作って壊す。自身を更新し続けるマルチアーティスト・Suhmが抱くクリエイティブへの欲求

Interview

文: 江藤勇也  編:Mao Ohya 

ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』。13組目のアーティスト「Suhm」が登場。

Kidori KidoriKASVEのメンバーである塔本圭祐のソロプロジェクト、Suhm(サーム)。2017年12月より全楽曲の作詞・作曲・編曲・演奏のほか、ミキシングやマスタリングなどの作業も一人で行うマルチ・アーティストとして活動を始め、昨年10月には「early Reflction」とStyrismが合同で開催するオーディション企画「early Impulse」の最優秀アーティストに選ばれた。また同年11月には1stアルバム『Suhm1』をリリース。甘く澄んだ歌声とローファイ・サウンドが融合した優しく包み込むベッドルームポップで、UKロックやファンクなどのサウンドを取り込んでいたKidori Kidoriとは、全く違った一面を見せた。その挑戦的なクリエイティブは音楽制作だけにとどまらず、自身で3DCGを用いたMVを制作するなど多岐にわたっている。

今年初となる新曲「スローダウン」は、アルバムから僅か3ヶ月で発表。浮遊感のあるミディアムテンポナンバーには、心地よさと実験性、メランコリックな歌心が共存している。インタビューでは、音楽ルーツからソロアーティストを始めた背景、現在のスタイルに辿り着くまでの経緯などをお伺いしながら、そのクリエイティブの根幹に迫った。

拾った1本のギターから始まったSuhmの音楽人生

ー“イギリス生まれ大阪育ち”とのことですが、日本に移住されたのはいつですか?

5、6歳のときです。17歳のときに一度イギリスに留学をしていたんですけど、また日本に戻ってから20代前半ぐらいまでは大阪にいました。

ーそうすると、どちらかといえばイギリスよりも大阪が地元のような感覚ですか?

そこで生まれ育っている人に比べるとよそ者ではあったので、100%大阪が地元ですっていう感じではないです。とはいえ、イギリス人でもないのでアイデンティティ的な意味では宙ぶらりんですね。

ー粗大ゴミ置き場で拾ったギターがきっかけでキャリアをスタートされていますよね。これはどういうシュチュエーションだったんですか?

5、6人の友達といつも一緒に遊んでいたんですけど、ある日みんなでコンビニに行った帰りの粗大ゴミ置き場にギターが2本落ちてたんです。で、友達の中にギターが弾けるやつがいたので教えてもらって、みんなでハマっていきました。

ーなるほど。

でも当時ブレイクダンスが流行っていたので、僕以外はギターよりもそっちの方に興味がいってしまって。僕は運動神経が悪かったのでブレイクダンスはせずに、そのままギターをずっと弾いていて、気付いたらそのギターでCDを出していました。

ーすごいですね。ギターを拾う前は音楽に興味はありましたか?

興味はめちゃくちゃあったんですけど、住んでたのが田舎で楽器屋さんがまずなかったし、お金もあまりなかったので楽器も買えなくて。それでモヤモヤしてたんですけど、そんな矢先に二本落ちてたんで導かれるままにギターを弾いてました。

ーそういったキャリアからスタートしてバンドを組まれたと思うのすが、バンドが解散してからソロになった経緯を教えてもらえますか。

バンドの面白さは知ってるのですが、バンドをもう一度組んで似たような音楽やるってなった時にそれだとやる意味がないというか面白くないなと思って。だったら、1からやったことのないことをやってみようってことでソロになりました。なので今のところ、ライブではサポートメンバーを入れずに一人で完結させるスタイルです。

ー音楽性もバンド時代とはだいぶ変わっていますよね。それは同じことをやりたくないから?

それももちろんあると思いますし、モノを作るときは必然性みたいなものが僕の中ではすごく重要で。バンドでは生演奏するのが非常に楽しみでしたし、バンドには同期の良さもあるんですけど、基本的には肉体的な部分が僕にとっては喜びでした。でもそれがなくなった時に1人で打ち込みでロックをやるんじゃなくて、1人であることに必然性があるジャンルをやりたいなと思って、今のような音楽性になりました。

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