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AORやシティポップ、ソウルミュージックなどから影響を受け、 サックスを取り入れたアダルトなサウンドで聴くものを魅了する6人組バンド・BESPERが12月7日に2nd EP『Orbit』をリリースした。
2010年代、世界的に起きたシティポップブーム。彼らはその時間の中で密接に音楽に触れ成長してきた。そんな彼らにとってシティポップは決して昔を懐かしむものでも、ノスタルジックに浸るだけの音楽でもない。リアルな音楽体験が背景にあるからこそ、彼らの音楽は現代の色味で映し出されているのだろう。
今回は、SHINJIRO(Vo.)、SE(Ba.)、ARARIKU(Gt., Cho.)の3名から、その感性の源と新EPの制作背景について話を聞いた。
ーみなさんの音楽のルーツを教えてください。
ARARIKU(Gt., Cho.):
俺は高校のときにサッカーを辞めて、何か新しいことを始めたくてギターを始めました。父親がギターを弾いていたので、その影響が大きかったですね。小さいころから、Eagles(イーグルス)、Eric Clapton(エリック・クラプトン)、The Beatles(ザ・ビートルズ)をよく聴いて育ちました。でも、母親はSMAPやサカナクションが好きな人だったので、ロックの部分では父親、ポップの部分では母親の影響が大きいと思います。ーSEさんはいかがでしょう?
SE(Ba.):
僕も母親が音楽好きで、Oasis(オアシス)やNirvana(ニルヴァーナ)といったロックから、ブラックミュージックまで幅広く聴く人でした。それで、小学校6年生のときにONE OK ROCKのCDを渡されたんです。そこから真剣に音楽を聴くようになって、おじいちゃんの家に置いてあったベースを弾き始めました。ベーシストだった叔父のものなんですが、ONE OK ROCKのMVを見てベースってかっこいいなって思っていたので、弾き始めたのは必然な感じですね。ーベースを始めて、聴く音楽は変わりましたか?
SE(Ba.):
そうですね、きっかけはSuchmosでした。高校生くらいのときに『SPACE SHOWER TV』で特集が組まれてて、今まで触れたことのない音楽に「なんだこの人たちは!?」と思って衝撃を受けたんです。そこからブラックミュージックにハマって、そのタイミングで音楽の専門学校に入りました。そしたら専門学校はブラックミュージックをやってる奴らばっかりで、どんどん沼にハマっていったんです。ARARIKU(Gt., Cho.):
俺もちょうど同時期にSuchmosにハマり始めましたね。そしたら父親が「お前Suchmos好きなら、山下達郎やOriginal Loveを聴かないとヤバいよ」って真剣に紹介してきたんです。SHINJIRO(Vo.):
もうほぼ説教じゃん(笑)。ARARIKU(Gt., Cho.):
「これ知らないで音楽好きとか言えないよ」って言われて山下達郎さんの「LOVE SPACE」を聴かされて、「なんだこれ!これが本当の音楽じゃん!?」って思いました。ーお父さんはバンドとかやっていたんですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
そうなんです。プロを目指してやってたらしくて、その時代の良かった曲や時代の空気を教えてくれる証言者みたいな感じでしたね。それは今の自分達の音楽に完全に直結してると思います。ーSHINJIROさんはいかがでしょう?
SHINJIRO(Vo.):
僕は小学校4年生のときにPCを買ってもらって、そこからYouTubeやニコニコ動画にどっぷり浸かってたんです。なかでも『歌ってみた』にすごいハマっていて、天月さん、Geroさん、伊東歌詞太郎さん、メガテラ・ゼロさんとか、女性男性関係なくいろいろ聴いてました。だから僕は『歌ってみた』がメインとするポップミュージックから入ってますね。ーそして、それを聴いていたら自分でも歌ってみたくなった?
SHINJIRO(Vo.):
そうですね。前から「歌ってみたらいいじゃん?」って言われていて、「じゃあ歌ってみるか〜。ちょっと目立ちたいしな」と思って(笑)。それで高校では軽音部に入るんですけど、最初はドラムをやってました。SE(Ba.):
そうだったね(笑)。俺ら同じ高校の先輩後輩なんですよ。ーなるほど!
