岡田拓郎が新作『Morning Sun』のインスピレーション・プレイリストを公開。その濃密な音楽背景を語る

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文: 黒田 隆太朗  写:木村和平 

岡田拓郎の新作『Morning Sun』。影響を受けたプレイリストを通して、彼の音楽観に迫る。

岡田拓郎の音楽を聴いて素晴らしいと思うのは、彼の作品からは音楽の過去と未来が聴こえてくるからである。本棚から研究テーマの書物を引き出すが如く、彼はその膨大な知識の中から「今」必要な音楽を参集し、それを発展させるためのアイデアを試みる。そして、それは必ずや批評的な音楽(≒真にオルタナティブになり得る音楽)として立ち現れるのだ。リリースから1ヵ月、既に多くのリスナーから賛辞が送られている『Morning Sun』は、はっぴいえんどが示した「日本語の可能性」に今再びアプローチすること…いわば失われた未来を取り戻す作品である。

今回のインタビューでは、『Morning Sun』に影響を与えた楽曲プレイリストを公開してもらった。Frank Oceanを生音に置き換えるためのアイデア、Andy Shaufからのインスピレーション、レオナルド・マルケスへのシンパシー、そしてブラッド・メルドーらジャズ・ミュージシャンから受け継いだもの…全28曲のうちほんの一部であるが、プレイリスト「Morning Sun INSP」について語ってもらった。もちろん、本テキストから零れてしまった楽曲との関連性は、キミ自身の耳で確かめてほしい。

ちなみに、最後に本作における岡田自身の自己採点もあるので、お楽しみあれ。

Frank Oceanを生音に置き換える

ー『Morning Sun』にインスピレーションを与えた楽曲プレイリストを紐解きながら、新作のディテールに迫れればと思います。内容は60年代末から70年代のフォークと、ここ10年ほどでリリースされたフォーク作品がメインになっていますね。

今回は素直に好きだった音楽に忠実にやろうと思ったので、10代の頃から自分が聴いてきた音楽が中心ですね。リアルタイムに聴いていた10年代のシンガーソングライターと、彼らが影響を受けていた60~70年代のシンガーソングライター、あとはJohn Lennon(ジョン・レノン)文脈のフォーキーだけどポップな人達という感じですね。

ー1曲目のFrank Ocean(フランク・オーシャン)は、この中では明らかに音楽性が違いますね。

実は、今回一番最初にサウンド的な手本に使用としたのがフランク・オーシャンでした。もっとR&Bっぽいアルバムを作ろうとしてたんですよね。でも、自分の声で、しかも日本語でやろうとした時にあんまりいい方法が見つからなくて。それに流行りの音楽がこんなサイクルで転がり続ける時代に対して、自分が乗っかってもしょうがないと思った。

ーそれで素直に好きな音楽を作ろうとしたと。

はい。

ーちなみにFrank Oceanに惹かれた理由は?

リアルタイムに聴いた音楽で、久々に感動しました…というか、みんな感動しましたよね?

ーはい(笑)。

僕みたいなある種スノッブなレコードマニアみたいな人達にも響いたと思ったし…僕は元々ジョン・レノンが好きなんですよね。小学生の時に初めて聴いたんですけど、The Beatlesよりも僕はジョン・レノンが好きだった。まあ、そういうことですね。

ーそういうこと?

何となく、フランク・オーシャンに近いフィールを感じたというところですかね。『Channel Orange』はそんなに聴かないし、Calvin Harris(カルヴィン・ハリス)と一緒にやったやつ(「Slide feat.  Frank Ocean&Migos」)は全然面白くないと思ったんだけど、『Blonde』とその1日か2日前に出た作品(ヴィジュアルアルバム『Endless』)がズバ抜けて良かった。『Blonde』に関して、僕は彼自身の実直さに惹かれたんですね。その内面的な吐露が演じられた部分だとしても、それは深く今の時代に刺さるものだと思ったし、自分も魅了された。それに加えて、音楽的にも凄い興味深い作品だと思いました。それこそトラックメイクには簡素な部分がありつつ、シンセパッドや和声の滲ませ方が独特で、シンプルなコードなのに凄い複雑な和声に聴こえてくる。楽曲上で上手くレイヤーされていることが興味深くて、音でも楽しめたアルバムだったんですよね。

ー今言われた『Blonde』の特徴は、『Morning Sun』の作風にドンピシャに当てはまりますね。

そう、置き換えたんですよ。

ー生楽器に?

はい、そのイメージがありました。だから簡素なドラム・パターンは「Nikes」をイメージしてフレーズを考えたりもしました。そこでハイハットのような金物の音は部屋の反響が伝わりやすいので、生音と打ち込みの差が一番出ると思っていて。そこのラグをいかに減らすかを考えて、生楽器をサンプラーみたいな音にできないかとトライしました。なのでシンバルもいわゆる普通のクラッシュ・シンバルじゃなく、3枚すべてピッチの低いライドを使いました。TR-808のクラッシュ・シンバルのようなイメージです。それをミュートしてデッドな状態にしたやつをシンバルとして使い、ハイハットも響かないようにべたべたにミュートして、中にティッシュを詰め込みまくって録りました。

ーティッシュ!?

そう、響かないようにするには詰め物でしょ、とか言ってティッシュを詰めました(笑)。なので今作のドラムの音は、エンジニアやドラムの増村と一緒に「いかに響きを無くすか」っていうアイデアをその場で出し合って作った音ですね。

次ページ:Andy Shaufは小さくドラムを叩いているよ

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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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木村和平

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 岡田拓郎。1991年生まれ。東京都福生市育ち。ソングライター/ギタリスト/プロデューサー。2012年にバンド「森は生きている」を結成。〈P-VINE RECORDS〉より『森は生きている』、『グッド・ナイト』をリリース。2015年に解散。2017年10月、ソロ名義Okada Takuroとしてデビュー・アルバム『ノスタルジア』をHostess Entertainmentからリリース。2018年には、1983年リリースされたSteve Hiett『渚にて』に収録されている「By The Pool」のカヴァー曲を含む4曲入り『The Beach EP』をリリース。

 またギタリストとしては、Roth Bart Baron、優河、柴田聡子、前野健太、安藤裕子、James Blackshawなど様々なミュージシャンのライブ/レコーディングに参加。プロデューサー/ミキシング・エンジニアとしては、South Penguin『y』(2019)、優河「June」(2019)などを手がけている。菊地健雄監督作品、映画『ディアーディアー』(2015年)をはじめ、映画音楽も制作。2016年には畠山地平が主宰するレーベル〈White Paddy Mountain〉から、okada takuro+duenn名義で『無常』をリリース。


Okada Takuro (1991) is a Japanese guitar player and composer based in the Tokyo.He has a very active recording career, releasing numerous Contemporary Folk, Art Rock, Electronia, Drone, Jazz, Blues and Experimental recordings under his own name.

As his own works, he joined in the recordings & performances of Daniel Kwon & James Blackshaw... etc.He represented composing the music of the movie "Dear Deer" which was filmed by the director, Kikuchi Takeo.
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