文: 久野麻衣 写:Mikikix
ーまずはMISTAKESとしてバンドが始まったきっかけを教えて頂けますか?
佐藤栄太郎(以下、佐藤):
最初は僕と(宮内)シンジの二人で始まったんです。各々でやってるバンドがあって、一緒にツアーを回ったり仲良くしてて。その時はQUATTROを筆頭にガレージ・ロックが流行っていたんです。そこでシンジが「こうゆうR&Bっぽい感じの曲やりたくないですか」って声かけてきて。宮内シンジ(以下、宮内):
2012年くらいですよね。佐藤:
当時友人と“Early 90sがくるんじゃないか”という話をよくしていて、TLCとかがリヴァイヴァルするんじゃないかなと。その時やってたバンドもガレージ・ロックとは言えど、ちょっとダーティーな雰囲気だったんで繋がりやすかったですね。でも、曲を作るために家に行ってもYouTube見て、鍋して終わり、だったんです(笑)。そんな期間が何年かあって、ようやく曲が出来た時に当時働いてたライヴハウスの店長に聴いてもらったんです。そしたら「ライヴやったほうがいいよ」ってその人が企画に呼んでくださって。ずっと何年も「曲できなくて…」って話をしてたからケツを叩かないと動かないと思われたんでしょうね。それで、ライヴやらなきゃってなった時に、ベースとして(井上)まさやさんを迎えて。
井上まさや(以下、井上):
2014年の1、2月でしたね。年明けくらいに栄太郎から連絡来て。佐藤:
彼とは大学時代に文化祭でコピバンをやったんですよ。マリーナ・ショウの「Feel Like Makin' Love」、ジョージ・ハリスンとかをやって。井上:
その後はライヴハウスですれ違う程度で年に一回会うか会わないかくらいだったけどね。佐藤:
でもベースを入れるってなった時に色んな人とスタジオに入ってみたんですけど、まさやさんが一番はまってました。もう何年も一緒にやってるんじゃないかって思うくらいのアンサンブルだったんです。それでまさやさんが加わり、その後に去年抜けたメンバーも加わって5人でライヴを始めました。ーライヴでも披露してる曲でアークティック・モンキーズの「505」のカバーがありますが、あれはどういった経緯で生まれたんですか?
宮内:
あれは最初に栄太郎さんと二人で作ったうちの1曲なんです。井上:
最初スタジオに入る時に「これやるから聞いといて」って渡されたうちの1曲でしたね。それがアークティック・モンキーズのカバーだって俺が知ることになるのはその半年後くらいですけど(笑)。宮内:
あれは彼等のセカンドアルバムの最後の曲なんです。毎回ライヴのフィナーレに選ばれているのが印象的でした。2コードで進行していくシンプルな構成はアレンジの幅が効くと思い、提案しました。佐藤:
あれは名チョイスだったね。ー今Spotifyではみなさんが作った100個のプレイリストが公開されていますが、あれはどういうきっかけで作ることになったんですか?
佐藤:
音楽を聴く方法も、色んな選択肢の中から選べるようになったと思うんですよ。その中でもサブスクリプションサービスが一際盛り上がって来ていて、そこで何か提案したかったんです。それで“100個のプレイリスト”って無謀だとか思われるかもしれないけど、全部本気で作ったらすごく面白いものになるんじゃないかなって思ったんです。宮内:
いまはアーティストがSpotifyやApple Music上にプライベートなプレイリストを公開することが自然に受け入れられている時代だと思います。俺は子供の頃MDで音楽を聴いてきた世代なので、当時気に入ったCDをジャンルや国ごとに区別してMDにコピーしていた作業が、時を経てiPhoneひとつで簡単に出来るようになっただけで楽しさに違いはありません。ー100個のプレイリストの中で特に思い入れのあるプレイリストってどれになりますか?
