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文: 黒田隆太朗 写:後藤倫人
アニバーサリーイヤーを過ごすEmeraldに、メンバー全員を招いてのクロニクルインタビューを行った。結成前夜の話を皮切りに、これまでリリースしてきた作品をピックアップしながら、彼らの10年を辿っていくテキストである。
実に様々なバンドや関係者の名前が出てくるのが印象的だ。メンバー同士の繋がりはもちろん、きっと多くの出会いが彼らの音楽を刺激し、育んできたのだろう。その中で沢山のファンが彼らの音楽に触れ、喜びに変えてきたはずである。
コロナ禍以降苦しい時間も経験したというEmeraldが、10周年を祝う一発目のシングルに、「ふれたい光」のリメイクを持ってきたのは非常に象徴的である。<少しずつ遠くへ 歩けるようにもなるさ そっと祈る 君に幸あれ 僕らまた 恐れ知らず歩きだしていくよ>というリリックは、改めてその輝きを増しているように思う。メンバー全員の音楽性を溶け合わせ、上質なポップソングを生み出していくEmeraldの歴史を振り返ってみた。
ー後から加入する健司さんを除く5人は、どういう経緯で集まったんですか?
藤井智之(Bass):
僕は陽介さんがやっていたPaperBagLunchboxのファンで、このバンドを組む前から割と仲良くしていたんですけど。彼のソロライブに遊びに行った時に、「『オレンジ』を弾き語りで歌うから智之ベース弾いてよ」ってライブ直前に突然言われて(笑)。僕は大学のサークルで演奏してただけで、人前でベースを弾くのも3年ぶりとかだったんですけど。ーそれは緊張しますね。
藤井智之(Bass):
その演奏が終わった直後くらいに、磯野とタツさんから電話がかかってきて。そっちも2年ぶりぐらいの連絡だったんですけど、「今からうちきなよ」って終電もないような時間に言われて、タクシーで行ったんです。で、夜通しいろんな音源を聴かされたんですよね。ーたとえば?
藤井智之(Bass):
GallianoとかD’Angeloとか。あとはErykah BaduやRobert Glasperもあったかな。磯野好孝(Guitar):
Emeraldの音楽性にも、通ずる部分だよね。藤井智之(Bass):
これなんの時間なんだろう?って思いながら、夜中の1時くらいから明け方5時くらいまで音楽の話しをしたり、大学の頃の話をして。そろそろ始発が動くし帰るかなって雰囲気が出てきたところで、磯野から「藤井バンドやらない?」って言われて。ー音楽を聴かせて反応を見てたんですね。
中野陽介(Vocal):
オーディションだったわけだ(笑)。藤井智之(Bass):
それでこのメンツだったらドラムは高木しかいないでしょってことで、大学の後輩である彼に連絡をしました。早朝にも関わらず恐ろしい数の電話を入れて(笑)、寝起きの彼に「バンドをやることになったからよろしく」って言って切ったんですけど。そしたら10分後くらいに、“長い付き合いになりそうですね”っていうメールが返ってきました。磯野好孝(Guitar):
前振りが効いてるよなあ。ーまさに長い付き合いになっていますもんね。高木さんもバンドを組みたい気持ちがあったんですか?
高木 陽(Drums):
学生の頃に同じサークルの藤井さんとフィッシュマンズやゆらゆら帝国のコピーをやっていて、磯野さんやタツさんとも違う音楽サークルではありましたけど、一緒にいろんなことをやっていたんですよね。これも何かの縁だし、面白そうだと思いました。ー結成の前に音楽を聴かせたということは、磯野さんと中村さんの中では、やりたい音楽があったということですね?
磯野好孝(Guitar):
僕と中村は大学4年の頃から、1、2年ぐらい別のオリジナルバンドをやっていたんです。その時はアシッドジャズやハウスなどのクラブミュージックをバンドアンサンブルでやるようなものをやりたくて。それを当時僕らの仲間内で一番上手い人を集めてやろうって言って始めたんですけど、何一つ上手くいかなかったんですよ。そこで思ったことが、下手でもいいから好きな音楽の合う人が良いっていうことでした。藤井智之(Bass):
下手でもいい、という部分が俺だね(笑)。磯野好孝(Guitar):
最初に中村とやってたバンドの失敗が、いまだに活きているのかなって思います。前のバンドの解散の仕方は、「お前のプレーが気に食わねえ」みたいなぶつかり合いにもなったりして、楽器プレイヤーとしての自信も失われた状態だったから。ちゃんと話し合って物事を決められるかどうかとか、もっと人間性にフォーカスしたほうがチームとしての幸福度は高いのかもしれないと思ったんです。編集部のおすすめ Recommend
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