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文: riko
3年ぶりの新作となった『スプートニク』をリリースしたばかりの印象派。本作は、2018年から現在まで発表されていた曲に新曲を加えた5枚目のアルバムである。やや凶暴な世界観や終末思想満タンの刹那歌詞、印象派印と言ってもよい忘れられないギターリフも健在だが、今回のアルバムでは「魔法」や「行列」など、日常を切り取るような優しい世界観の楽曲も印象的だ。情景がありありと浮かぶように思えて、実際は聞けば聞くほど不思議な世界観に惹き込まれるような、印象派の魅力がたっぷりと詰まったアルバムになっている。人力アプローチでフロアを揺らす「WANNA」や社会風刺ラップに忘れられないリフレインが絡む極太ロックンロール・チューン「グッバイ」。さらに、素朴でシンプルに聴こえるが、パートごとに転調をくりかえす「魔法」、人気店に並ぶ二人の等身大ソング「行列」など、日常生活で抱く違和感や意外性を楽曲に取り込みながら着実に世界観を作り上げている。そんな音楽性や表現のスピリットを持つMIUとMICAに話を聞いた。
ーお二人がユニットを組んだきっかけを教えてください。
MICA:
当初お互い別々に音楽活動をしていたとき、今は印象派のディレクターをしている前田さんを介して知り合いました。MIUがわたしのCDを聞いて、こっそりライブを見に来てくれたんですよ。そこからあれよあれよと10年経過して今になります。
MIU:
MICAちゃんはソロで、私は違うバンドで活動していた時のディレクターが、現印象派のディレクター兼ベースの前田さんだったんです。一緒にやってみたら面白いんじゃないかってことで、印象派を結成してみたのですが、お互い激しい人見知りなので、打ち解けるのに超時間がかかりました(笑)。
ー印象派というユニット名には何か由来があるんですか。
MICA:
2人で遊んでるときに部屋に置いてあった雑誌BRUTUSが芸術の印象派特集をしていて、何か「印象派」ってカッコいいねってなったんです。
MIU:
タブーに挑戦したり、自由な精神がかっこいいねって話して。このユニットでもいろんなことやってみたいと思ったのでそのままユニット名にしちゃいました。
ー音楽活動をするうえで大事にしていることやこだわりは?
MIU:
なるべくこだわらないようにすることかなあ。印象派はバンドアレンジでも曲がすごく変わっていくし、ディレクターに送った歌詞が違う曲の歌詞の一部になってることもあったり(笑)。
ーMICAさんはどうですか。
MICA:
レコーディングもライブでも、なるべく迷いや嘘がない状態で歌いたいと思っています。真っ直ぐ届いて欲しくて。
ーそういった気持ちはユニット名の「印象派」にも繋がりそうですね。
MIU:
そうですね。印象派の芸術家たちのように、やりたい音楽を自由な精神でというところはやっぱりどっかにあるかもしれません。楽しくないと意味がないし、やりたくないことはやりたくないし。やらなさすぎて時々、ディレクターやMICAちゃんに怒られます。
ーアルバム名に『スプートニク』という名前を付けるに至った経緯と意図を教えてください。
MIU:
村上春樹の『スプートニクの恋人』に影響を受けて。スプートニクはロシアの衛星の名前ですね。運命の2人がどうしても結ばれない、とても近くにいるのに軌道が違うから絶対に混じり合う事がない、永遠に結ばれない点と点。まさに人間同士とも言えるし、恋人たちとも言える。そんな意味でつけました。今作を聴いていただいた方から「宇宙っぽさを感じる」と感想をもらったのですが、スプートニクのイメージからきてる部分もあるかもしれません。
ー今回のアルバムを通して共通したテーマやこれまでの作品との違いとして意識したことはありますか。
MICA:
印象派は独特な世界観の曲が多いと思ってるんですけど、今回のアルバムは、聴く人が身近にいる誰かや、情景を思い浮かべれるような曲が多いように思います。
ーアルバムの中でも「魔法」は特にお二人を身近に感じることができるようなMVや温かな曲調が印象的ですが、この曲も具体的な情景を思い描いていたのでしょうか。
MICA:
「魔法」はMIUが母親になって初めて書いた曲で、こどものことを想っています。なので感情の込め方や表現の仕方など、より慎重になってしまってかなり苦戦しましたけど、今までのどの曲よりも優しい気持ちで歌えました。
MIU:
何気ない幸せってきっと誰の人生の周りにも浮いているもので、「何気ない一日こそが魔法」。そんな感じのことを表現したかったんです。でも実際は暗闇の中、赤子の夜泣きに途方に暮れながら浮かんだ曲。Twitterで「歌詞をよく読むと、でもこれは深夜の歌なんですね。」って言われて、鋭い!と思いました。
ーそれはすごい(笑)。
MIU:
曲調はただただオーガニックで、ひたすらシンプルな曲に憧れて、そんな曲を目指してたのですが、バンドメンバーとアレンジを重ねるうちに、印象派史上最も転調しまくる曲に仕上がりました。でもそこが印象派らしいかな〜と思ってます。
ー「行列」も実際に行列に並ぶ二人の様子が思い浮かびますよね。
MIU:
印象派の曲で「玲乃と松子」という、趣味は合わないけど気の合う女の子二人組のことを歌ってる曲があるのですが、今回の「行列」はその続編のイメージで、玲乃と松子が美味しい行列店にわくわくしながら並んでいる曲です。実際にラーメン屋さんに並んでる時に、「日が翳るより長く 月満ちるより早く」というフレーズが浮かんで。そこからざあっとできた感じです。
ーこの曲はビートリッシュなメロディーに仕上げたそうですが、音数の少ない洋楽風のメロディーに日本語の歌詞を合わせることに難しさはありましたか。
MIU:
どちらかというと歌詞から生まれた曲なので、そこに難しさはあまり感じなかったかな?