SHINJIRO(Vo.):
でもドラムは難しくて全然続かなかったんですけど、SEさんの代の先輩のバンドにボーカルとして入ってみたら「お前うまいじゃん」となって、本格的にボーカルを始めました。その頃から邦ロックを聴くようになって、特にUNISON SQUARE GARDENが大好きになりました。軽音部ではユニゾンのコピバンをやったし、他にもストレイテナー、ヤバイTシャツ屋さん、KANA-BOON、星野源とかもやってましたね。ーかなり幅広いですね。今の音楽性からヤバTは想像つかないです(笑)。
SHINJIRO(Vo.):
僕ってアーティストより曲が好きになるタイプなんです。だから自分の好きな曲をかいつまんでやってました。ー曲で選ぶって感じが『歌ってみた』出身な感じがしますね。
SHINJIRO(Vo.):
たしかにそうかもしれないです。曲から入るんですよね、あれって。ーそんなルーツもバラバラなみなさんが、一緒にバンドを始めたきっかけは?
ARARIKU(Gt., Cho.):
まず俺とSEが高校2年生のときに仲良くなったんです。俺が文化祭でバンドを組みたくて、友達にSEを紹介してもらいました。そこからめちゃめちゃ仲良くなったんですけど、そのときはバンドを組めなかったんですよ。だからずっとバンドやりたいなって話をしていて、いよいよ本気で始めようとなったときにお互いでメンバー集めてきたんです。SE(Ba.):
そこで誘ったうちのひとりが、後輩だったSHINJIROです。ーバンドを始めた当初から、今の音楽的なスタイルはイメージしていたものでしたか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
イメージはあったけど、漠然としてましたね。みんなSuchmosが好きだから、ああいうクールでかっこよくてエモい音楽をやりたいなってくらい。ーメンバーにサックスを入れるアイデアも最初からあったんですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
そうですね。昔のシティポップ、AORを聴いてると絶対サックスが入っているけど、今はサックスを表に出しているバンドってあまりいないじゃないですか。だから、サックスがバンドの特色になったら面白いんじゃないかなって思ったんです。SE(Ba.):
武器が欲しかったという思いもありますね。最近は楽曲としてサックスが入っていても、サポートメンバーというスタイルが多いですから。ー最初にメンバーで集まったときはどんな感じでした?
SHINJIRO(Vo.):
まずはみんなでスタジオに入ったんです。初めて合わせた曲はSuchmosの「GAGA」って曲で。でも、僕がそれまで聴いていた邦ロックと違いすぎて、最初聴いたときは聴き馴染みが無さすぎて慣れなかったです。一応覚えて行ったんですけど、「これ歌いたくねぇ〜」って思ってました(笑)。今では大好きな曲になりましたけどね!ーどっぷり浸かれた理由はなんだと思いますか?
SHINJIRO(Vo.):
ポップスと通ずる点があるし、僕は曲をノリのよさで聴くので、そこは好きになれた点だと思います。でも、そういう音楽性だけじゃなくて、彼らの人柄にすごく憧れていた部分も大きかったですね。“かっこよさ”っていうものも、彼らから学びました。ARARIKU(Gt., Cho.):
憧れるよね。SE(Ba.):
ライフスタイルから何まで、本物のかっこよさがある。ーちなみに、みなさん出身はどちらですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
俺ら3人は全員千葉です。SE(Ba.):
全員内陸のほうで。だから余計海に憧れるっていう(笑)。ーなるほど(笑)。
ARARIKU(Gt., Cho.):
そこが楽曲の作り方や世界観に通じてる部分ではありますね。都会の中にいて虚無感に浸るのもいいんですけど、逆に都会を俯瞰して見たときの、あのなんとも言えない気持ちを音楽として表現したいんです。千葉から東京に行くときのワクワク感や都会の手が届きそうで届かない感じ。そこは、郊外のほうに住んでるからこそ描ける世界観なのかなって思います。ー歌詞にも都会の景色がよく描かれていますよね。
ARARIKU(Gt., Cho.):
曲を作るとき、リスナーの脳内にちゃんとリアクションがあることを大事にしてるんです。曲を聴いたときに何かしらの情景を思い浮かべてほしいし、俺が見たものやそのとき思ってる気持ちに共感してほしくて投げかけてたりもします。別に強要とかではないんですけど。SHINJIRO(Vo.):
