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文: 黒田隆太朗 写:Hideya Ishima 編:Mao Oya
“このバンドはどこにも属さない、だからどこにでも行ける”という、明智マヤの言葉が全てだろう。“カナダからやってきたバンド”というチャーミングなプロフィールには、海の向こうのインディロックへの憧憬と、自分達の音楽が世界の至るところで聴かれることへの無垢な期待が表れていたように思う。羽が生えたように広がっていくメロディと、楽曲のスケールを担う包容力のあるドラム、そしてさり気なく心の中に浸透していく柔らかい歌声。世界が恋に落ちるような音を鳴らすのは、もしかしたらこんなバンドなのかもしれない。
以前共にやっていたバンドが解散した後、ドラムのサチがボーカル/ギターの明智マヤに声をかけることで、2018年にTHEティバを結成。翌年にはSTARCRAWLERの来日公演サポートアクトを務めて早くも話題に。早耳のリスナーはその頃から期待を膨らませたことだろう。昨年はコロナ禍で活動が制限されるも、2020年の12月に『THE PLANET TIVA part.1』をリリースし、3ヵ月後の2021年2月には『THE PLANET TIVA part.2』を発表。ミッドテンポのオルタナ、インディロックを軸にした前者と、ポップパンクやパワーポップからの影響を押し出した後者には、それぞれ彼女達がここ2、3年で培ってきた音が表現されている。まだ聴いた事がないというリスナーは、とにかく「Go back our home」のMVを見て欲しい。きっと貫かれるような出会いになるはずだ。
今回は明智マヤとサチのルーツをまとめたプレイリストを用意し、彼女達のバックグラウンドをピックアップしながら、現在の音楽観へと迫るインタビューを試みた。THEティバの音楽には、バンドミュージックへの情熱とロマンが詰まっている。
ーおふたりのルーツをまとめたプレイリストを作っていただきました。この中で最初に出会った曲はどれですか?
明智マヤ(Vo/Gt):
最初に出会ったのはThe Beatles(ザ・ビートルズ)の「Blackbird」ですね。小学校の5、6年生の時だったと思います。父親が楽器をやっているので、ギターもベースも家にあったし、ずっと音楽が流れている家で育ったんですけど、私はあんまり興味がなかったんですよね。でも、父親が「Blackbird」を弾いているのを見て、自分もやりたいと思って、それがギターを持ったきっかけでした。ー「Blackbird」のどこに惹かれたんだと思いますか?
明智マヤ(Vo/Gt):
指がいっぱい動いていて楽しそうだったし、なんか自慢されたんですよね。こんなん弾けるぜ、みたいに(笑)。それが悔しくて、ただただ父親に勝ちたいと思って「Blackbird」を練習しました。そのわりに弾き方は詳しく教えてくれなかったので、凄く時間はかかりました(笑)。ーそれで小6で弾けるようになるのは凄いですね。サチさんがドラムを叩いたのはいつ頃でした?
サチ(Dr):
6歳です。たまたま保育園の出し物でドラムセットの役割があって、そこで叩いたのがはじめてですね。なので音楽を好きになる以前に、練習するものとしてドラムに接していて、だんだんと好きになっていきました。ーそれから継続的に叩いていたんですか?
サチ(Dr):
おばあちゃん家におじちゃんのドラムセットがあったので、それを触っていました。当時はディズニーチャンネルで『ハンナ・モンタナ』をずっと見ていたので、オープニングのビートをずっと叩いていましたね(笑)。で、小6の時にお母さんが隣の駅にドラムスクールがあるのを見つけてくれて通うようになって、中高と軽音部に入りました。ーサチさんはご自身がセレクトした楽曲の中で、一番最初に出会った曲はなんですか。
サチ(Dr):
Lady Gaga(レディー・ガガ)とMEANING(ミーニング)を小6頃に聴きました。MEANINGはiTunesの「今週の無料の一曲」みたいなところで聴いて凄くカッコよかったんですよね。Lady GagaはCMかなんかで聴いたんだと思うんですけど、「Alejandro」がずっと自分の頭の中に残っていて、気付いたら他の曲も聴くようになっていました。ーLady Gagaは当時の自分にとって、何が響いたんだと思います?
サチ(Dr):
強いところに惹かれたんだと思います。Lady Gagaは存在としても強さを感じたし、見た目も凄かったので衝撃的でしたね。ーTHEティバはプロフィールで「カナダ出身」と謳っていましたし、今回のプレイリストにもそれぞれ2曲ずつセレクトされていますね。
明智マヤ(Vo/Gt):
私もこれ見てびっくりしました。改めてカナダのバンドが好きなんだなと。ーカナダの音楽は、おふたりにとってどういうアイデンティティになっていると思いますか?
サチ(Dr):
このバンドをやる前に組んでいたバンドが解散して、もう一度ふたりでバンドをやろうってなった時、お互いその時聴いていた音楽を出し合ったら、ことごとくカナダ出身バンドばかりだったんですよね。ーでは、具体的にPeach Pit(ピーチ・ピット)はどこが好きですか?
明智マヤ(Vo/Gt):
クリスのギターと、メロディーラインがめちゃくちゃ好きです。ギターはモヤがかかったような音を出したかと思えば、歪む時には思いっきりギターがギーンって歪むのが気持ち良いです。サチ(Dr):
そういう構成とか、展開のある曲が好きだよね。明智マヤ(Vo/Gt):
うん。落差がある音楽が好き。ーPUP(パップ)はどうですか?
サチ(Dr):
PUPはハードコアの要素も入っているし、各パートのフレーズも最高で、ワンパターンじゃないところが凄く好きです。『THE PLANET TIVA part.2』に入っている「Kids1」と「Kids2」は、PUPの『The Dream Is Over』の1曲目と2曲目が繋がっているのが好きで、それをTHEティバでもやりたいと思って作った楽曲でした。ー最近のTHEティバの楽曲は、パワーポップやポップパンクからの影響を感じるものが増えてきましたね。
サチ(Dr):
そうですね。ドラムの音もRemo Drive(レモ・ドライヴ)とかHomesafe(ホーム・セーフ)辺りのポップパンクっぽい音から影響を受けている気がします。明智マヤ(Vo/Gt):
『THE PLANET TIVA part.2』の曲を作っている時は、私もめっちゃRemo Driveを聴いていました。青春の感じがあるというか、聴いていると走りたくなる音楽だなって思います。サチ(Dr):
楽しいから聴いちゃうよね。明智マヤ(Vo/Gt):
うん、楽しいから聴いちゃうし、Remo Driveの作品は全曲“展開しなきゃ死ぬ”みたいな構成になっているから、聴いていて気持ちが良い。私はずっと心を動かされていたいというか、そうきたか!って思ったり、あ〜〜!!ってなりながら音楽を聴きたいんですよね。ーつまり、自分もそういう音楽を作りたい?
明智マヤ(Vo/Gt):
ですね。ー人を驚かせたいんですかね?
明智マヤ(Vo/Gt):
あ、それはある気がします。サチ(Dr):
確かにね。人を驚かせたいのかも(笑)。明智マヤ(Vo/Gt):
曲を作ってる時も、ここからこう展開したらみんな驚くんじゃないかって思う時があって。そこで人の心が圧倒的に動くのが目に浮かぶし、それを見てふふふってなりたいんだと思います。RELATED PLAYLIST
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