「広告業界における音楽の新しい可能性」田中陽樹(GO inc. Producer)|Music Cross Talk

Music Cross Talk

文: Yuya Eto 

各界で話題を集めるビジネスマンやクリエイターをゲストに招き「音楽×○○」というテーマをもとに、パーソナリティーの株式会社TORIHADAの若井映亮とStar Music Entertainment Inc.の中村雄太がトークセッションする新連載『Music Cross Talk』。 記念すべき第1回目は、ケンドリック・ラマーの黒塗り広告の仕掛け人でもある株式会社GOのプロデューサー、田中陽樹さん。取り巻く環境やテクノロジーとともに日々進化し続けている音楽の新しい付加価値について、広告業界の第一線で活躍している彼と共に探っていく。

GO inc. Producer田中陽樹さんに聴く「音楽×広告」

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若井映亮:

今回は僕らの連載『Music Cross Talk』の記念すべき最初のゲストとして出演頂きありがとうございます。田中さんとは「音楽×広告」というテーマで進行できればと思います。
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田中陽樹:

俺以外にも、もっとビュー取れるゲストいるでしょ?(笑)。よろしくお願いします。
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中村雄太:

早速ですが、まずは田中さんの活動について教えてもらってもいいですか?
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田中陽樹:

株式会社GOでビジネスプロデューサーとして、大手企業の新規事業プロデュース、ベンチャー・スタートアップ企業全体のブランディングの仕事を中心にやっています。他にも音楽系の仕事の相談も多くて、そういったカルチャー関係の仕事もやっています。GOの企業テーマが「企業の変化と挑戦にコミットする」なんですけど、話題になる広告を考えて欲しいという相談も頂くので、好きな音楽の仕事に取り組むことも多いですね。
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若井映亮:

音楽の仕事も多いんですね。
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田中陽樹:

僕自身もともと趣味でDJをやっていたし、GOの代表の三浦も日本語ラップ好きなんです。それもあってレーベル関係の方から声を掛けてもらうことも多いですね。
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中村雄太:

もともと電通の社員だったとお聞きしたのですが。
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田中陽樹:

2006年に新卒で電通に入社しました。昔からHIPHOPが好きで、HIPHOPを世の中に広めたいって思いがあったんです。その方法を考えた時にマスメディアの露出は欠かせないだろうし、商業的にも成功しないといけないと思って、大きなことできそうな電通に入ったんです。電通では『WIRED MUSIC FESTIVAL』の立ち上げや、『安室奈美恵×NTTドコモ 25周年プロジェクト』など幅広い経験を積ませていただきました。
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若井映亮:

そうなんですね。GOに入社してからすぐにキングダムとかケンドリック・ラマーとかすごくバズる企画をやっていましたよね。ケンドリック・ラマーは、国会議事堂前や霞ヶ関の駅に突如黒塗り広告が現れてすごく話題になりました。
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田中陽樹:

『WIRED MUSIC FESTIVAL』をやっている時に知り合った仲間がユニバーサル・ミュージックにいて、彼からケンドリック・ラマーが来日する際に、何かプロモーションをしたいっていう相談がきたんです。

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田中陽樹:

ケンドリック・ラマーって世界的には超有名なラッパーですけど、日本だと一般的には全く知られていない状態。なのでまずケンドリック・ラマーの名前を知ってもらうことが大切だと思い、このプロモーションを仕掛けました。

例えばこれがジャスティン・ビーバーだったら、みんな曲は聴けばなんとなく知ってるので、また違うプロモーションになっていたと思うんです。ケンドリック・ラマーは名前が知られていないし、日本人が親しみを持てるようなキャッチーな曲もないし、HIPHOPだから口ずさむのも難しい。

そういう意味でケンドリック・ラマーは議論を巻き起こすような、でも炎上狙いではない企画を目指したので、すごく難しかったですね。

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中村雄太:

広告を張り出した場所も内容も政治的に、かなりギリギリでしたよね。
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田中陽樹:

そうですね。でもそこに関しては僕らというより、ユニバーサル・ミュージックのメンバーがスゴいの一言に尽きますね。この広告を作ることによって一定数の批判が起こることは、事前に説明していました。それでもあの広告を世の中に出すことを決めたことがスゴい。あの広告が世の中に出たことそのものに大きな意味があったと思うんです。
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中村雄太:

企画が斬新で本当に驚きました。
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若井映亮:

実際に批判があったんですか?
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田中陽樹:

もちろんありましたね。ケンドリック・ラマーはそもそも政治的なメッセージを発信してないですからね。
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若井映亮:

そうなんですね。ではどういった意図だったんでしょうか。
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田中陽樹:

この広告はあくまでも比喩表現なんです。彼は身の回りに起こっていることをリリックにして、表現しているアーティストなんですが、聞こえの良いことだけを音楽にしているアーティストではないということを言いたかったんです。ちょうど日本では黒塗り文章が注目されている時期で、その黒と、黒人ラッパー初のピュリツァー賞受賞アーティストのケンドリック・ラマーの黒をかけた広告なんです。

ケンドリック・ラマーはブラック・パワーですごくポジティブなのに、日本の黒塗り文章は不都合なことを隠そうとしている。同じ黒でも全く使われ方が違うしギャップがある。このギャップをうまく活かせないかを考えたんです。このメッセージをどうやって効果的に届けようって考えた時に、国会議事堂前と霞ヶ関の駅にだけに置いた方がこの広告は生きるのかなと考えました。もちろん話題になったんですけど、やっぱり批判も多くて。だから途中で剥がすことも事前に検討していましたし、何かあった時に臨機応変に対応できるように覚悟はしていました。リスクを説明して、お互いに納得して進められたからこそ実現した広告でしたね。

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若井映亮:

カッコイイな。音楽のプロモーションって予算が少ないことが多いじゃないですか。そもそもリスナーも限られている。そんな中でマスに広めるってことを考えながらってすごく難しいですよね。
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田中陽樹:

そうですね。だからクライアントにとって、GOがベストチームでは無いと思う場合には、その仕事は受けないようにしてます。例えばクラシック音楽の広告作ってくれって言われたら、クラシックのことあまりわからないので、予算が1億あってもできないんです。低予算でもそのアーティストが好きで、理解があれば何かしらのヒントが見つかると思っています。アーティストの魅力と社会が反応するスイッチを見つけることが我々のような企画者のミッションなので。
次ページ:他業種と合わさることで広がる音楽プロモーションの可能性

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Yuya Eto

DIGLE MAGAZINE編集長。フェスとフクロウが好き。

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田中陽樹

2006年電通入社。2018年よりGOにジョイン。NTTdocomo25周年キャンペーンをはじめとした、大手クライアントのアカウントを担当。一心堂本舗「歌舞伎フェイスパック」の商品開発及びシリーズ展開をプロデュースし、海外広告賞を受賞。音楽関連では、WIREDMUSICFESTIVAL、ケンドリック・ラマー黒塗り広告、バカルディ「Over The Border」招待状型広告などを手がけるビジネスプロデューサー。
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