ソングライターとしての欲求だよね。ーバンドとして世界観ややりたいことがしっかり確立されていますよね。バンド名もそういった背景と何か関係があるんですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
BESPERってbじゃなくてvにすると、“vesper=宵の明星” っていう意味になるんです。で、「かっこよくない?」ってみんなに紹介したんですけど、実は違くて。僕の好きな映画『007/カジノ・ロワイヤル』に出てくるボンドガールが“ヴェスパー”っていう名前なんです。気品があって高貴で美しい女性なんですけど、もうめちゃくちゃ大好きで! でも、それを言ったら絶対反対されると思ったんで、1年くらい隠してました(笑)。SHINJIRO(Vo.):
いやいや、「おしゃれだからこれにしよ〜」ってふわついた理由より、「大好きなボンドガールの名前だから!」って言われたほうが、根拠あるし腑に落ちてたよ(笑)。ー続いて、12月7日にリリースされた新EP『Orbit』についても伺っていきたいと思いますが、普段はどのように楽曲制作を進めているのでしょうか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
基本的には僕が曲の土台や雰囲気、世界観を作ってきて、それをスタジオでバンドに投げて味付けしてもらっています。SE(Ba.):
まず土を持ってきて、その上に俺らが家建てていく感じです。ARARIKU(Gt., Cho.):
白飯持ってきて、丼ぶりにしてもらうみたいな?SE(Ba.):
あ、そうだね。いくら、うに、マグロみたいな感じで。SHINJIRO(Vo.):
僕ら海鮮丼ってこと(笑)?ー(笑)。今回EPを制作するにあたって、初めに全体像はあったんでしょうか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
イメージはできてました。それまでの曲は夜の雰囲気に全振りしてきたので、昼っぽい曲を作りたいと思ってたんです。自分たちが目指してるAORやシティポップでも、リゾート or アーバンという景色が描かれてるので、今回はリゾート、特に海を連想する部分を取り入れていこうと“シーサイド”と“ナイトサイド”で3曲ずつ分けられるようにしたくて、曲を作り始めるときには意識していました。ー特に1曲目「Bluest」はこれまでにない爽やかな楽曲に仕上がってますね。
ARARIKU(Gt., Cho.):
こういう明るい真昼な曲もできるんだぞっていう(笑)。SE(Ba.):
“風”って感じだよね。ARARIKU(Gt., Cho.):
楽曲作りにおいては憧れる世界を描きたいって思いがずっと核にあって、これもそれが現れてる曲だと思います。例えば、リゾートで好きな女の子と二人っきりでプールサイドにいたり、首都高をドライブしたり、いわゆる “憧れる世界観”ってあるじゃないですか? そういう、手の届きそうにない世界を描きたいんですよ。SE(Ba.):
でも聴いたらその世界に浸れる、みたいな。ーたしかに、この時期ですがしっかり夏の気分にさせてくれる曲でした!
ARARIKU(Gt., Cho.):
結構寒くなってからのリリースでしたね(笑)。SE(Ba.):
でもまあ、“夏”ってワードは入ってないから。ARARIKU(Gt., Cho.):
季節感を演出したくなかったから“夏”ってワードはあえて入れなかったんです。あくまでリゾートを描きたかったので、“どんなときでも海に行くときやドライブ行くときって楽しいよね!”って部分にフォーカスしました。ーそんなリゾートパートの締めである、3曲目のタイトル「TEGA」とは、どんな意味なんですか? ちょっと想像ができなくて…。
ARARIKU(Gt., Cho.):
実は僕の地元にある手賀沼っていう沼を描いてるんです。だから「TEGA」っていう…(笑)。ーそうだったんですね(笑)!? 手賀沼ってどんなところなんですか?
SHINJIRO(Vo.):
僕も高校のときは通学路だったんですけど、白鳥もいるしすごく開けてて遠くのほうまで鉄塔が何本も連なってるのが見える、本当に綺麗なところなんですよ。ARARIKU(Gt., Cho.):
あとサイクリングロードがあって、俺はいつもロードバイクでそこをサイクリングするんですけど、その際にいろんな曲のインスピレーションを得たり、歌詞を考えたり、すごいお世話になってる場所なので曲にしようと思いました。SE(Ba.):
感謝を込めてね。ー「TEGA」ってどこかおしゃれなシーサイドのスポットかと思ってました(笑)。そして、4曲目以降はお得意のナイトモードに突入ですね?
