清竜人は何故歌謡曲を歌ったのか?縮小していくシーンに一石を投じる、クリティカルな新作『REIWA』

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文: 黒田 隆太朗 

新たな元号を冠した、6年ぶりのオリジナル・アルバム『REIWA』をリリース。歌謡曲を歌った新作に秘めた、批評的な視線とシーンへの危機感とは。清竜人本人によるプレイリスト、「昭和から平成への女性シンガー」も併せてお楽しみください。

日本人の心をくすぐるメロディ、変わりゆく価値観の中で生きる男と女を描いたリリック、子供たちの声、哀愁のある世界観…『REIWA』は実にノスタルジックな肌触りのアルバムである。が、それは表の顔であり、このアルバムの裏には強烈な批評が存在している。清竜人による久々のソロ・アルバムは、名だたるアレンジャー陣と共に作り上げたこの時代の歌謡曲であり、次第に縮こまっていったJ-POPシーンに一石を投じる作品である。出発は昨年リリースした『平成の男』、制作の動機は「昭和・平成・令和と3つの時代を繋ぐ音楽を作る」こと。さて、元号が変わって早くも3週間が経った。キミはこのアルバムどう聴く?

3つの時代を繋ぐ『REIWA』。その裏にある批評とは

ー『平成の男』から始まった、「現代の歌謡曲を歌う」というこの一年の集大成となる作品が完成しました。まず、出来上がったアルバムに対するご自身の手応えを聞かせていただけますか。

想定通りのアルバムになったと思います。まず「平成」というひとつの時代が終わる中で、昭和・平成・令和という3つの時代を繋ぎ、普遍的に日本人の心に寄り添えるようなJ-POP・歌謡曲を作りたいと思ったのがきっかけだったんですけど。昭和から平成にかけて第一線で活躍してきた方達をアレンジャーに招き、平成元年に生まれた僕とコラボレーションをしてもらうことで次の時代に橋渡しをするような作品できたんじゃないかと思っています。

ーかつてMUSIC MAGAZINEにて、湯浅学氏が「歌謡曲というのは思わず口ずさみたくなるメロディがあるものを言う」というような旨のことを書かれていて、恐らくそういうものを清さんが目指したものがこの『REIWA』というアルバムなのだろうと僕は解釈していました。そして清さんの裸の歌、メロディ、歌唱に重点が置かれたソロアルバムがこの『REIWA』なのだとしたら、それは1枚目のアルバム(『PHILOSOPHY』)に通ずる作品なのではないか、ということを考えました。

なるほど。

ーご自身では本作を清竜人のディスコグラフィの中でどういうふうに位置づけているのか、そして清さんにとってどういうものが歌謡曲だと言えるのか、そのふたつを伺えますか。

このアルバムの立ち位置から言うと、もし「キャリアの中で自分が1枚しかアルバムを出せない」という状況があったら、きっとこの作品は出さないかなと思います。このアルバムはキャリアを10年重ねてきた僕が、このタイミングで出すことに意味のあるものだった。そして1stアルバムとの比較ですが、自分としてはそこまで近いものではなく、『REIWA』の方が大衆的な音楽になっているかなと思っています。

ーそれはどういう理由で言えますか?

1枚目のアルバムが大衆的ではなかったという意味ではないのですが、作品に対するアティテュードも違ったし、目標とするところも違ったかなと思います。今回のアルバムは今後10年、20年と経って未来の自分が振り返った時、もしくは未来の音楽シーンから振り返って見た時に意味のあるものにしたかった。

ーなるほど。

そしてふたつめの「僕にとっての歌謡曲がどういうものか」ということですが、日本にしかないものであり、つまりナショナリズムと凄く関係してるものだと思っています。なので外国人が聴いた時に非常にエキゾチシズムを感じるものだと思います。そうした情緒の部分を音階で示せるかと言われると別の話になりますし、もちろん『REIWA』の中にも欧米のカルチャーから影響を受けたオケで成り立っている曲もいっぱいあります。ただ、やっぱりメロディラインが日本人に響くものになっていて、歌詞の面でも日本人特有の価値観に訴えるようなものが、歌謡曲において重要な要素なのかなと思います。

ーつまり『REIWA』というアルバムは、作家個人ではなく、シーンにおいて重要な1枚にしたいという志の元に作っていたというのがひとつ。

うん。そうですね。

ーそしてそれと同時に、この作品は「日本人」に向けて投げかけようという意識が明確にあったものになっていると。そうした動機の元にアルバムを作ったことには、平成が終わるということ以外に何か特別なモチヴェーションがあったんでしょうか。

