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文: Vegas PR Group 編:Mao Ohya
コロナ禍以降の音楽シーンにおいて、日本のインディーアーティストが積極的に海外で活動を展開していることは前回の連載で紹介した通り。メジャーアーティストももちろん海外での活動を展開しており、先日発表になった香港の都市型フェスティバル<Clockenflap>の12月開催のラインナップには、イギリスのバンド・PULP(パルプ)と〈88rising〉のJOJI(ジョージ)と並んで、初日のヘッドライナーにYOASOBIがアナウンスされた。
同フェス史上最多動員を記録した今年5月の開催に続き、3日通しのチケットは即日完売。残る1日券の売れ行きも好調のようだ。中でもYOASOBIがヘッドライナーを務める金曜日のチケットのみが既に残りわずかとなっている(9月21日時点)。
ヘッドライナー以外のアーティストの日割りが未だ発表されていないことや、比較的参加しやすい土日のチケットを抑えてのセールスであることを考えると、香港での初パフォーマンスとなるYOASOBIへの期待値が伺える。日本のアーティストにも海外のファンがいることは想像に難くない。では、「日本の音楽」全体としての立ち位置は、グローバルなチャートではどのようなものなのだろうか。
ビルボードジャパンが9月から新たに開始した、日本以外の国と地域で聴かれている日本の楽曲をまとめた新しいチャート「Global Japan Songs Excl. Japan」(※1。2023年9月21日付)によると、国外で最も聴かれている日本の楽曲はYOASOBIの「アイドル」。他にも、藤井風やKing Gnu、imase、米津玄師などがランクインしており、多くのファンにとって納得の行く結果になっているのではないだろうか。ちなみに、シティーポップブームのきっかけの一つにもなった松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」が10位にランクインしており、未だに根強い人気を誇っていることも伺える。
ビルボードジャパンが始める新たなグローバル・チャートとは? https://t.co/uHKCE3ZqMk
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) September 14, 2023
他にも、各国で最も聴かれている日本の曲が異なることもこのチャートから読み取れる。韓国はimaseの「NIGHT DANCER」、シンガポールではYOASOBIの「アイドル」、インドは藤井風の「死ぬのがいいわ」、そしてフランスとイギリスではKing Gnuの「SPECIALZ」がの1位を獲得している。同じアジアの国でも1位の曲が異なる一方、イギリスとフランスでは同じ曲が1位になり、傾向は読み取りにくいものの、地域差があることがわかる。
それぞれの国と地域に日本の音楽のファンが一定数いることは確認できたが、その数は決して多くはない。ビルボードジャパンの同チャートによると、「Global Japan Songs Excl. Japan」に使用しているチャートデータの内、日本の楽曲が占める割合はわずか0.4%。韓国はその10倍の4%を獲得している。53%を獲得しているアメリカが全体の半数以上を占めているとはいえ、全体における日本の楽曲の占有率は決して高くない。
悲観的な数字に映るかもしれないが、これからのチャンスと捉えることもできるだろう。こんなデータもある。毎年世界的な音楽の統計データを発表しているアメリカ・カリフォルニアの企業・Luminate dataによると、日本語の楽曲はアメリカ国内で4番目に多く聴かれていることがわかる。英語・スペイン語・フランス語に次ぐ4番目で、英語を除くと3番目、韓国語よりも多く聴かれている。
「日本語だから」という理由は海外進出を妨げる障壁ではない。アーティストとマッチするファンに向けた適切なアプローチができれば、上記で取り上げた数字は今後伸びていくだろう。
実際、日本のスリーピースバンド・Lampは、大規模なタイアップやプロモーションがないものの、実直な楽曲制作と地道な海外公演の積み重ねで、現在100万人のSpotifyの月間リスナーを記録している。決して、アニメや映画の主題歌を歌うことだけが、海外オーディエンスにアプローチする方法ではない。
今回取り上げた数字は誇らしい数字ではないものの、今後伸びる可能性は大いにある。特に、アニメや映画の主題歌を担当していないLampのようなアーティストの実績があることで、どんなアーティストにも海外での知名度を獲得する門戸が開かれていると言える。そして、より幅広い層のアーティストが「Global Japan Songs Excl. Japan」にチャートインする日もそう遠くないかもしれない。
(※1)Global Japan Songs excl. Japan
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