ARARIKU(Gt., Cho.):
そうです。ここからはしっかりメリハリをつけました。ポップも好きだけど、本当にかっこいいところを見せるのは夜の部分だぜってことで、今までのBESPERの大人の雰囲気をさらにステップアップさせてます。SE(Ba.):
シーサイドは「こういうのもできるよ」って感じなんですけど、ナイトサイドは一気に自分たちの空気を濃く出していきましたね。これまでやってきたことをさらに昇華させたし、シーサイドからのストーリー性も重要視しています。ARARIKU(Gt., Cho.):
ナイトサイドはこれまでよりもっとムーディに仕上げた曲もあります。4曲目の「満たされた日」は特にそうで、ずっとやりたかったR-指定ついちゃうような、アダルトな感じにしています(笑)。ー今回のEP以前は夜の曲が多かった、というのは何か意図があったんですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
ブラックミュージックって、夜に聴くイメージのものが多いと思うんです。その雰囲気を再現したいと考えてたら、全部夜になっちゃいました。ー夜に思い入れがあるんですね。
ARARIKU(Gt., Cho.):
まぁ俺とSEは死ぬほど夜にドライブしてましたからね。SE(Ba.):
いつも会ってる時間は夜だったね。ARARIKU(Gt., Cho.):
深夜1時、2時に音楽聴きながら車走らせて、首都高で誰もいない代官山、青山、表参道へ行って「うわ〜、これが都会か」みたいな(笑)。SE(Ba.):
おしゃれな曲を聴いて、表参道を歩いてるだけで楽しいんですよ。夜を纏ってる感じというか。ーそういう思い出から湧き上がるインスピレーションもあるんでしょうね。
ARARIKU(Gt., Cho.):
それはもう顕著に出てると思います。夜のエモさを楽曲にして伝えたいんですよ。SE(Ba.):
俺らの曲聴いて同じようなことをしてほしいなと思いますね。そういう遊びもあるんだぜって。ーAORやシティポップは、みなさんにとってリアルな体験と繋がっている音楽なんですね。
ARARIKU(Gt., Cho.):
そうですね。あと、メンバーみんなルーツも今聴いてる音楽も違って、そういう部分が各パートにしっかり現れてる。ノスタルジックなことをやってるけど、新しい要素が含まれていて、そこに今っぽいリアルさが出るのかなとは感じます。ー12月17日(土)にはワンマンライブが控えていますが、どんなところに注目してほしいですか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
初めてのワンマンライブということで、いろんな演出を考えています。1時間半くらいの時間を通して、聴いて飽きさせないようにしたいと思ってます。SE(Ba.):
ワンマンだからこそ見れる僕らがあるので、そこは楽しみにしてほしいですね。もっと我々の世界観に引き込めると思うので。ARARIKU(Gt., Cho.):
音源だけじゃなくて、生で沸かせられることも大事ですからね。俺らもそこを目指してるし、このくらい演奏できるんだぞってやっとファンに見せられる。俺らを好きな人たちをもっと好きにさせるパフォーマンスをしたいと思います。ーでは最後に、バンドとして今後やってみたいことや挑戦したいことはありますか?
ARARIKU(Gt., Cho.):
やっぱフェスに出たいですね。<GREENROOM FESTIVAL>とか!SHINJIRO(Vo.):
カルチャー系のフェスに出たいね。SE(Ba.):
海沿いのフェスがいいな。ARARIKU(Gt., Cho.):
自信を持って出せるEPも作れたんで、これからもコンスタントにライブ活動を続けてお客さんを逃さないようにしていきたいです。そして、楽曲はより大人っぽくしていきたい。世界観をもっと凝縮させて、クールでムーディーな楽曲を届けたいと思っています。ーそのためには、もっと夜遊びしないとですね(笑)。
ARARIKU(Gt., Cho.):
ちゃんとバーとか行かないとね(笑)。SHINJIRO(Vo.):
もちろん(笑)。ARARIKU(Gt., Cho.):
もう大人にはなってるけど、ずっと大人に憧れていたいんですよ。これっかっこいいな、こういう大人になりたいなっていうことを常に思ってたい。真似事でもいいし、その真似事で自分がかっこよくなってればいいだけだから。それを常に思いながら楽曲にも活かしていけたらと思いますね。RELEASE INFORMATION
EVENT INFORMATION
BESPER THE FIRST ONE-MAN LIVE <GO INTO ORBIT>
日時:12月17日(土)
会場:TOKIO TOKYO
時間:Open 18:00 / Start 18:30▼チケットリンク
https://eplus.jp/sf/detail/3629880001-P0030001P021001?P1=1221
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