そうですね。今の音楽シーンや業界というものを広い目で捉えた時、日本のミュージシャンが忘れかけているものがあるんじゃないのかと思って、そういうメッセージを込めて作ってはいます。ちょうど時代の変わり目を迎えたことで、僕自身もそういう視点に立てたから。そういう視座を持ってモノづくりをする必要があるんじゃないの?っていう、僕の意思表示がこの作風の中には入っています。

ー日本のミュージシャンが忘れかけているものがあるんじゃないかというのは、具体的にどういうところで感じますか。

個人的な価値観で申し上げると、歌謡曲にも通ずる音楽的な下地についてですね。これまでの日本は、欧米のトレンドにアンテナを立てたクリエイター達が、それを取り入れる形で日本の歌謡曲やポップスを作っていたという事実がありますし、実は今もそのメソッド自体はあんまり変わっていない。

ーはい。

ただ、そうしたメソッドに変化はなくとも、やっぱり今の日本の音楽の多くはJ-POPになりきれていない。トレンドに敏感なのはとてもいいことだけど、洋楽にただ日本語を乗せただけに聴こえちゃうものが少し多いイメージが僕にはありました。それで今の日本のポップスが大衆的になりきれていなかったり、少しずつシーンが狭まっていっているんじゃないかと。そういう感覚が今回の制作の中にはありました。

ー今回の作品は、シーンに対する批評であったと。

批評するために作ったアルバムではありませんが、それに近いところはあったかなと思います。逆に言うと、僕はグローバルなものとしての日本のポップス、世界の中でボーダレスに評価されるようなポップスを作ろうという発想はわかります。ただ、真似をするだけでは絶対日本人の音楽を外国人は聴かないし、世界に向けて日本人が何かを発信したいのなら、今の時期は洋楽を真似て歌を作るのことは時期尚早で、日本人が世界で何かやるということを面白がってもらえるようなことをしなければならないと思う。

ーわかります。

ちょっとそこのアンテナの感度が鈍い人が多いようなイメージが僕にはあって、今のトレンドだけを追ってモノづくりをしても日本人は世界で評価されないし、それは日本国内でも評価されないという負のスパイラルがある。なのでそこを上手いとこチューニングして、この時代だからこそ成り立つバランスで今のJ-POPを作るべきだと僕は考えました。

ーある意味J-POPを定義し直す、もしくはリスナーの視点をゼロに戻す作品が『REIWA』だと。

凄く綺麗に言っていただけると、そういうことになります(笑)。そういう方向に一人でも多くの人がデトックスされれば嬉しいですし、20歳前後の若いミュージシャンが続々と出てくる中で、僕らくらいの世代がある程度道筋を示してあげたいですね。ある種勝手な使命感ですが、やらなきゃいけない行動や、言わなきゃいけない発言をしていくことも、今の僕には必要なことだと思って活動しています。

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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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大阪府出身、1989年5月27日生まれ。
2009年3月、シングル「Morning Sun」で東芝EMIよりメジャーデビュー、その後6枚のシングルと6枚のアルバムをリリースする。
2014年、レーベルをトイズファクトリーに移籍、一夫多妻制アイドルグループ『清 竜人25』としての活動を開始。プロデューサー兼メンバーである清 竜人とその妻達で構成されるアイドルの固定概念を覆す全く新しいエンターテインメントを披露。アルバム2枚、シングル6枚をリリースするも2017年6月17日、幕張メッセイベントホールにて行われた解散ライブをもって、約3年間の活動に幕を閉じた。
2016年12月、清 竜人25の活動と並行して『清 竜人TOWN』の活動も開始。清 竜人とリスナーとの関係性が、単なる演者と観客ではなく、同じ目線でライブを楽しむというコンセプトのもと会場では、ただ観るのも良し、歌うのも良し、楽器を演奏するのも自由というライブで沢山のファンとの共演を果たす。
2017年12月、約4年ぶりの弾き語りコンサートを開催、追加公演を含めた全公演即日完売となり新たなソロ活動のきっかけとなる。
2018年レーベルをキングレコードに移籍、ソロとしてのアルバム制作を約5年ぶりに開始する。
また最近では自身の作品のみならず田村ゆかり、でんぱ組.inc、堀江由衣、ももいろクローバーZへの楽曲提供などプロデューサーとしてもその活躍の幅を広げている。
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