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文: 久野麻衣
各国での公演やアーティスト同士のコラボレーションなど、アジア内での音楽の波は今大きなうねりを見せている。数々のインディーバンドがアジアツアーを敢行し、宇多田ヒカルがアジア諸国のアーティストとコラボ楽曲を発表したことも記憶に新しい。彼らのように国内からアジア圏への進出を図るアーティストがいる一方で、アジアから日本のシーンへと進出を図るアーティストも増えている。
タイ出身のアーティストであるPyraはその一人だ。彼女は2016年にApple Music Best New Artistに選出されたことで注目を集め、今年バーニングマンではタイ人アーティストとして初めてパフォーマンスを披露した。
「バーニングマンはとてもクレイジーな場所で、誰も私をジャッジしたりしないから自分がやりたいようにパフォーマンスができる最高のフェスでした。」
11月には初来日を果たし、hotel koé tokyoで行われた公演では、鋭利なサウンドの上を漂う神秘的な歌声とフロアを使った大胆なパフォーマンスでライヴを作り上げていた。
そんな彼女はスタートアップ企業のCEOという意外な経歴の持ち主でもある。アジアのビジネスシーンでキャリアを積み重ねてきた彼女の精神は、活動の場を音楽の世界へと移しても変わることなく上を目指し続けている。
「様々な音楽を聴いていますが誰か一人を追いかけたり、インスピレーションを特別受けるという人はいません。なぜなら、誰かに憧れていたら自分がその人を超えることができなくなるから。あくまで自分自身の音楽を貫いています。」
だからこそアーティストとして本格的に活動を始めた今も彼女の視界は広く、世界へと向いている。今回のアジアツアーでは日本を含め台湾、シンガポール、韓国など様々なアジアの都市を回ることとなっている。そこにはタイの音楽シーン、文化が大きく関わっていた。
「タイではPOP, EDM, ROCK, indie rockなどが人気です。でも、タイではみんな音楽にお金を払いたくないので音楽を聴くのはYouTube。それに英語を理解できる人も少ないんです。だから、私のリスナーは主にSpotifyです。英語を理解できる人が多いシンガポールなどの他の国へアピールした方が聴いてもらえるんだと思います。」
そう語る彼女が今回パフォーマンスをする場の一つとして選んだ日本。これまでにも何度か足を運んだことがあるという。そしてアジアの中でも特に日本の音楽シーンへ大きな関心を寄せているそうだ。
「カルチャーも素敵だし、食べ物も美味しいし、人々の態度も丁寧で親切だから、日本の事は大好き。それに日本の人たちは音楽のことをよく知っているし、いい音楽を探求してると思います。韓国の音楽も人気があるけれどポップミュージック寄りなので、私は特に日本の音楽に注目しています。yahyel, SIRUP, iri, 水曜日のカンパネラ, toe, 中田ヤスタカ, Yosi Horikawaなどが好きです。日本には本当にたくさんの種類の音楽があると思います。」
どうやってそれらのアーティストへと辿り着いたのか聞いてみたところ、そこにも彼女のこれまでのキャリアで培った経験が映し出されているようであった。
「いろんな国のことを勉強したり、実際に足を運んだりしたして、自分に近いアーティストの音楽を聴くようにしています。そうするとトレンドも分かってくるし、自分の音楽をアピールするにはどの国がいいのか、どういう方法がいいのかを知ることができるんです。」
今後はプレイリストを使って認知度を上げ、さらにシンガポール、ロンドン、LAのメジャーレーベルのアーティストとコラボする予定だという。ストリーミングサービスによって広く音楽を届けることができるようになった今、アーティストの活動する世界も広がっている。どこで、どう活動していくのか、アーティスト自身がそれを選ぶことができるのだ。まさに今それを実践し自らの世界を切り開いていくPyraの今後の活躍に期待したい。
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