ーアルバムのリード曲「WANNA」はイントロからアルバムへの期待感が膨らむような楽曲ですね。
MIU:
2年ぶりの新曲なので、これぞ印象派!という曲にしたいなあと思ったんです。
ーこの曲にも何か具体的なイメージがあったのでしょうか。
MIU:
イメージは「BEAM!」の続編。社会に仕掛けられてる「WANA(罠)」をテーマにしたかったのですが、わたし自身ががんじがらめの罠にはまり、歌詞の制作は半年ほどぶっ止まりました。いよいよレコーディングも近くなってきて、テーマを「WANNA(求・欲)」というポジティブな形に変換したところ、サビの「快速急行銀河」という言葉がピカーンときて、あとは割とすらすら進みました。
ーMVも「BEAM!」の数年後という設定になっているそうですが、続編として制作した経緯や意図を教えてください。
MIU:
ミュージックビデオを担当していただいた杉本晃介監督にも曲のイメージをお伝えすると、映像も同じテーマで作ってくださいました。杉本監督曰く、MVの物語的にも「BEAM!」の続き、また「檸檬」の少し前の話になっているそうで、「SWAP」「MABATAKIしないDOLLのような私」のMVのキャラクターも出てきたりして、見所満載の映像に仕上がってます!
ーそれぞれのMVの中で登場するコアラや猫のキャラクターが印象的でした。
MICA:
杉本監督が印象派のMVで作り出してくれている世界観の中で生まれた動物達なんですけど、どの子も可愛くてお気に入りなんです。着ぐるみを作ってライブでも登場させたいなあ。
ー懐かしいメロディーとロックな曲調とのギャップなど、つかみどころのなさが印象派の魅力のように感じますが、なにか理由があるのでしょうか。
MICA:
つかみどころがないというのはまさにMIU自体の魅力でもあります。子は親に似ると言うし、そういうことなのかも。
ーMIUさんご自身もそう思われますか。
MIU:
すごくミーハーなので、いろんな要素がはいっちゃうんです。その雑味や違和感がおもしろかったり、ハッとしたりすると思うので、今後もアンテナビリビリにしていきたいです!
ー親しみやすいようでどこか捉え切れない歌詞も印象的ですが、作詞もそういった部分が影響しているのでしょうか。
MIU:
ディレクターと一緒にテーマを決めて、作品を作ることが多いので、テーマによって歌詞の作り方も違う気がします。歌詞もさっきの話に通じるところがあって、違和感とか意外性とか遊び心を大切にしたいと思っています。あと、シリアス×ユーモアのバランスもこだわりたいなと思ったりしてます。
ー「グッバイ」をはじめとして、社会風刺的な歌詞を用いていることが多いように感じますが、社会に対する反骨心や現代の流行への疑問点を表現したいという気持ちがあるのでしょうか。
MIU:
「グッバイ」はいろんなことや人にグッバイする曲、わりとぽんとできました。新聞やニュースから歌詞にしたらおもしろそうだなあっていうワードをメモするようにしてます。流行への疑問点はあるかもしれません、流行に疎いのでただただ質問してます!「インスタバエってなんか生えるの?」って。
ー今後、挑戦したいことはありますか。
MIU:
やっぱライブがしたいですね!印象派はレコーディングを目指して、曲を作っていくので、リリースはスタートでもあるんですね。そこから、スタジオ練習やライブで曲が育っていくので、「グッバイ」とか今すごくかっこいいんですよ!
MICA:
MIUは嫌がりそうですが、ライブで2人同時にステージの床下からドカーン!と飛び上がって、スチャッと登場するのが夢です。早くライブハウスでライブがしたいなー!
INFOMATION
『スプートニク』
2021年4月28日
印象派デジタルリリース
DARKSIDE OF THE VOLCANIC GIRLS / SPACE SHOWER MUSIC01. WANNA
02. 常温じゃない関係 (2020 TOKYO MIX)
03. 魔法
04. ヘンて言葉、キライ
05. ダーリンナイツ (TRUE)
06. 行列
07. グッバイ
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DIGLE編集部
Interview
山田宗太朗
Topics
kyotaro yamakawa
Newave Japan
黒田隆太朗
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Mao Ohya
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