姫路から世界へ。ボーダーを超えていくShurkn Papの価値観とは | Newave Japan #50

Newave Japan

文: 久野麻衣  写:Demukai Yosuke 

DIGLEオススメ若手アーティストのインタビュー企画『Newave Japan』。50回目は兵庫県姫路を拠点に活動するラッパーのShurkn Pap。音楽や価値観のルーツを探りながら、彼から見える世界の景色に迫る。

どこにいても世界と繋がれる時代だからこそ、ラッパー Shurkn Papにとって地元・姫路という場所は一つのアイデンティティーとして自身を支える大切なものだ。「心通じてる」と語るほど姫路への思いは深い。

また、逆に彼の楽曲や「Road Trip」以降の目覚ましい活躍は、地元で彼を支える人たちに自分達のいる場所がちゃんと世界と繋がっていることを示している。地元の市民会館とは思えない光景が広がるワンマンライブのダイジェスト映像からもそんな相互の関係性が伝わってくるようだった。

この日世界で一番輝いていたと思える瞬間を共有している。だからこそ彼の活動や音楽性は、恐れることなく様々なボーダーを超えていけるのだろう。

そんな彼の音楽ルーツや楽曲制作への向き合い方、姫路への思いについて話を聞くことで、今彼がどんな価値観で世界を見つめているのか迫った。

感覚と行動力を育てたルーツ

ー幼い頃、音楽はどんな存在でしたか?

ずっと密な関係で、スケートする時もダンスする時も、何をするにも音楽が絶対かかってました。父親が音楽好きなので、その影響が一番大きいと思います。ファンクやソウルが好きで、音楽をやっていたというわけではないんですけど、クラブやディスコによく遊びに行ってたいたらしくて。レコードもたくさん持ってる人でした。

ーでは家ではいつもレコードがかかったんですね。

そうですね。それに、自分からもかけていたと思います。ずっと音楽が鳴っている環境だったので、逆に静かな空間がダメみたいな。今でも家に帰ったらすぐに曲流して、そのまま流しっぱなしにしてますね。

ー初めて買ったCDって覚えてますか?

初めて買ったCDか…なんやったけな…。確かORANGE RANGEの「お願いセニョリータ」だった気がします。それが小学校低学年とかかな。当時めっちゃ流行ってて、あまり邦楽は聴かなかったんですけどORANGE RANGEは知ってました。

ー幼い頃から洋楽中心だったんですね。

小学生の頃は海外のHIPHOPやブラックミュージックを掘ってました。実家の近くに「ビデオ合衆国」っていうレンタルビデオショップがあって、そこでお年玉を全額つぎ込んで棚全部借りたりしてたんです。オムニバスから攻めて、そこから好きだったやつを掘り下げたり、片っ端から聴いてました。

ーあの頃のR&Bコンピとかっていいですよね。

そう、めちゃくちゃバランス取れてて初心者には聴きやすかったです。

ーその中で見つけたお気に入りや当時ハマってたアーティストはいますか?

見つけた中ではやっぱりJay-Zですかね。他にハマったので言うと、うちは車で助手席に座った人がMDを流してたんです。その時に兄がかけたEminemの「Lose Yourself」を聴いた時は初めて音楽で鳥肌が立ちました。なんか心の奥が燃える感じがしたんですよね。

ー鳥肌が立つ程ってすごいですね。

ブラックミュージックは好きだったんですけど、当時はまだHIPHOPというジャンルをそんなに知らなくて。そこで聴いたのがEminemだったんです。彼は今もそうですけど、尖ったキレのあるラップでトラックもどっしりしていて、そんな音楽聴いたことがなかったんで衝撃でした。そこからHIPHOPにはまっていったんです。

ーファッションも影響を受けたり?

そうですね。そもそもは小学生の頃おばあちゃんにGAPのウエスタンジャケットを買ってもらってからファッションへの関心が湧いたんですけど、自分の中で音楽と服は同じくくりでした。スケートやダンスをしている人に影響を受けてたので密に考えてましたね。

ーでも小学校でそういう音楽やファッションを一緒に楽しめる友達っていましたか?

MaisonDeTaiyohとかHash Tがそうです。それで小4の頃一緒にサブロクっていうチームを組んだんですけど、小学生ながらに海外のHIPHOPとか聴いて、そういう恰好をしていました。

ー本当に幼い頃から深く繋がってるんですね。ちなみに、高校生の頃には一人で海外旅行へ行っていたそうですが、やはりそういう海外カルチャーへの憧れから?

