文: 石角友香 編:Miku Jimbo
最小単位である二人編成のグループが往々にして一つのジャンルに収斂されない音楽性を持っていたり、過剰なエネルギーを発散したりするのは、やり取りの密度によるものかもしれない。ここで紹介するエレクトロポップグループのモノハスも二人組。2021年に結成し、ボーカルで作詞を手掛けるTTとトラックメイキングとギターのmumumutaが作る音楽はただ聴き心地のいいエレクトロポップではなく、2.5次元アーティストにも通じる派手なウワモノだったり、グリッチノイズをポップミュージックのアレンジに持ち込んでいたり、生音のギターが効果的に使われるなど、どちらかと言えばJ-POPが内包する複雑なアレンジや構成に近い構造を持っている。そこに不安や焦り、憧れや愛しさの感情を日常的な情景やワードを絡めて、明快な答えのないリリックを乗せていく。彼らのSNS投稿には自己紹介的に「サカナクションとCreepy Nutsと水曜日のカンパネラを足して3で割ったようなバンド」だとあるが、なかなか言い得て妙だ。他にもキリンジ(KIRINJI)やパソコン音楽クラブからの影響も明言しており、確かに洗練やポップさの中にある狂気や割り切れなさは、モノハスの音楽にも感じられる部分だ。
これまでの作品をまとめた2024年リリースのアルバム『チェイス!!!』で彼らの音楽性を一望できるが、そこには人気曲でシティポップ要素が強めでCO2をフィーチャリングボーカルに迎えた「明け方」、心地よいシーケンスとかなりソリッドな音像が組み込まれ、20代男子のリアルが描かれた「休日」、嫌になるほど長い夏休みを思い出させる描写が印象的な「ホーム」などが収録されている。その後、次のフェーズを意識させたのが配信シングル「Carps」で、恋を魚の鯉など同じ音を持つワードを使って歌詞をドライブさせていく手法とボーカルそのものの進化で、歌モノとしての完成度を高めている。ブレイクビーツも盛り込みつつ、シーケンスが作る空間の心地良さで没入できる曲だ。この曲がSpotifyの『エレクトロポリス』にプレイリストイン。2025年2月上旬時点の同プレイリストにはNIKO NIKO TAN TANや4s4ki、パソコン音楽クラブと柴田聡子のコラボ曲なども並び、納得の選出だ。
そして今回リリースされる3rdシングル「街燈」は、これまでとはガラリと印象を変えたスローテンポでどこかノスタルジックですらある楽曲だ。たゆたうシンセに特徴的なブラスのリフが入ってくるイントロからしてこれまでにない聴感で、夜が舞台にも関わらず明るさを感じるのはこのアレンジが大きいのだろう。エフェクトがかかり、ダブルになったボーカルは匿名的だが、酒に酔って現実の不安から逃避して淡い揺らぎに身を任せている様子は、親近感を覚えるところだ。そこにぼんやりと、だが確かに灯る街燈は、見知らぬ場所でも自分のいる場所を照らしてくれる内面的な指標と言える。ジャケットのアートワークもまるでスポットライトのように、光とそれが照らす部分だけが描かれている。エレクトロポップの手法を用いながら、そのイメージに囚われることなく新しい曲を届けるモノハスの次の一手と受け止めた。
RELEASE INFORMATION
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New Single『街燈』
2025年2月13日(木)リリース
〈モノハス〉
early Reflection
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