文: ヨシヤアツキ
ー音楽の原体験を教えてください
小さい頃は親の影響で車でよくEarth,Wind & Fireのコンピアルバムを聴いてました。カセットだったんですけど擦り切れるまで聴いてましたね。あとはMichael Jackson。でも意識して聴いていたわけではないので、あんまり印象的ではないです。小さい頃の思い出的な感じですね。
自分から意識的に聴いてた音楽は小学校の頃に好きだった映画『スパイダーマン』の劇中歌だったB. J. Thomasの「雨にぬれても」と、CMでたまたま知ったJ-Fiveの「Moderne Times」ですね。小学校の頃はこれくらいしか聴いてなかったです。
ーでは音楽を始めるきっかけはなんだったのでしょうか?
おじいちゃんの家にギターを弾いてたのがきっかけの1つで。あとは中学校に入ってから吹奏楽部でフルートを始めたので音楽には携わっていたんですけど、その頃に部内で仲の良かった友達とバンドを組んだのがきっかけですね。漠然的にバンドやってみたいっていう気持ちがあって。でも軽音楽部もないし、学校も軽音禁止だったし...あんまり周囲から良しとされてないものだったから、やりたいって思ったんだと思います。でも結局バンド組んでから2年くらいは活動はしませんでした。
ーそして本格的に始めた2016年にRO69JACKで優勝したという。
そうですね。楽曲製作は全部僕がやって、できた奴をもう1人のメンバーと一緒に地元、多摩の公民館で練習してました。去年までそこでやってましたね。今はサポートメンバーが横浜なのでそこまで行ってます。
ーなぜフルートをやろうと思ったのですか?
ほんとはバリトンサックスがやりたかったんですけど...でかいし、見た目がかっこいいから。でも部活に3ヶ月遅れて入ったので空いてるフルートになってしまったんです。でも今思うとその頃に聴いてた音楽には影響を受けてると思います。フルートの曲ではsolsonicsの「Jazz in the Present Tense」が好きですね。この曲ばっかり練習して課題曲を練習しないで怒られてました(笑)。この曲のフルートソロが衝撃的にかっこよくて。
ー確かに、betcover!!の源流を感じます。
あとはJethro Tullですね。ジャンルはハードロックなんですけどボーカルがフルートを吹くんですよ。最初に見た時は爆笑しちゃって(笑)。何故かって、ライブ中にフルート振り回すんですよ。僕も部活の時に振り回して一緒に練習してた子に怒られてましたね。あとはceroもフルートの音が入った曲が印象的で好きなので、自分が作る楽曲にも今まで以上に取り入れていきたいです。影響を受けてるって自覚がないくらい聴いていたので、完全に自分のものになってます。
ー前作『high school!! ep.』と比べて今作『サンダーボルトチェーンソー』はどんなイメージで製作されたんですか?
前作は自分たちの演奏技術とか録音環境が理想とは遠かったので、その時にやれる範囲で最高の表現を目指しました。あの時はSF感を表に出したかったので、ローファイっぽいアプローチが多かったですね。今作はかなり変わって、邦楽感を意識して製作しました。大貫妙子さんとかフィッシュマンズ、スガシカオさんをレコーディング前に聴き込んでわざとインスパイアされるようにしたり。特にスガシカオさんのファースト・アルバム『Clover』を聴きましたね。1曲目の「新しい家」は「ヒットチャートをかけぬけろ」のサビの朝ドラに似合いそうなイメージで作りました。
ー確かに前作とはまた別の魅力を感じました。
作風が大きく変わって、方向性に迷いがあると思われるかもしれませんが、そういうつもりではなくて。本来やりたかったのが今回の音楽なんです。まぁ、年齢的に心境が変わりやすいこともあるかもですが、それはどうしようもないと思ってます。ただ今回の作風はこれからも変わらないと思います。
ー今回制作するにあたって、特に意識したことはありますか?
ごちゃごちゃさせないことは意識しました。具体的に言うと、歪みを使うのを抑えたり。音に迫力がないと聴いてもらえないかと考えたりもしましたけど、1度自分のやりたいことやってみようと思って。
ー前作を聴いた時、個人的に焦燥感と浮遊感が同居してる曲調が印象的だったのですが、今作はその焦燥感が丸くなったように感じます。
確かに全体的に曲調はふわふわして良い曲だと思われがちですが、メッセージは真逆なんです。あまりはっきりは言いたくないんですけど...。あえて分からないようにしてるので深読みして欲しいですね。多分曲単位で聴くと分からないかもしれないですけど、アルバム通して流れで聴くと言いたいことが伝わるかもしれないです。それはここでいうのは違うかなって思います。言ってしまうとそれになってしまうので。聴いて感じ取ってもらいたいです。
ー歌詞にこだわったということですか?