やっぱりHIPHOPカルチャーが好きな人はアメリカに憧れますよね。そんな感じでずっとかぶれてましたけど、海外へはとにかく新しい世界で見たことのないものが見たくて行きました。

ー高校生で海外旅行はかなりハードル高いですよね。

英語も全然できなかったんで身振り手振りで。でも怖いとかは一切思わなかったです。

ー今も落ち着いた印象がありますが、そういう経験があるからですかね。海外へ行ってみて、今に影響してることってなんだと思いますか?

“すぐ行動する”、“思いついたものを形にする”という行動力の面が一番大きいですね。自分の中の軸になるものを吸収出来たというか。今もどんどん海外行きたいんですけど。

ー最初に行動に移せたのはなぜでしょう?誰か憧れていた人を参考にしたり?

いや、自分でやりたいと思ったからです。昔から憧れの人ってあまりいないんですけど、そういう人とはいつか一緒に仕事をしたり出会えるだろうって思ってます。

ーブレがないですね。すごく自分のことを信じてるというか…。

根拠のない自信ですね。

ー生き方として意識してることというか、美意識ってどんなところにありますか?

かっこいいと思われたいのもあるんですけど、普通にしてて意図せずかっこいいと思われるのが一番かっこいいので、あまり背伸びをしないようにしてます。身の丈に合った感は意識していますね。

新しい音への探求と自らの使命

ー音楽のキャリアとしては、最初はラップができなかったからDJを始めたと聞きました。

元からDJに興味はあったけど、お金がかかるから手つかずだったんです。でもフリースタイルができなかったからサブロクではDJやるしかないってなった時に、借金して機材を買って。最初はターンテーブル買ってレコードかけてたんですけど、新譜もかけたいし限界感じてパソコンも買いました。でもレコードプレイはずっとしていましたね。

ーレコード使ってたんですね。かけるのはHIPHOP?

主にHIPHOPでしたけど、プレイ時間によってR&Bやファンクだったり、縦横無尽にやってました。あとはフロアにいる人に「さっきの曲何?」って聞かれるようなプレイをするために新譜メインでやったり。

ーそういう経験が今の作品に繋がってるんだと思いますが、DJ経験で一番活きていることって何だと思いますか。

何から何まで今に活きてると思いますけど、やっぱり人との繋がりですね。WILYWNKA君やVIGORMANみたいな、昔からずっと一緒にイベントをやってた関西のラッパーたちが今第一線で活躍しているので、そこは大きいなって感じてます。

ーでは音楽的な部分では?

いろんな音楽を聴いてきた分、エフェクトとかの引き出しは多いと思います。

ー1stアルバム『The ME』の曲の流れや前半のダンス系トラックはDJ経験が発揮されてるのかなと感じました。

もしかしたら意識していないだけで、自然とその感覚があるのかもしれないですね。偏見なくハウスとかテクノも何でも好きなんです。

ー普段からよく聴いてるんですか?

そういう曲は長時間の運転中に聴くことが多いですね。一定のリズムで気持ちよく運転できるんですよ。

ーでも今年3月にリリースされたEP『WHERE IS THE LOVE?』では、ガラッと変わった雰囲気になりましたね。

アルバムを出してから色々なことが重なって心情変化が大きくあったので、前回の作品とは大きく変わったんだと思います。

ーそれは知名度が上がったり、自身を取り巻く環境の変化ですか?

環境というよりは生きていて起こる身の回りの出来事や考えさせられる出来事が多かったので、考え方が変わったというか。
この作品はコロナや年明けのアメリカとイラクの対立を見て書いたんです。世の中がこんな状況なのでメッセージ性が大事だと思って、自分の幸せやいろんな人の幸せを考えながら自分なりに解釈することを意識して書きました。

ーその結果考え方が変わったと。

軸はしっかりブレずに持ちつつ、臨機応変に対応できるよう物事をあまり主観で見すぎないほうがいいなって最近は意識しています。

ーまたさらに達観したような感じですね。そういうモードがトラックにも反映されている感じがします。

どうしても哀愁系というか、感情的なトラックが多かったですね。

ー普段トラック制作はどう進めてるんですか?

