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文: ヨシヤアツキ 写:遥南 碧
―初めて買ったCD、覚えていますか?
ポケットビスケッツの「イエローイエローハッピー」です。「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」が流行っていて、近くのCDショップに小遣い握りしめていきましたね。私、音楽の原体験は遅めだったと思います。当時は音楽に全然興味がなくて・・・。
それから中学生になって、「ASAYAN」をきっかけにモーニング娘。が流行るんですよ。男子の会話の5割が「メンバーの中で誰が好き?」みたいな。
―少し前のAKBに似ているところがありますね。
そうそう。クラスのみんなが、自分の部屋の壁にポスター貼っていましたね。
でも、僕はそこまでハマっていなくて。傍目で見ていたタイプなんですよ。中学生の頃から擦れはじめて、ミーハーな同級生をディスるみたいな。(笑)
そんな時に、メロコアに出会ったんです。GREEN DAYやBlink182をよく聴いてましたね。ほかには、MONGOL800とかGOING STEADYとか。そういうバンドが好きでした。高校では、友人に勧められてハードコアパンクを聴いていましたね。聴いていたというより、聴かせられていたというほうが正しいかもしれません。学校帰りに、アメリカ村のレコード屋に連れて行かれたりしていました。(笑)
当時、よく聴いていたのはBAD BRAINS。ハードコアパンクは好きになったんですけど、ジャンルとして、暴力的なイメージがあるじゃないですか。そこがあまり好きではない、というか、性に合わなかったんです。その次にハマッたのは、Underworld。Electraglideっていう、テクノが中心のフェスに行くことがあって。ライブがめちゃくちゃかっこよかったんですよ。
なれるかどうかは別として、彼らみたいになりたいって思いましたね。(笑)それから、エレクトロ系の音楽に18~23歳くらいまで傾倒していました。
―どうして、デザインの道に進もうと思ったんですか?
半分くらいは、音楽の影響です。レコードのジャケットが好きだったんですよ。特に、Pink Floydのジャケットが好きでしたね。 結果的に、ジャケットに対する興味が強くなって、デザインの道を選びました。
―デザインの仕事を始めてから、音楽の聴き方は変わりましたか?
流行っている音楽を積極的に聴くようになりました。デザインって、今何が流行っているとか、社会で何が受け入れられているかっていうポイントをキャッチアップしなければならないので。最近は、水曜日のカンパネラとか、でんぱ組inc.とか。曲を聴いて、なぜ流行っているのかまで考えるようにしています。雑誌やWebの記事だけでは、アーティストや曲の良さを理解しきれないと思っていて。やはり、自分の耳で聴かないと、何が良いのかっていう勘所は分からないんですよね。
たとえば、水曜日のカンパネラは歌詞とサウンドがポイント。作詞・作曲担当のケンモチヒデフミさんによる凝ったサウンドと、歌詞のセンスの良さが、人気の理由だと思っています。音楽の聴き方を変えるまでは、自分の世界観や正しさのようなものを相手に押し付けていたのですが、今は相手に合わせています。理由は、商業デザインはクライアントが要望しているものを届けるのがベストだから。自分の好みを出すと、押し付けになってしまうんですよね。売れるデザイン・世の中に受け入れられるデザインを考えて作らないといけないんです。
―今の音楽シーンって、音源以外の付加価値が重要視されていると思っていて。その中でデザインはどのような役割を担っていると思いますか?
体験なんじゃないですかね。CDジャケットは1つの要素であって、ライブとかグッズとか、その見せ方や体験の作り方が重要なのかなって思います。
昔は、CDジャケットを見ながら、その音楽の世界に入っていくという聴き方が多かったのかもしれません。でも今は、もっと広い感じなのかなと感じています。
ジャケットみたいに平面なものだけでなく、空間をデザインするみたいな。そういう音楽体験が求められてるんじゃないかと思います。
―VRやARを用いたサービスが増えていますが、音楽シーンにも導入が進んでいますね。
今年の6月に、寿司職人シミュレーションゲーム「VR SUSHI BAR」を配信しましたが、市場としてはまだまだという実感があります。
今作っているのは、イベント向けのARコンテンツ。音楽イベントへの導入もしていきたいと考えてます!〈FUJI ROCK FESTIVAL〉などに導入したいですね。
たとえば、ライブやフェスの会場の特定の場所で写真や動画を撮ろうとすると、ミュージシャンが映し出されて、一緒に写真や動画を撮ることができる。さらに、SNSでシェアできる。みたいな。SNSに投稿したくなるようなARコンテンツはこれからに合っているかなと。そんなふうに音楽と関わっていけたらなって思っています。
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