はい。前作は感覚的に書いた部分も多かったんですけど、今回はすごく悩んで書きました。全部ちゃんとやると、それはそれで伝わらないかなと思って、あえてふざけてみたりしました。1番分かりやすいのは「平和の大使」の歌詞にはない「は?」という言葉で。結局このアルバムで僕が言いたいことを理解してくれても、それでも世間的な反応はその一言で共感はしてくれないだろうなって。というのも分かりつつ書いてるよっていうメッセージです。
ー普段から世の中に違和感を感じる事があるということですか?
ここからは個人的な話ですけど、その前に自分の人生に対する危機感があって。以前、入学した高校が自分には合わなくて5か月後に辞めちゃったんです。やめたはいいけどどうしようか悩んで、とりあえず弁当屋さんでバイト始めて、1年間家とバイト先を行き来するだけの生活をしてました。その間はずっと不安でしたね。社会性が薄めで集団とかあまり得意ではないですし。
世の中に対する漠然とした不満もあります。個人的な意見ですけど、例えばネット上にいる匿名の何も考えてない人とか、みんな同じでオリジナリティがないと僕は思うんです。だからといって、そんな世の中を自分が変えたいとは思いません。ただ、そう思ってる人もいるっていう事を知って欲しいですね。
ーそれって集団の中にいたら分からないかもしれないですね。
だから普通に僻みもあるのかもしれない。裏返しの可能性もあるんですよね。最近同年代の人がすごい速さでいわゆる「大人」な雰囲気になっていることとかに対して、誰でも大人になれるんだから1人くらい拒否したっていいじゃないかって思うんです。そうじゃない奴が1人いても許してくれるよって。でも誰もがそれを潰したがるっていうか、そうやって自分を正当化させてるんじゃないかって。
ーそれが集団であるということですよね。
そう、集団なんですよ。「お前も俺らと一緒」って言いたいんですよね。自分側に引き入れたいんです。でも僕はそういうものに対して絶対に立ち向かって生きたい。マイケルだって一生大人にならなかったし。だから僕もビビらないでいこうと思っています。
決して大勢に受け入れられなくてもいいです。理解してくれる人が少しでもいれば。でも少し欲を言えば、絶対理解しないであろう人にも意見の1つとして聞いてもらいたいとも思っていて。こういう意見もあるよなって思って欲しくて、そのために魂に訴えかける曲を作っていきたいです。
ーサニーデイ・サービスの『the SEA』プロジェクトが話題になっていましたが、製作に参加されていかかでしたか?
とにかく「FUCK YOU音頭」は僕の中で衝撃でした。僕に役目をくれるということは思い切ったことして良いんだろうなと思ってリミックスをしたんですけど、1番最初に出た曽我部さんの「FUCK YOU音頭」を聴いて面食らいました。でもあの曲に僕と共感できるところがあるんじゃないかなって思えたんです。あんなこと歌う人なんてなかなかいないじゃないですか。あんだけ知名度もあって、前作も凄く評判で注目がたくさん集まってるところであんな事をやってしまう...。すごいパンク精神ですよね、僕もあんな曲を作ってみたいです。
ー先程、「魂に訴えかける曲」と言っていましたが具体的にどんな事をしていきたいのか、今の時点で考えはありますか?
舞台的な要素をライブに取り入れたいです。舞台特有の生のエネルギーはすごいと思っていて。地元の近くにある、せんがわ劇場っていう劇場が凄く好きなので、そこで機械を経由しない、生音だけのライブをしてみたいですね。でもそれはもっと先かな...最終的にはそんなことをしたい。それこそ舞台と一緒にやってもみたいですね。
近い目標でいうと、フェスに出たりして沢山ライブをしたいです。あとは魂を削ってしんどくやっていきたいと思ってます。楽しくはやっていきたくないです。思ったことが最終的にできなくても、ハッピーに生きるよりはまだマシかなって。映像撮ってる友達が言ってたんですけど、「幸せになったら死を待つだけ」って。幸せになったら死があるだけだから不幸でいようって言ってました。そうだなって思います。
New Release Information
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【2nd ep】『サンダーボルトチェーンソー』
Release:2018年8月1日(水)
Format : CD&Digital
詳細はこちら
Live Information
レコ発2マンライブ「サンダーボルト多摩」
日時:2018年8月21日(火)
場所:下北沢THREE
Adv:2300円 with 1 drink
open:19:00
詳細はこちら
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