進化を続けるKennyDoesが語る「変わらないラップへの気持ち」

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KennyDoes&Cosaquのアルバム『NEVER CHANGE』がリリース。本インタビューでは、サブスクで聴けるKennyDoesのソロ作や梅田サイファーでの活動も振り返りつつ、今作の解説と彼のキャリアの中で「変わらない=NEVER CHANGE」なものについて焦点を当てる。

6月16日、KennyDoes&Cosaquのアルバム『NEVER CHANGE』がリリースされた。

3月21日にリリースされた梅田サイファーのアルバム『ビッグジャンボジェット』でもその抜群のラップスキルを随所で見せたラッパー・KennyDoesと同作品でのビート提供やエンジニアリングを担当したプロデューサーのCosaquがタッグを組んで制作された今作。  

KennyDoesが昨年リリースした『セレブレイション』など、深く関わって近年の制作を続けてきた2人だ。アルバム序盤から代名詞である駆け抜けるようなspitでリスナーを惹きつけ、終盤にはエモーショナルなテイストも存分に発揮されるなど自身ソロの前作より新たにバリエーションを増すKennyDoes。そこに彼の個性を理解して活かすCosaquのプロデュースワークが絡み合い、一貫性のあるソリッドなラップアルバムが生まれた。

本インタビューでは、サブスクで聴けるKennyDoesのソロ作や梅田サイファーでの活動も振り返りつつ、今作の解説と彼のキャリアの中で「変わらない=NEVER CHANGE」なものについて焦点を当てる。

遠い未来にいる自分が聴いても納得できるようにって思いながら常に制作してます

ーまずは『NEVER CHANGE』、リリースおめでとうございます。

ありがとうございます!

ー今回のインタビューでは、今作に至るまでのサブスクで聴ける作品を振り返りつつ、KennyDoesの変わった部分と変わらない部分に焦点を当てていけたらと思っています。まず2019年3月リリースの『Realize Pt1』、このアルバムは今振り返るとどの様な作品だと感じていますか?

わがままなアルバムですね。あんまり聴き手のこととかを考えずに作ったなっていう思い出があります。当時は特にややこしいラップが好きな時期で、そういったものを作ることによってラップへの熱意を証明したいって思ってました。

制作時期は梅田の3rdアルバム『Never Get Old』と同じぐらいやったと思います。トラックメイカー/エンジニアのdio jさんにバックアップしてもらって制作させてもらいました。

ーエッジのある作品でしたよね。2019年はそれからヒット曲も収録されている梅田サイファーの作品が2枚リリースされて、そのリリースツアーなどもありました。続いて2020年1月にリリースされた『セレブレイション』では『Realize Pt.1』よりダンサブルで温かみのある作品になった印象がありますが、この変化は梅田サイファーの躍進も影響されてるのでしょうか?

そうですね。ツアーに行ってお客さんの顔が見えるようになった事もあって、お客さんが盛り上がれるようにってことでシンプルな作品になりました。自分のやりたい事も全部やったつもりなんですけど、聴き手のことも意識してやるようになった感じですかね。

ー『セレブレイション』ではご自身で制作されたビートも収録されていますが、ビートを作り始めたきっかけはありますか?

現行のUSヒップホップ、特にSouthside(サウスサイド)のビートやBig K.R.I.T(ビック・クリット)を聴いて、このテンポ感でやりたいって思って。自分で作った方が早いので始めてみました。

『セレブレイション』の中で最初に出来たのは、「気持ち」と「セレブレイション」。ここからどう組み立てていこうかなって思った時に、例えば「Pay」とか「導き」みたいな曲を自分で作るために始めました。

ー今作の『NEVER CHANGE』では、先ほど挙げた2つの作品の良さが組み合わさった仕上がりになってる印象もありました。

そういう部分も出しつつ、ただ全般的に、エッジというより優しさの方が多めかなって思ってます。「RUN!」とか「Verlander」ではエッジを強めにいったんですけど。優しさの方が多めになったのは、Cosaquさんのビートが連れていってくれた所なんかなって思ってて。

制作の途中までは自分で割とコントロールしようとしてたんですけど、Cosaquさんと衝突した事もあって。音数のこととか言い合ったんですけど、その時にこっちの言いたいことばっかり聴いてもらってても仕方ないなって気づきましたね。実際にそうなってからの制作の方がコンビネーションも上がりましたし、Cosaqu先生のビートが素晴らしいのは間違いないので、それに身を委ねる形になっていきました。

ーKennyDoesさんのソロとビートメイカー/エンジニアとしてのCosaquさんの制作は、梅田サイファーの3rd『Never Get Old』に収録されているタイトルトラック「Never Get Old」から始まりましたが、今作でダブルネームでのリリースとなった経緯を伺ってもいいですか?

