音楽の中へと入っていったMaison book girl。新作『海と宇宙の子供たち』を語る

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文: 黒田 隆太朗  写:木村篤史 

昨年『海と宇宙の子供たち』をリリースしたMaison book girlにインタビュー。サクライケンタ・ソロインタビューとの2本立てでブクガの変化を紐解く

風通しのよさを感じる。『海と宇宙の子供たち』は、間違いなく新たなフェーズに突入したアルバムだろう。21曲もの楽曲を収めた濃密な音楽絵巻『yume』との対比は顕著であり、本作のポップでコンパクトな作風からはこれまで以上のポピュラリティを感じるはずだ。

今回のインタビューは、Maison book girlのメンバー4人とサクライケンタにそれぞれ行っている。新作についてコショージメグミは「今回のアルバムでは、私達自身は作品の中にいる」と語り、サクライケンタは「メタ世界から抜け出してきた」と言っている。それぞれの視点から、現在のMaison book girlについて語ってもらった。

自分で切り拓くしかない

ー『海と宇宙の子供たち』が出来上がってみて、どんな手応えを持っていますか。

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矢川 葵:

どの曲がシングルになってもおかしくないくらい良い曲揃いなので、私達のことを知ってもらうきっかけになるアルバムになったかなと思います。
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和田 輪:

これまでは割と難解なことをやっていたんですけど、今回のアルバムは比較的にとっつきやすい曲が多い印象あがりますね。気軽に聴ける、聴きやすいアルバムだと思います。

ーまさに作風としてポップですし、21曲収録の前作『yume』とは対照的です。作品のタイトルからも舞台の変化やスケールの大きさを感じましたが、これはどういう意味でつけられたものですか。

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コショージメグミ:

2019年にリリースした2枚のシングルから来ています。『SOUP』が海、『umbla』が宇宙を表すシングルだったので、その子供達を集めたアルバムというイメージで。2019年の集大成という感じですね。
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和田 輪:

昔の曲は部屋の中でひとりでいるようなシチュエーションが多かったんですけど、最近は作品を経るごとに外の風景描写が増えてきているので、確かにスケールの大きい話になってきている感じはありますね。

ーそれはブクガの歩みにもリンクするものですか?

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コショージメグミ:

そうですね。Maison book girlという存在がある程度確立されてきたと思っているんですけど、もっと広げたいという気持ちはあって。今回アルバムではそういう意識を音楽として表現できたんじゃなと思っています。

ーもっと広げたいという点では、最終的に世間の中でMaison book girlをどういう存在にしようと思っていますか。

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コショージメグミ:

難しいな…そもそも今のブクガはどんな存在なんですかね?

ー自分ではあまりグループがどういう存在かは考えない?

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コショージメグミ:

そうですね。どういう作品にしたいかは考えるけど、どう見られているかはあまり考えないです。でも…それはもしかしたら「世間」というところまで行けてないからかもしれないですね。私が「世間」を意識できてないのかもしれないです。

ーでは、どういうステージに立ちたいなど、何か理想の舞台はありますか?

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和田 輪:

…私はないです。
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矢川 葵:

「みんなで武道館を目指そう!」みたいなことはないですね。
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和田 輪:

目的は大勢の人に見てもらうことや、その曲に合った舞台演出ができる規模にまで行くことなので、ネームバリューのある場所に立ちたいという目標はないです。

ーただ、誰もが知っている存在にはなりたい?

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和田 輪:

…「それも違う」、と言うとブクガに悪いんですけど。

ー(笑)。

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和田 輪:

私は正直ないです…(笑)。やりたいことがやりたいだけです。
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井上 唯:

どこに立ちたいかではなく、自分達のやりたいことをたるためにはデカくなるしかないという発想ですね。

ーその「やりたいこと」というのは?

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和田 輪:

たとえば前回のワンマンでは、水に濡れた状態でステージに出るようなことをやったんですけど、それを普通のライヴハウスでやってしまうと、モニタースピーカーが壊れちゃうからダメって言われるんです。

ーつまり、自分達の理想のステージングや楽曲の見せ方をするためには、ある程度の規模が必要だと。

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和田 輪:

そうです。よりよい舞台演出や、表現方法を実現するには、大きい会場や設備が必要なこともあって。逆に言うと、ブクガに合っている空間であればどこでもいいです。

ー別の見方をすると、Maison book girlが斬新な表現を行ってきたことの裏返しでもあると思います。事実ステージの見せ方は既存のあり方とは違うものを追及していると思いますし、自分達だけの道を開拓しいていっているように思います。そういう自負はありますか?

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井上 唯:

そうですね。最初の頃は4人の女の子達が歌って踊ってるということもあって、アイドルイベントに呼ばれることが多くて。そうした時に、どうすればこの曲調でも上手く伝えることができるのか凄く悩んだんです。でも、お手本となる人がいなかったから本当に手探りでやってきて、こうなったらMaison book girlという新たな道を自分達で切り拓いていくしかないと思っています。
次ページ:歌の表現力を突き詰めた

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