宮内:
俺は「#psbm 47 THE BEATLES バラードベスト」です。『The Beatles Anthology』に収録されているデモや別テイクからも選びつつ、解散後のそれぞれのソロアルバムも含めて彼等の歴史を時系列順に並べています。ー時系列までってすごいこだわりだと思うのですが、それぐらいビートルズを愛してるってことですよね。
宮内:
ビートルズは大好きです。初めて聴いたのは小学生の頃。小学四年生の音楽会で五年生の先輩達が「Michelle」と「Girl」をリコーダーや木琴、アコーディオン等で編成されたビックバンド形式で演奏していました。当時、音楽の授業は嫌いでしたが、その演奏が印象的で強く記憶に残っています。ただ、当時はそれがビートルズの曲だということは分かっていなかった。その後大学生になり、なぜか授業で『The Beatles Anthology』のドキュメンタリーを観たんです。彼等のバックグラウンドを学ぶことではじめて音楽そのものに興味が湧いて、いつのまにか大ファンになっていました。佐藤:
全く想像つかないですよね。シンジがそこまでビートルズ好きなんだって僕らも最近知ったんです。ーそもそもみなさんルーツ的なものは同じなんですか?
佐藤:
ルーツはバラバラですよね。でもそこを否定するようなことはないし。宮内:
公約数がいくつかあって、それぞれルーツは違うけど、合流するポイントがあるんです。ーこのジャンルはこの人が強い、みたいなのはありますか?
宮内:
まさやさんは所謂ブラックミュージックを体系的に理解しているので、教えてもらうことが多い。井上:
クラシックなソウルとか、ブラックミュージックが好きですね。ー「#psbm 101 セッションしようや ~井上まさや~」とかを見ると伝わってきますよね。ベースを始めたときからクラシックなものが好きだったんですか?
井上:
大学入ってからですね。ベースは高校2年生から始めたんですけど、その時はロックが好きで。でも高校卒業するくらいに初めてセッションをやってめちゃめちゃ楽しいじゃん!ってはまっちゃいました。他のプレイリストで言ったら「#psbm 77 スーパーフュージョン」も選ぶの楽しかったです。宮内:
「#psbm 69 鶏頭ベースの粥~冷たいジャスミン茶とともに~」はまさやさんの好みが強く反映されています。アーシーなブラックミュージック。佐藤:
「#psbm 63 exquisite」「#psbm 66 intelligent」「#psbm 51 Nyce & Slo」とかもそうだね。ー「#psbm 46 ベースがかっこいい曲」もそうですか?
井上:
これは僕一曲も選んでないんですよ。佐藤:
え、そうなの?!じゃあすごい素人くさい感じになってるってこと?(笑)井上:
それがいいってことでしょう、素人くさくないし、みんなこういうの好きなんだなって思って。ー自分以外の選曲を見るのも色々と感じるものがありますよね。
宮内:
メンバー間で日常的に好きな音楽の話共有していますが、今回プレイリストを作成するにあたって、テーマに対してそれぞれが異なる視点でセレクトされた曲を見るのは新鮮で面白かったです。佐藤:
僕はすごい勉強にしかならなかったな。初めて聴く曲もたくさんあったし。みんなルーツが多すぎるんですよ。ー全員が昔から音楽が好きで、幅広くなんでも聴いてきたってことですね。
宮内:
そうですね。そういう姿勢は共通してるかもしれない。佐藤:
それに、全部を持ってここまで生きてこれたっていうのもありますね。ープレイリストのタイトルを見ても色っぽいタイトルや大人の恋愛を連想させるものが多いと感じたのですが、これは意図的にですか?
宮内:
そういう意識はしていないですね。世の中に女性について歌っている曲が多いから、自然と俺らがそういう曲を聴いている回数も多いわけです。それがナチュラルにプレイリストに反映されていったんだと思います。ー曲やビジュアルもセクシーな男性像が印象的でしたが、それもみなさんの好みが反映されているということですかね?みなさんがかっこいいと思う男性像ってどんなものですか?