その曲の方の「Never Get Old」自体がかなり手応えがあって。あと『セレブレイション』に収録されている「Elevator」や「夜は待ってる」もめっちゃ良かったし、「Dance Shit」に関してはビートも2人で作ってるんですよ。その時から気が合って、「言ってることわかる〜」って思ったのでどっちからともなく2人でやろやって話になりました。

ちなみに一番最初に出来たのは、「24」と「Echoes」の元のバージョンで、「Echoes」はまるっきりヴァースが最初は違ってて。その2曲が出来てから途中に梅田サイファーの4th『ビッグジャンボジェット』の制作も挟まりつつ、今年の4〜5月辺りで仕上げていった感じですね。

ーKennyDoesさんが思うCosaquさんのビートの特徴はどこにありますか?

まず、出音が良い所ですね。しっかり音が鳴るっていう。それって結構難しくて。そもそもビートメイカーってそこまでしっかり音鳴らさないとあかんわけじゃないと自分は思うんですよ。ミックスやマスタリングをする人もいるので。ただある程度は要るし、出音がしっかりしてるのでCosaquさんのビートは音として説得力がありますね。そこがCosaquさんがオールインワンプロデューサーたらしめる所以であるというか。

もう一つは、感情が乗りやすいビートですね。テーマまで決まってるわけじゃないけど、ラップのイメージありきでビートを作ってくれてると思うんですよね。ビートの中には音が鳴りすぎてるものもあって、それやとラップする場所が無いこともあったり。ただCosaquさんはラップを乗せた後に色々付けてくれたりするから、書く上で想像しやすいっていうのはありますね。

ーCosaquさんはビートメイカーでありエンジニアでもあり、さらに元々はラッパーで、素質も十二分にある人ですもんね。今のお話も正にオールインワンプロデューサーやから成せる仕事というか。

そうですね。Cosaquさんとスタジオでやる意味はトータルで面倒見てくれるからっていうところが一番大きくて。ビートだけじゃなくて、ラップがあかんかったらあかんって言ってくれるし。ディレクションの言い方も考えてくれながら、言わなあかんところは言ってくれるので非常にありがたいですね。

言われたことの中で一番最低ラインやったのは、「ちょっと何したいか分からへんかな」って(笑)。これは100%外したって思った(笑)。

ーアルバム内での2人のバランスはチームでありつつ、ビートスイッチなどCosaquさんの細かく変化していくビートに対応するKennyDoesさんのアプローチがセッションのようでもあるなと思いました。どちらか1人じゃ成立してないよなっていう。

それはめっちゃあるっすね。自分ではこういうビート作れないし、このビートが無かったらこのテーマになってないと思う。例えば、「三井」とかは絶対出てこないですね。特にビートありきで作りました。てか、「三井」て(笑)。

ー三井…みつい…?って僕も思ったんですけど、SLAM DUNKの三井寿やと分かった時は驚きました(笑)。

これR君(R-指定)に相談したんですよ。「タイトル、三井か炎の男かNo.14かどれが良いと思います?」って言ったらまず「炎の男ちゃう?」って言われましたけど2人で話して三井になりましたね(笑)。

ちなみに「Verlander」も野球選手のJustin Verlander(ジャスティン・バーランダー)から取ってるんで、苗字の曲が2つあります。

そりゃリアルじゃないと。リアルしか無いから。

ー「Echoes」では、制作で難航されたこともあったみたいですね。

『ビッグジャンボジェット』の制作を通じて自分のラップのレベルが上がったなって感じて、それより前の時期に作った今回のアルバムの曲が物足りなく感じました。自分の庭やったら勝負できるけど、「24」とか「Echoes」みたいなビートには上手くアプローチできてなかったんで。アップデートされたんでもう一回やらせてくださいって感じで作り直しました。「24」はブリッジを途中に挟んだり、試行錯誤を重ねたって感じですかね。

ー『ビッグジャンボジェット』での成長というのは、外に向けて開いて発信するようなモチベーションが加わった部分もあるのでしょうか?

『ビッグジャンボジェット』自体のテーマはHIPHOPのままJ-POPと勝負するようなことでしたし、自分のソロについても完成した曲のジャッジに関してはそういう意識もあるんですけど。というより、梅田のみんなが成長しまくってるから置いていかれたくないって感じですかね。梅田サイファーって自分からしたらどこまでいっても分からせ合いしばき合いなんで。しばかれたなーって思ったらしばき返すって意識で『ビッグジャンボジェット』の制作には臨んでました。

ーどこまでいってもしばき合い、梅田の皆さんのラップスキル至上主義的な部分に繋がってくるワードですね(笑)。『NEVER CHANGE』を聴いてまず思ったのは、国内のシーンでもトップクラスにラップミュージックに対してストイックな姿勢を保ったアルバムだなっていう。あとKennyDoesさんのピュアさ。まず純粋にラップを好きな気持ちが無いと辿り着けないスタイルだとも思います。

今回のアルバムを通じて改めて思ったのは、楽曲制作の楽しさです。ここにこのパーツを入れたらこうなるんや、このビートに対してはこういうラップの方がハマるんや、とか。ただ歌詞を書くのが1番難しいんですよね。

ー「考えすぎは良くないぜ」、「誰かにはなれない」って歌うのも、考えすぎてしまったり誰かになりたいと思ったことがある人だからこそ書けるし歌いたくなるトピックかもしれませんね。

自分の過去の曲に救われる事が多いんですよね。ダルい日に「セレブレイション」を聴いて気分が良くなったり、かませへんかったなって時に「CHECK」を聴いたらやる気が出たり。積み重ねやなって思います。リスナーさんの顔も見えるんですけど、遠い未来にいる自分が聴いても納得できるようにって思いながら常に制作してます。

ー今作で新たに挑戦した事はありますか?

