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文: 秦 麗奈
Bibioの2006年にリリースした2ndアルバム『Hand Cranked』が、3月19日 (金) にデラックス・エディションで再発されることが決定した。
今回再発されるデラックス・エディションには、初めてのCD化となる「Madame Grotesque」「Cantaloup Carousel (1999)」「Firework Owl」「Odd Lips」「The Last Bicycle」の5曲が追加収録。Bibio本人によるセルフライナーノーツ付の紙ジャケット仕様となる。
現在では2010年代の〈Warp〉を代表するアーティストの一人と言っても過言ではないBibioだが、デビュー・アルバム『Fi』から3rdアルバム『Vignetting The Compost』までは、USのインディー・レーベル〈Mush〉から作品をリリース。
その中でも、2ndアルバム『Hand Cranked』は2006年にリリースされ、当時からBibioを絶賛していたBoards of CanadaやCLARKも所属した〈Warp〉との契約へとつながった作品である。
当時持っていたのは、本当に最低限のレコーディング機材だった。手頃なマイクが数本、カセットレコーダー、音声レコーダー、MDレコーダー、手頃なサンプラー、手頃なギター数本、そしてiMacが1台。
デビューアルバム『Fi』に収録された楽曲のいくつかで用いたサンプリングやアレンジの粗削りな手法は、1998年に初めて採用したものだ。それらのトラックを制作した後に思い出したのは、ぜんまい仕掛けの玩具や、メリーゴーラウンドもしくは回転木馬の模型のこと、それから幼い頃に観ていた70年代の子供向けテレビ番組のことで、番組ではそうした玩具や模型が生き生きと動いていた。ループ音源を単純に重ねたサウンドは、いびつで不完全な周期に従っていて、そこには機械的な性質が活かされているだけでなく、有機的で人間味のある質感(その要因の一端は、自分で弾いたギターのサンプリングを手動で起動していたことと、クオンタイズすなわち機械によるタイミングの補正を行わなかったことにある)も表現されていた。そしてクランクを手で回す(hand cranked)装置というアイデアから生まれたささやかな発想が、このアルバムのテーマになった。そうした装置が生み出す素朴なローファイサウンドを再現し、簡素で不完全であることの魅力を引き出したいと思っていたんだ。
キラキラ輝くモザイク模様の音像の彼方に広がる光りに包まれた絶対的な安心感、幼少の頃の記憶へと皆を誘うローファイで心に響くメロディーラインはもちろん、サンプリングされた自然音、テクスチャー、カラー、そしてノイズ、そのすべてを通して、Bibioの独特な音世界が、当時すでに完成されていたことがわかるファン必携の一枚となっている。
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