レッテルはいらない。ペンギンラッシュが目指す新たな「大衆性」

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文: 黒田 隆太朗  写:木村篤史 

ペンギンラッシュがセカンドアルバム『七情舞』を発表。メンバー4人が「制作中によく聴いていた楽曲」をテーマに作成したプレイリストも公開。新作に込めた意志に迫る。

「何にも縛られたくない」。一言で言えばペンギンラッシュのアティテュードはそれに尽きるだろう。記号的なジャンル、既存の価値観、紋切り型の表現、そうした外部から貼り付けられるレッテルに辟易しているのである。それは何故か? ひとえに新しいものが見たいからである。未だ見ぬ音を自分達の手で作り上げようという気概、音楽家としての矜持がペンギンラッシュの創作意欲を駆り立てるのだ。新作『七情舞』には、そうした4人の意志がふんだんに織り込まれている。「ポップ」であることよりも「やりたいことをやり尽くす」ことに専念した奔放作を紐解いた。

「ポップ」よりも「自由」を

ー「制作中よく聴いていた楽曲」というテーマで、20曲のプレイリストを作っていただきました。そこに絡める形でバンドや新作についてのお話しを伺えたらと思っておりますが、まずは『七情舞』に対する手応えを聞かせてください。

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望世(Vo/Gt):

前作(『No size』)は高校の頃に作った曲も入れたりしていたので、青さがあるし、良くも悪くもとっちらかった作品になったと思っているんですけど。それに比べて、今回は私達がやりたいことを明確に示せたアルバムになったんじゃないかと感じています。
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真結(Key):

ジャンルにこだわらず、やりたいことをやりたいようにやった感じが前作よりも出ているなって思います。
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浩太郎(Ba) :

なので曲の面でも、演奏や音の使い方、楽曲の雰囲気面で見ても攻めたアルバムになったかなと思います。僕自身、前回は若干丸くなってた思いがあったので、今作は最初からできることはやっちゃおうっていう意識がありました。
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Nariken(Dr):

ただ、その分作り始めた時には、まとまらないんじゃないかっていう気持ちもうっすらあったんですよね。多ジャンルすぎるというか、この曲達が全部一緒に入るアルバムっていうのが想像できなくて。でも、出来上がってみたら音も凄くいいし、1枚として自信がもてる作品ができたと思います。

ーつまり、このバンドの多面的な魅力がより表に出てきたアルバムであると。

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望世(Vo/Gt):

そうですね。

ーそうしたバラバラの楽曲をまとめ上げたアルバムを紐解くためにも、4人が挙げてくれた楽曲に目を向けたいと思います。この中の楽曲から、どういう面で影響を受けていますか?

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Nariken(Dr):

僕がサウンドの面で参考にしたのが、上原ひろみさんの「XYZ」とD’Angeloの「Send It On」ですね。「アンリベール」とか「能動的ニヒリズム」は臨場感があって攻撃的な音にしたいっていう思いが最初にあったので、上原ひろみさんの「XYZ」をイメージしながら音を組み立てていきました。逆に「契約」や「青い鳥」のようなしっとりした楽曲では、ドラムとしてはデッドな音を目標にしていたので、D’Angeloの音楽を頭の中に入れて音づくりをしていきました。

ーペンギンラッシュの音楽にはジャズの要素が強いですが、Narikenさんは元々ジャズドラマーの方なんですか?

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Nariken(Dr):

いえ、全然。
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望世(Vo/Gt):

スピッツとか歌もののギターロックが好きだよね?
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Nariken(Dr):

うん。いわゆるロキノン系とか、ACIDMANが好きでしたね。

ーじゃあ以前叩いていたドラムと今とでは、かなり音が変わってますか?

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Nariken(Dr):

変わってますね。求められることが全然違うので、入った日から今日までついていくのに必死というか。良く言えば今までやってこなかったことができていて新鮮なんですけど、昔より慎重になった気はしています。今までは自分の気持ちで乗りきれるようなドラムをやっていても成り立っていたんですが、そういうわけにはいかなくなりましたね。

ー僕は「Send It On」も「XYG」も、余白があって、空気を聴かせるのがうまいドラマーだと思っていて、そこはペンギンラッシュの作風にも通じるところかなと思いました。

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Nariken(Dr):

なるほど。確かに僕も余白があったり、音がないところが好きだったりするので、そういった部分は確かに僕らの曲にも表れているのかもしれないです。ギチギチに詰め込んだサウンドは元々あんまり聴いてこなかったし、このバンドを始めてより静かな音色にシフトして行った気はしています。

ーそして浩太郎さんがよく聴いていた楽曲ですけど。端的に言って、ペンギンラッシュのポップな部分は浩太郎さんが担っているのかなあと思いました。

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浩太郎(Ba) :

このプレイリストだけ見ると、確かにそうですね(笑)。

ー浩太郎さんは自分が挙げた5曲に対してどういうイメージ持っていますか?

