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文: Kou Ishimaru
アメリカ・ヒューストン出身のバンド・Khruangbin(クルアンビン)の最新シングル「So We Won’t Forget」のMVを、ワイデン+ケネディ トウキョウ(以下W+K)とNakamaが制作した。
Khruangbinはボーダーレスなワールド・サウンドで知られ、60~70年代のタイファンクに影響を受けた異質のオリエンタル・ファンクバンド。今年4枚目となるアルバム「Mordachai」をリリースし、昨年には日本最大級の音楽フェス「フジロックフェスティバル」にも出演するなど、日本国内でも話題が沸騰している。
ミュージックビデオは、W+Kの新ECDを務めるスコット・ダンゲートが監督を担当し、ファーストアルバムMV「Two Fish and an Elephant」(ワイデン+ケネディ ロンドンとSomesuchの共同制作)ぶりの再コラボレーションとなった。撮影は桜シーズン目前の栃木県烏山で行われた。
公開にあたって監督によるコメントとショートインタビューが公開されている。
いま世の中のほとんどの人がそうであるように、コロナウイルスのことで頭がいっぱいのときに ‘So We Won’t Forget’ の制作を着手しました。世界中でいろんなことが失われゆく様子をみていて、ときに弔いの儀式すらもままならない状況になりました。世界は多くの思いやりやユーモアであふれているかたわら、権威との衝突や社会が分断されている様子も目立ちました。
このMVのストーリーはもちろんCovid-19とは何の関係もありませんが、この曲が表現している感情とともに、私たちが過ごしている時代の様相がうかがえる映像になっていればいいな、と思っていました。たとえは、孤立感や孤独を感じること。世界にもっと思いやりが欲しいこと。逃げ場と解放感を求めていること。そんなことが反映されていればいいなと思っています。
スコット・ダンゲート
ーミュージックビデオのアイデアについて教えてください。
‘So We Won’t Forget’は、クルアンビンの多くの曲と同様に、幾重にも重なる複雑な感情がこめられたものです。何かにすがりたいという切ない気持ちは歌詞から伝わってくるのですが、それをビートとギターで、まるで自転車に乗っているみたいに軽快な感じで打ち消しているんです。
ただ、その高揚感とは裏腹に、ハッピーな曲とは言い難い。もっとたくさんのことが曲には含まれている。複雑で、説明するのが難しいエモーショナルな旅みたいな曲だけど、MVではシンプルな物語を作りたかった。矛盾する気持ちや、感情の起伏や喜怒哀楽、そしてちょっと息が詰まるような、まっすぐな物語。でもこの曲がそうであるように、最終的には高揚感のある印象を持ってもらえれば嬉しいです。
ーなぜ日本で撮影したんでしょう。またこのロケーションで撮影したことと、MVとの関連性はありますか。
私が日本に引っ越してきたばかりで、この場所にとても刺激を受けているからです。そう思わない人がいますでしょうか?トリートメント(映像制作資料)の作成と撮影は、いままでに撮影したことない地方都市・栃木県烏山を選びました。
それから、私も通勤で使っている、うちの子どもたちが大好きな電動自転車(ママチャリ)にも影響を受けているので、MVにも登場させています。それから、以前六本木ヒルズの交差点の真ん中で、酔っ払って暴言を吐いているラグビーファンを日本の警察が巨大な布団らしきものでなだめているのを見たことがあって。日本の警察官が、毛布をかけて状況を和らげてくれたのが良かったんです。暴徒にかぶさった毛布がめくられたとき、警察官が男を抱きしめているようにも見えたし、さっきまで男が唾を吐いて叫んでいたにもかかわらず、本当に同情しているようにも見えた。その記憶がとても印象に残っています。権力者の思いやりのある一面を見るのは新鮮なことだと思いました。そんな日本での体験が、MVのインスピレーションになっています。
ー前に監督したKhruangbinのミュージックビデオ ‘Two Fish and an Elephant’ にも似たようなテーマがありましたよね。この2つのミュージックビデオは何かつながりがあるのでしょうか。
どちらのミュージックビデオも「前に進む」というテーマを共有していますが、これは特に意図したものではなく、自然な反応として出てきたものなのですが、テーマの関係性はとても気に入っています。
‘Two Fish and an Elephant’ では、ヒロインは恋人の支配から解放されるために、最後にもう一度恋人と向き合わなければならないのですが、‘So We Won’t Forget’では、大切な人(娘)との関係性がどうなっているか注目してみてください。こちらでは、主人公は愛する人を解放し、悲しみを手放し、再び自由にならなければならないのです。
ーこのプロジェクトが生まれた経緯を教えてください。
クルアンビンの‘Two Fish and an Elephant’のミュージックビデオ制作はとても楽しいプロセスでした。ありがたいことにその実績から、バンドメンバーのローラ・リーがもう一本やらないかと誘ってくれたので、二つ返事でオファーを受けたんです。私はまだW+K東京のECDとして日本に移住したばかりだったので、ここでの制作についての知識を早く身につけたいと思っていました。
制作パートナーのNakamaさん、DOPのカテブ・ハビブさんなど、映像に出てくる人から裏方まで、才能のある人たちと出会えたことは幸運でした。みんながバンドのファンだからこそ、期待していたこと以上の努力をしてくれたのです。近い将来、W+K東京ではより多くのエンターテイメント、音楽、カルチャーとリンクした仕事を行いたいと思っています。
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