文: 黒田隆太朗 写:山口こすも
ピート・タウンゼントが言った通り、「ロックンロールは俺達を苦悩から解放してはくれない。 ただ、悩んだまま躍らせるんだ」。ロックンロールは薬にはならない、誰の孤独も救いはしない。ただ、ほんの束の間、極上の夢を見せてくれる。だから大坂元紀が言う「全部、夢」とは、まさしくその通りだろう。この音楽は夢と理想でできている。
さて、このバンドのメンバーを結ぶものは3つある。そのうちのふたつはBLANKEY JET CITYとMGMT。穢れることのない美しきロックンロールと、まばゆくデコレーションされた甘くとろけるサイケポップ。彼らのルーツは、そのままRing Ring Lonely Rollss(通称:リンリン)の音楽性を表している。そして、もうひとつが中期のThe Beatlesである。これだけ名前を出せば説明はいらないだろう。<理解されないことには慣れてしまった>と歌い、下北沢でチケット無料のイベントを行う煌めくサイケデリア。これは居場所のない人間のための音楽だ。
ー60年代のロックンロールと80年代の煌びやかなロック、そして00年代のUSインディを結びつけて、どこまでもロマンチックな音楽を鳴らしていると思います。
森ともか(Vo&Pf&G):
おお!大坂元紀(Vo&G):
ちゃんと伝わっていてよかったぁ。ー(笑)。まずはルーツから聞かせてください。みなさんが、人生で最も撃ち抜かれた音楽はなんですか。
大坂元紀(Vo&G):
俺はブランキー(BLANKEY JET CITY)の解散ライヴを納めた『Last Dance』と、あとはMGMTのファースト『Oracular Spectacular』です。MGMTは、2000年代と60年代を上手く融合したところが好きです。ーそのふたつは、まさにこのバンドの音に直結しますね。
森ともか(Vo&Pf&G):
私はブランキーとMuseです。Museは初期から中期くらいまでが好きですね。大坂元紀(Vo&G):
ゴシックな頃だね。浦野けんじ(G&Syn&Cho):
俺はなんだろう?大坂元紀(Vo&G):
イングヴェイ・マルムスティーンでしょ?浦野けんじ(G&Syn&Cho):
全然通ってないよ!ー(笑)。
浦野けんじ(G&Syn&Cho):
Red Hot Chili Peppersですかね。ギタリストあるあるでお恥ずかしいですけど。ージョン・フルシアンテ?
浦野けんじ(G&Syn&Cho):
そう、フルシアンテですね。作品で言うと『Californication』、彼が抜ける直前のレッチリが好きです。ーShowさんは?
ChanShow(B&Cho):
僕も被っちゃうんですけど、MGMTのファーストですね。浦野けんじ(G&Syn&Cho):
バンドの振り幅が狭い!(笑)。ー(笑)。逆に言うと、共通するバイブスみたいなものを感じてこの4人でやっているのかなと思ったんですけど。最初からやりたい音楽のイメージがあったんですか?
大坂元紀(Vo&G):
僕は学生の頃にウッドストックのDVDをずっと見ていたんですけど、あの時代の色というか、あの頃のサイケデリックな色彩に凄く惹かれていました。The Flaming Lipsも好きなんですけど、あれも音楽的にサイケっていうだけではなくて、音に色彩があるように思うんです。ーなるほど。
大坂元紀(Vo&G):
このバンドを始めた時にはGrouploveが好きで、彼らを見た時に2000年代ぽい色彩サイケやられた!って思って。自分もそういう音楽をやりたくてリンリンを始めました。ーサイケのルーツはそこにあったんですね。じゃあ、ブランキーに惹かれる理由は?
ChanShow(B&Cho):
唯一無二。大坂元紀(Vo&G):
誰からも理解されていない感じ。ーそれは、凄くよくわかります。
大坂元紀(Vo&G):
本当に純粋。その純粋さに惹かれています。ーその「誰からも理解されない」という感覚は、このバンドのリリックにもよく書かれていますよね。
大坂元紀(Vo&G):
そうですね、ずっと孤独。その感覚は常にあります。そんなに音楽的に仲良くなるバンドもいないし、いろんなシーンがあるのに僕らだけがどこにもはまらない。だからもう、好きなことやればいいや、生きている内にっていう感じでこのバンドをやっています。ーブランキーって危いからこそ魅惑的で、抜き身の刃物みたいなバンドだと思うんです。
森ともか(Vo&Pf&G):
ああ、わかります。ーそれに比べるとこのバンドは、それこそMGMTのようなキラキラとした音を出しています。その差はなんだと思いますか。
大坂元紀(Vo&G):
ヤンキーじゃない。浦野けんじ(G&Syn&Cho):
即答だったね(笑)。ChanShow(B&Cho):
でも、元々はそういう尖ったバンドをやっていたんですよ。森ともか(Vo&Pf&G):
そう、昔そういう時期があってのこの音楽です。20代前半くらいまでは、皆各々が尖ったバンドをやっていました(笑)。ー新しいバンドを組んだ時、スタンスが変わったのは何故ですか?
大坂元紀(Vo&G):
1回音楽をやめて、それでももう1回音楽をやりたいと思った時に、老若男女が楽しめるものをやりたいと思って。それで「受け入れ態勢ミュージック」になりました。ー大坂さんと森さんで結成されたんですよね?
森ともか(Vo&Pf&G):
そうですね。その時にもう尖る時代じゃないよねって話て。みんなで音楽を楽しんで、お酒飲んで笑うような空気を作れる曲をやりたいなって思いました。その上で自分達の好きな音楽、ルーツを入れてやっていこうと決めました。RELATED PLAYLIST
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