一緒にスタジオでセッションしたり、レーベルのスタッフに曲のイメージを伝えて一緒にビートを探したりもします。トラックメイカーやいろんな方と近くで作っていて、いつもやり方は様々ですよ。
いい意味でインプットを増やしたいんです。一緒に作る人との相性もあるし、いろんな方法を試して、日々新しい音を常に探してるというか。暗中模索状態です。でも、それが楽しい。本当に音楽を楽しんでる感じです。そうやっていつか自分たちの新しいジャンルが作れたらいいなって思いますね。

ーバリエーション豊かなトラックや新しい音への探究心は東京のバンド、シンガーとリンクするものを感じますね。

レーベルのボスが色々なジャンルの方と交流があるので、紹介していただいたりセッションもするんですよ。レーベルメイトであるMALIYAちゃん、WONKの洸くんとか。
ジャンルが違えば曲作りやレコーディングの方法も全然違うと思うんで、そういう人たちとはどんどん一緒にやってみたいですね。いい化学反応が起きるんじゃないかって思います。

ー音楽を楽しむと同時に、自分を高めることへの意識も強いですよね。これまでの作品を聴いて自分の未熟さについて歌うリリックが印象的だったんですが、そういう思いが強いんでしょうか?

本当に一人でなんも出来ないんです。色んな人がいるから僕が成り立ってるだけで。それを常に自分の中で忘れずに、大切にしたい。今自分の大好きな音楽ができる環境もそういう人達のおかげだと思うんです。それをフルで活かして、たくさん曲を作って、多くの人に何かを伝えることが自分の使命だと感じているので、全力でやらせてもらってます。

どこにいても姫路と繋がっている

ーShurknさんの周りの人間というと、まずはMaisonDeですよね。クルーでの次のリリースや活動は決まってますか?

リリースについて話し合ったりはしてるんですけど、今はそれぞれ個人の作品を作ってるんで、次にクルーで作るのはそこが落ち着き次第ですね。

ー個人の作品でさらにそれぞれがスキルアップしていきそうですね。

仲間であり、良きライバルです。トラックも影響を受けますし、リリックの表現方法もメンバーそれぞれ違うんで結構参考にしたりしてます。

ーそんなMaisonDeが育った姫路はどんな街か教えてください。

付近の市や県の人からは「治安悪い」とか言われて、あまりいいイメージはないっぽいんですけど、実際はおじいちゃんおばあちゃん達もめっちゃ優しいし、みんな温かくて情緒あふれるいい街だと思います。“下町”っぽいというか。姫路城もあって、誇れるものもあるんで。

ー今の姫路はMaisonDeを中心に若いHIPHOPシーンが出来ていると思いますが、それ以前はどうだったんでしょうか。

今でもそうなんですけど、僕の先輩にあたるPOKER☆FACEっていうダンスグループやゴジャースっていう姫路で活動されてたラッパーの人たちもいて、その年代の人達が盛り上げてくれたシーンがあるんです。そういう人たちとも一緒に姫路という街をどんどん上げていきたいって思ってます。

ーそういうベースがあって今の流れが生まれてるんですね。では、関西HIPHOPシーンでは姫路ってどういうポジション、キャラクターなんでしょう?

ちょっと中心部とは距離があるので、変わったシーンだとは思います。あんまり情報も入らないし、逆に言ったら情報もあんま関係ない。“うちはうち”って感じですね。

ーでは地方にいる不便さも感じない?

今のところ全く感じてないです。音楽するなら東京や都会のほうがプラスになることは多いと思うんですけど、僕は地方にしか出せない味や色を突き詰めて、自分の特化した武器として確立できたらいいって思ってるんで、負い目を感じたり、都会の方に住まなきゃとか全くないです。逆に田舎のほうがいいですね。自然大好きなんで。

ー東京とは時間や人の流れも違いますよね。

東京は色んな人が出てきて、色んな曲やって、目まぐるしいというか。平日でも関係なしにイベントもやってるし、やっぱすごいなって思います。超画期的で刺激的なシーンです。

ーただ、自分が身を置く環境ではないと。

そうですね。周りもみんな「やっぱり姫路がいいよな」って話してますし。

ー地元の団結力が強いですよね。

そこは結構みんな暗黙の了解って感じですね。僕はどこに行ってライブしようとも姫路にはMaisonDeがいるから絶対繋がってる、心通じてると思ってます。

ーそういう気持ちの繋がりが姫路シーンの成長のベースにあるのかもしれないですね。今後、これからさらに大きくなっていくための手段・方法は考えてますか?

具体的に色々考えている段階です。楽曲だけじゃなく、それを発信する見せ方やテクニックも含めて、総合的にできることは全てやっていきたいと思ってます。MaisonDeの中で「姫路でフェスやりたいね」って話もしたりしてて。今関わってくれているみんなを全員巻き込んで、大きくなっていけたらなと思います。

Shurkn Papのルーツプレイリスト

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久野麻衣

DIGLE MAGAZINE 副編集長

PHOTOGRAPHER

Demukai Yosuke

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