歌声と独創性に満ちた楽曲で、ジャンルを選ばず音楽ファンを魅了するシンガー&ソング・ライター。
大沢伸一/MONDO GROSSO主宰レーベルよりデビュー、1stアルバム「bird」は70万枚突破、ゴールドディスク大賞新人賞獲得。
2019年に20周年を迎え通算11枚目となる最新アルバム「波形」(MHCL-2800)発売。
前作「Lush」に引き続き、プロデュースおよびサウンドメイキングは現代の音の名匠こと冨田ラボ(冨田恵一)によるもの。
bird20周年プロジェクトとしては、オールタイムベスト「bird 20th Anniversary Best」(2枚組)発売。
このベストにはANA HAWAII CMに使用されてるMONDO GROSSO「LIFE feat. bird (Retune)」を収録、19年の時を経て新録したニュー・ヴァージョンとなる。
現在、ジャンル関係なく各種野外FES、イベントに出演中。
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