佐藤:
好きなことを好きなようにやってる人には美学があると思うんですけど、そこをアピールしない人っていうのが僕はすごく好きです。2人はどうですか?井上:
強そうな人が好きですね。宮内:
確かにそういったかっこよさはありますね。現代的な美的感覚として造形的にビジュアルが美しい人はもちろん良い思いますが、例えばセルジュ・ゲンズブールのような人の粗雑な色気、人間的にぶっきらぼうな美しさを持ったアーティストは音楽もさることながら、人間的にすごく憧れてる部分がある。佐藤:
最近キング・クルールのビジュアルとか最高に好きなんです。もう完璧なんですよ。声は個性的、赤毛で色白でギョロ目で、それがテンション高く歌ってる姿がめちゃくちゃかっこいい。あんまりビジュアルに左右されることってないんですけど。宮内:
例えばロキシー・ミュージックの『アバロン』のような文句のつけようのない完璧なアルバムがあって、そういった計算され尽くした隙のない表現も好きですが、個人的な好みとしては表現として危うさや色気を持ったもののほうが魅力を感じる。佐藤:
不完全さのバランスが完璧っていう人もいますからね。キング・クルールもそうですし、こないだライヴを観たギャラントもそう。やり過ぎてる部分も含めて、1ピースもかけちゃいけないんですよ。そのバランスの美しさはありますね。宮内:
それが"個性"ということなのであれば、色気や不完全な美しさを纏った音楽を無意識に選んでいるのかもしれない。佐藤:
でもそれも難しくて、狙ってそれ行くと良くないし、全く狙わないのも良くない。1、2個外せないものを美学として持って、あとは自然体でいるのが一番いいバランスだと思います。ーMISTAKESに漂う色気も“醸し出してる”って感じですもんね。
佐藤:
そもそもそういう事はわかりやすくアピールする事ではないですよね。感じ取って欲しい。そういう音楽やるんだったら、元々ある文脈に乗るのが一番楽じゃないですか。でもそれは絶対にしたくないんです。自らの意志で取捨選択したぞっていう自分があって、その自分を堂々と表現して、そこで色気が出たらいいですね。ー2017年12月にリリースされたデビュー曲「時代」は余韻のある日本語の歌詞が印象的でしたが歌詞にはどんなこだわりがありますか?
宮内:
これまでの自分は西洋的なカルチャーにどっぷり浸かっていましたが、ここ数年は日本語の美しさにずっと感動していて、今回MISTAKESで日本語の歌詞を書くにあたり、これまでの自分が触れてこなかった日本のアーティストの音楽を聴くようにしました。ー例えばどんな人の歌詞に影響を受けましたか?
宮内:
色々聴きましたが来生たかおさんがすごく好きですね。ー楽曲ができるまでに関しては決まったプロセスはあるんですか?
宮内:
決まっていません。佐藤:
「時代」は結構時間かかってますからね。最初のデモがシンジから送られてきたのが3、4年前で、それからトラックはできたけどバンドに落とし込むところでずっと宙に浮いたままで。でもデビュー曲を出すってなった時に、今までの曲よりは新曲の方がいいと思ってその曲をもう一回デモの時の状態まで戻して作り直しました。そういうものもあれば、速攻でできた曲もあるし、何年もアレンジを加えてきてる曲もあるし。宮内:
それこそSpotifyのプレイリストのタイトルのようなおおまかなテーマだけ決めて作り始めることもあります。佐藤:
入り口はどんなものでもいいんですよ。宮内:
逆に縛りないほうがいいかなって思います。ーではこれからリリースされる楽曲も期待しています。
佐藤:
ぜひ楽しみにしてて下さい。今後はリリースも沢山考えてます。あと、ライヴも積極的にやっていきたいのでどんどん誘って欲しいです。全然知らない人でも、曲を聴いたりライヴ動画を観たりして気に入ってもらえたらメールとかで声をかけてもらえると嬉しいです。
New Release Information
MISTAKES「時代 Metome’s Between the Sheets」
1月19日(金)0:00 よりiTunes Storeでのダウンロード、Apple MusicやSpotifyなどの各種定額制サービスで配信開始。
オリジナル、別ver.をまとめたプレイリストはこちら。
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