田中利幸(新東京)が追求する創作の理想像。“夢中”や“こだわり”に対して、世の中は思いのほか冷たい

Column

文: 田中利幸(新東京)  編:riko ito 

毎月テーマを設けてインタビューやコラム、プレイリストを掲載していく特集企画。2024年8月/9月は“crazy about… ―次世代がいま、夢中なこと―”というテーマのもと、次世代を担うアーティストたちに登場してもらい、表現の根源となっているものや日常で考えていることについて伺っていく。今回の記事では、ネクストブレイクアーティストとして注目度の高い4人組ギターレスバンド・新東京の田中利幸(Key.)に、“創作への姿勢に影響を与えた出来事”をテーマにコラムを執筆してもらった。

僕は彼と、新東京を結成した。創作の熱量に対する共鳴がバンドの起源

“夢中”や“こだわり”というものに対して、世の中は思いのほか冷たい。文化祭での共同作業やなんかでは、最も声の大きい者の意見か、最大公約数っぽい意見を採用する必要がある。まず仲良く楽しくやること、それが第一義であり、個人的なこだわり故に対立して険悪なムードになるなんて以ての外だ。当たり前のことだが僕にはそれがどうにも難しかった。高校3年にもなるとそんな自分の性格と上手に向き合い、一人で出し物の劇伴を制作したり、映像を作ったりした。

バンドメンバーを探そうと5年前に登録した掲示板に、久々にログインしてみた。当時そこで知り合ったドラマーの「@a__」。彼の最終ログイン日時はその頃のままだった。

長らく使っていなかった“笑”や感嘆符ばかりの無垢なやり取りを経て、優真と僕はスタジオで初セッションをすることになる。僕達はすぐに意気投合し、曲を作りはじめた。「Cynical City」という楽曲で初めて彼とドラムのフレーズを作ったとき、僕と同じ熱量で制作に取り組んでくれたことにかなり驚いたのを覚えている。僕が曖昧に伝えたアイデアや、言葉にできないニュアンスを一つひとつ掬い上げ、イメージと違うと言えば何度でも立ち向かってきた。食事や睡眠をしている場合じゃない、驚天動地の何かが生まれ出る瞬間の緊張感が漂っていた。僕は彼と、新東京を結成した。

過剰なこだわりが煙たがられることは今でも多い。創作過程では必ずと言っていい程、妥協や効率化の声がちらつく。もちろん妥協が絶対悪だとは言い切れない。それが完成したのなら、少なくとも一つは妥協がある。

しかし掲示板での偶然の出会いが僕に与えた影響は計り知れない。信じてきた創作に対する理想の姿勢と、それに伴う覚悟が、保田優真というドラマーによってより明確な形を取るようになったのだ。

これからも、メンバーと共に理想の音楽を追い求めていきたい。そんな姿勢を持ち続ける大人でありたいとも思う。そして僕らの音楽が、今度は誰かの人生に新たな景色を見せることができれば、それほど嬉しいことはない。

PROFILE

新東京(しんとうきょう)

2021年結成の4人組ギターレスバンド。メンバーは、杉田春音(Vo.) 、田中利幸(Key.)、大蔵倫太郎(Ba.) 、保田優真(Dr.)。

リズミカルで洗練されたキーボードの旋律を中心に、テクニックに定評のあるベースとドラムが疾走感のあるリズムを刻む。そして、文学的なレトリックを含んだリリックを鮮明に表現する抜群の歌唱センスを持ち合わせたボーカル。メンバー4人の個性と、上品かつ鋭角なセンスとユーモアが交じり合い、都会的な新時代J-POPを鳴らしている。

独自のスタイルを貫きつつ、新時代ミュージシャンとしての新たな在り方を体現。2022年2月にはバンド組織を法人化し、新東京合同会社を設立した。さらに、2024年2月には、初のフルアルバム『NEO TOKYO METRO』を引っ提げ、全国6都市を巡る全国ワンマンツアーを開催。ファイナルとなる恵比寿LIQUIDROOM公演ではソールドアウトを果たした。また、2024年10月末日に最新EP『新東京 #5』をリリースすることが決定。11月22日(金)には、東京・Zepp Shinjukuで<ONE-MAN LIVE “NEOVERSE”>を行うことが決定している。

RELEASE INFORMATION

新東京 New Single「This Reality」

2024年9月18日リリース
Label:新東京合同会社 / ArtLed

▼各種配信URL
https://nex-tone.link/A00162791
▼Music Video
https://youtu.be/4mYE5jLNq84

新東京 New EP『新東京 #5』

2024年10月末日リリース

LIVE INFORMATION

ONE-MAN LIVE “NEOVERSE”

2024年11月22日(金)at 東京・Zepp Shinjuku
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET:ADV. ¥4,500(+1D)

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