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主要配信サイトDisney+、Netflix、Amazon Prime Video、U-NEXT、それぞれで配信が開始された話題作を紹介するコラム。今回はNetflix、Amazon Prime Videoで配信される作品を5作ピックアップ。
「早熟の天才」と称される若き映画監督、グザヴィエ・ドランが英語作品として初めてメガホンを執った『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』や、見ごたえあるスリラー映画を世に送り出す鬼才アリ・アスターが夏至の祝祭を舞台に描いた『ミッドサマー』など、芸術性の高い作品が並んだ。
また、古典的名作に新しい要素を盛り込んでミュージカル化した『シンデレラ』が世界同時配信されるなど、今という時代を象徴したエンタメ映画も登場。
まずはDisney+から。NASAの黒人女性スタッフ3人にスポットを当てた映画『ドリーム』が9月10日(金)に配信される。
1961年、ソ連とアメリカの宇宙開発競争が繰り広げられてた時代を背景に、白人環境の中で疎外感を抱きながらもひたむきに夢を追い続け、やがて歴史に残る偉大な功績を残す黒人女性の活躍を描いている。
人種差別問題がより明白に提起されるようになった今、差別反対をメッセージとして掲げる映画の存在感は時代の変遷とともに大きなものとなってきた。実話をベースにした本作では、当時の黒人女性が白人社会の中でどのような扱いを受けてきたかを知ることができる。
NASAが成し遂げた功績の背景に黒人女性の存在がいたことを教えてくれる映画『ドリーム』。本作を観たことで得られる気づきは、きっと意義深いものになるだろう。
まずはNetflixから。19歳という若さで映画『マイ・マザー』の監督をつとめ、長編映画2作目である『胸騒ぎの恋人』、3作目『わたしはロランス』がともにカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映され、クィア・パルム賞も受賞するなど、まさに「早熟の天才」と称される才能を開花させてきたグザヴィエ・ドラン。そんな彼が初の英語作品として手掛けた『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』が、9月1日より配信開始された。
舞台は2006年のニューヨーク。人気俳優のジョン・F・ドノヴァンが29歳という若さでこの世を去るところから物語は始まる。謎めいた死の真相について、唯一の手掛かりとなるのは11歳の少年・ルパートだった。成長し若手俳優となった彼は、ジョンと交わしていた100通以上の手紙を1冊の本として出版し、彼が抱いていた秘密をすべて明らかにすると宣言したのだが――。
この物語は幼少時、『タイタニック』で主演をつとめた俳優レオナルド・ディカプリオにファンレターを送ったというドランの体験をもとに作られた。奥深いカメラワークと印象的なカット、人間の複雑めいた部分を深みのある描写で重ねていくドラン節ともいえる魅力が垣間見える作品となっている。
ドランは自身がゲイであることもあってか、作中にクィアの人物を登場させることが多い。ドラン作品の象徴ともいえる、セクシャルマイノリティの登場人物の葛藤やリアルな心情が本作でも描かれているのかについては物語の核心に触れることになるので、ぜひ過去作品とあわせてその目でご覧になっていただきたい。
次にAmazon Prime Videoからはファン待望、『ヘレディタリー/継承』のヒットでカルト的な人気を得たアリ・アスター監督の『ミッドサマー』が配信される。
不慮の事故により家族を失い、悲嘆に暮れる主人公・ダニーは、自身の恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れることに。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に1度の祝祭」に参加することだった。訪れた村には花が咲き誇り、村人たちが陽気に踊る、まるで楽園のような場所にも見えたが、次第に村をまとう空気が不穏なものに変わり始め、想像を絶する恐怖がダニーを襲う。
村人たちの狂気に満ちた姿が、太陽の沈まない村で明るみに曝され、目を覆いたくなるような光景が暗闇の中ではなく真昼の空の下で広がる様はまさに「明るい狂気」。主人公ダニーに襲いかかる不安やトラウマ、それらを乗り越えた先の大いなるカタルシスに、観客は釘付けになってしまうこと間違いなしだ。
本作を手掛けたアリ・アスター監督は「当時、恋人と別れたばかりで、それを描写する手段を探していた。僕のパーソナルな経験が基になっている」と語っており、芸術性の高いスリラーとしての側面に監督の実体験が織り交ざった稀有な作品となっている。衣装や小道具など、プロダクションデザインの魅力も感じられる作品となっているので、ぜひその点にも注目して観ていただきたい。
映画『ミッドサマー』はAmazon Prime Videoで9月23日(木)より配信開始。
こちらもAmazon Prime Videoから。ディズニーの古典的名作『シンデレラ』に新しい要素を取り入れてミュージカル化させた『シンデレラ』が、9月3日(金)より世界同時配信された。
本作は、『ピッチ・パーフェクト』の脚本を担当したケイ・キャノンが監督と脚本をつとめ、クラシカルでトラディショナルなおとぎ話『シンデレラ』を大胆にアレンジ。世界的アーティストのPOPソングで物語を彩り、従来のプリンセスとプリンスの間で育まれる真実の愛のすばらしさだけでなく、自身の夢をあきらめずに抱き続ける次世代のエンパワメントとしてのシンデレラを描く。
本作の見どころはなんといっても豪華なキャスト。主人公シンデレラに扮するのは、米ガールズグループ・フィフス・ハーモニー脱退後もソロとして活動を続けるカミラ・カベロ。力強い歌声で野心に満ちたシンデレラの人生を歌い上げる。
シンデレラをアシストするファビュラス・ゴッドマザー役にはトニー賞・グラミー賞・エミー賞の栄冠に輝いた実力派ビリー・ポーター。継母役は『アナと雪の女王』でエルサ役を演じたイディナ・メンゼル、プリンス役は映画『ぼくたちのチーム(原題『Handsome Devil』)』などに出演した若手俳優ニコラス・ガリツィンがそれぞれ演じる。
フレッシュなプリンスとプリンセスによる恋のゆくえはもちろん、現代にあわせてポップかつポジティブにアレンジされたストーリーと演出に期待大の『シンデレラ』。新型コロナウイルスによる情勢に塞ぎがちな今、前向きな気持ちになるためにぜひとも観てほしい作品だ。
最後にU-NEXTからは、移民をテーマに家族の絆を活写した映画『ミナリ』をご紹介。
韓国系移民の主人公家族が農業の成功を求めてアメリカのアーカンソー州にやってくるところから物語は始まる。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスに最初は不安を抱くが、子どもたちの持ち前の好奇心と前向きさに牽引され、やがて農地で暮らす家族の絆は深まっていく。しかし好発進と思えた農業が上手くいかなくなり、次第に一家は追い詰められていく。そこに思わぬ事態が降りかかり……。
今なお根強く影をさす移民問題を虚飾なく描き、第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネート。第78回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たすなど高い評価を得た。
タイトルの「ミナリ」とは、韓国語で芹(セリ)のことをさす。逆境に負けずたくましく根を張り育っていくさまを、理不尽な世界を目の当たりにしても懸命に立ち上がる家族の姿に重ね、生きることの希望を見出せる映画となっている。
真夏の暑さがやわらぎ、早くも秋の気配を感じだしたこの頃。長い夜がやってくる前哨戦として、映画とともに過ごす時間をつくりたくなるラインナップに胸が躍る。
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