このアルバム、これでも自分的には言葉数を少なくした方やと思ってます。その理由は、聴いて何を言ってるか分からないとあかんなって思って。特に終盤の3曲とかはそれを意識した上での良い所が出たなって思いますね。

ー外に開いて発信する意識ですね。特に「遠くまで行こう」は、固有名詞も少なく言葉も抽象的なのに曲のイメージはハッキリ伝わってくる印象でした。

前半の方が閉じてると思われがちなんですけど、自分の中で開いてくれたのは「DAYZ」やったんですよね。制作の真ん中辺りで出来た曲なんですけど、pekoさんが最初に「めっちゃ開けてる」って褒めてくれました。そこから自分の中で開いていくフィーリングが生まれて、作る曲も開いていきましたね(笑)。

ー『NEVER CHANGE』制作までの変化で音楽以外に関して言うと、勤めていた家電量販店を辞めて音楽一本での生活に切り替えたそうですね。音楽のことを考えることが増えた生活は実際されてみていかがですか?

ビビるぐらい楽しいっすね。やっぱり思ったことを思った時にできるっていうのがありますし。この楽しさを知ってしまうと、できるだけ長く続けたいって思っちゃいますね。

ただ普通にお仕事してるのとはちょっと違いますけど、生きていく為のお金を稼ぐっていう意味でのやらなあかんことは同じなんでね。ゆるゆるやってもおられへんかなって思ってます。

ー現在のご自身の中で、音楽の位置付けはどう変化していったでしょうか。

昔よく「趣味以上夢未満」って言ってて。それは趣味よりは本気やけど夢と言える物でもない、みたいな意味やったんですけど。それが今は、趣味でもないし夢でもなく「目標」みたいなポジティブな意味に自分の中でなりました。そういう意味で変わってないと思います。

ーリアルですね。

そりゃリアルじゃないと。リアルしか無いから。特別な生い立ちでもないし、悪いわけでもないし、バトルが強いわけでもないし。じゃあ何があんのって言ったら、リアルにラップする事。それが本来HIPHOPのあるべき姿やと思うし。夢見さすとかも別に良いけど、最後はリアルでありたいなって思います。

ー改めて、KennyDoesにとって変わらないもの=NEVER CHANGEである部分を教えてください。

ラップへの気持ちですかね。割と浅く広く何でもやってきたタイプではありますけど、結局辞めなかったものってラップだけなんで。ラップに対しての気持ちはずっと同じ。これだけは何があっても辞めへんやろなって今は思ってます。自分の音楽を伝えるっていうステージに今来てると思うんですけど、自分のラップをしたいって気持ちも不変です。

ー今後のソロでの展望は具体的にありますか?

曲は常日頃作ってますし、ビートメイカーとして色んな人の曲の中で聴いてもらえる機会が増えると思います。実際にビート送って返ってきたラップ聴くと、めっちゃ良いのばっかりなんで。ビートメイカーとしても頑張っていきたい。

ソロのラッパーとしては、今28歳なんですけど30の歳までに大きなワンマンをやりたいなって。今までの自分やったらここで目標とか言わなかったと思うんですけど、あえて言うなら服部緑地野外音楽堂でワンマンをやりたい。それはかなり遠い道のりですし、2年あるので地道にやっていきたいですね。

ー最後に、読者の方へコメントあればお願いします。

まずはいつも聴いてくださってる方には感謝を。ライブを見に来てくれたりとかCD買ってくれたりとか、気にかけてくださる方がいないと僕は成り立たないので。そして梅田の仲間に感謝を、何よりCosaquさんには今回の件も含めて感謝してもしきれないです。

それと、やりたいことある人は一緒にやりましょう!一緒に。何でも良いです、ラップしたいとか曲作りたいとか。もはやそんなんじゃなくて、昼寝したいとか晩飯何か作りたいとか何でも良いんですけど(笑)。誰も止められないです。一緒に頑張りましょう。

KennyDoes「NEVER CHANGE」
teppei「Arrhythmia」リリースツーマン

2021年8月1日(日)
OPEN 17:00
OSAKA CONPASS

¥3,500 +1D

ACT:
KeenyDoes
teppei

ライタープロフィール

kyotaro yamakawa

from 兵庫,尼崎
メインテーマとルーツはHIPHOP
フリーのライターとして鋭意活動中

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