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浩太郎(Ba) :

「制作期間中に意識したもの」で考えたんですけど、僕の場合は作っている時に意識していたものがなくて。自分のルーツになっているものを選ばせていただきました。

ーなるほど。

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浩太郎(Ba) :

音楽を聴き始めるきっかけになったのがスキマスイッチだったんですけど、今作はフレーズも詰め気味にしようと意識していたものが多いので、スキマスイッチの曲の中で同じようなフレージングをしている曲として「パラボラヴァ」を入れました。ベランダも個人的にめちゃくちゃ好きで、「エニウェア」は凄くベースがうねうねしている曲だから、攻めの意識で作ったこのアルバムに通ずるような楽曲として選んだ感じです。

ーT-SQUAREがありますが、彼らの楽曲の中でもかなり技術がいる曲が入っていますね。

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浩太郎(Ba) :

そうですね。フュージョン的なアプローチをしている曲が1曲あるので、その手の曲もプレイリストに入れたいなと思ってこの曲にしました。

ー「アンリベール」ですよね。やっぱりフュージョンはお好きなんですか?

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浩太郎(Ba) :

好きですね。僕はインストが好きで、「BADMOON」は彼らの曲の中でも大分ゴチャゴチャした曲ですが、そういうのを聴きたくなる時があるんですよね。彼らの楽曲は心に染み渡るような音楽もあれば楽しげな曲もあるし、本当にわけのわからないようなものもあって、長いキャリアの中で色々なことをしてらっしゃってるバンドだから。それがいいなと思っています。

ーそれはまさに今作でペンギンラッシュがやったことですね。作曲クレジットは「ペンギンラッシュ」になっていますけど、曲はみんなで作られるんですか?

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望世(Vo/Gt):

私か真結、浩太郎のうちの誰かが大元になるデモを持ってきて、スタジオで作っていくことが多いですね。

ー今作で浩太郎さんのアイディアでできた曲は?

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浩太郎(Ba) :

2曲目の「アンリベール」と3曲目の「契約」、6曲目の「晴れ間」は僕が原案を出しました。

ーどちらかと言えば、ちょっとアンニュイなものが多いですね。

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望世(Vo/Gt):

今作はそうかもね?
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浩太郎(Ba) :

うん、確かに。

ー演奏面では相当攻めていると思いますが、曲作りにおいて意識していたことはありますか?

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浩太郎(Ba) :

前作に比べると作曲面でも意識していた部分はあって、今回は割とシュッとした音作りを目指していました。で、前作で僕が作った楽曲は「ポップス」の「ポップ」くらいまで出していた曲がかなりあったんですけど、今回は「ポップス」の「ポ」くらいまでしか出さず、ちょっと違う色に染めてやろうっていう意識がありました。

ーどちらかと言えば、アバンギャルドな要素のある曲を作りたかった?

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浩太郎(Ba) :

そういう気持ちもあったかもしれないです。これまでの自分がやってこなかったことをやりたいっていう気持ちは凄くありましたし、変なことやってやろうとか、面白いことをこのバンドに合う形で詰め込んでいったらどういう曲ができるだろうって思って作っていました。

ー『No size』を軸にして考えると、あのアルバムを出した段階ではもうちょっとポップな方向に行くこともできるし、実験精神を持って音楽を追及するような方向の両方が道としてあったと思うんです。でも、今日のお話を聞く限りでは後者を選んだのかなと思います。

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望世(Vo/Gt):

実際、それはそうですね。
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真結(Key):

うん。単純にやりたいのがこっちだったって感じはするね。
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望世(Vo/Gt):

というか、ポップにしようと思ったことがないんですよね。だからなるがままになった作品がこれっていうイメージで、感覚的に作っていったらポップなものにはならなかったっていうことだと思います。
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WRITER

黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

PHOTOGRAPHER

木村篤史

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浩太郎(Ba) / 望世(Vo/Gt) / 真結(Key) / Nariken(Dr)

名古屋出身。高校の同級生であった望世、真結を中心にFUNKやJAZZを作法としたJ-POPの開拓を目指そうと結成。
2017年に2人をサポートしていた浩太郎とNarikenが正式加入し現4人体勢に。
現在の POPs シーンに存在しない “違和感”、昨今のバンドサウンドとは一線を画すジャンルレスなアンサンブルに注目。
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