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文: アボかど 編:DIGLE MAGAZINE編集部
第6回では16FLIPのビートテープ『16FLIP (Atomosphere’22)』を紹介したが、16FLIPのラッパー名義であるISSUGIとしてのアルバム『366247』も先日リリースされた。ビートメイカーとしても超一流のISSUGI/16FLIPだが、同作でメインプロデューサーを務めたのはDJ SCRATCH NICE。大阪出身で、NYを拠点とした活動を経て帰国し、現在は日本で活動するビートメイカーだ。
そんなDJ SCRATCH NICEも、ISSUGI作品だけではなくビートテープを今年リリースしていた。ソロではなく共作での作品で、コラボレーターはカナダ出身で東京を拠点に活動するビートメイカーのFitz Ambro$e。BudaMunkとのユニットのBudaBroseでのリリースなど国内ビートシーンで精力的に活動しているほか、5lackや仙人掌といったラッパーへのビート提供も行っている人物だ。DJ SCRATCH NICEとは2020年リリースのビートテープ『Scratch Joints』や今年リリースしたスプリットミックス『Summer Mix 3』でタッグを組んできた、盟友的な関係にあたる。
今回新たにリリースしたビートテープ『Scratch Jointz II』は、前作『Scratch Joints』の続編的なタイトルを冠した作品だ。2021年から2022年にかけて制作されたビートを収録しており、制作方法としてはDJ SCRATCH NICEが骨組みを作り、Fitz Ambro$eがベースやキーボード、サンプリングソースを足して作られたもの。二人のメロウな感性が表れた、クールかつスムースな作品となっている。今回はそんな『Scratch Jointz II』の魅力を掘り下げる。
ISSUGIのアルバム『366247』でDJ SCRATCH NICEが聴かせたビートは、16FLIPでのISSUGIの作風とも重なるような西海岸フレイバーが効いたものも多かった。しかし、Madlibなどの系譜だけではなくDJ.FreshのようなGファンク的な要素を含むものなども収録され、広い意味での西海岸フレイバーを取り入れている。
今回のビートテープ『Scratch Jointz II』は2021年から2022年に作ったビートということで、恐らく制作時期的に『366247』と重なる部分もあったのではないだろうか。それを裏付けるように、西海岸ヒップホップにも通じるメロウネスが今作にも含まれている。近年のGファンクで言うとLarry JuneやLNDN DRGSなどに象徴される、Gファンクの音色をブーンバップ的なループ感覚で組み上げたようなビートだ。J DillaやPete Rockなどが紡いできたブーンバップ系譜のメロウネスを感じさせる路線と、そういったGファンク的な要素を含む路線を同じ感覚で聴かせるような作りが今作の特徴だ。
冒頭を飾る「In Lo」は、タイトなドラムにGファンクマナーの例の高音シンセ、艶やかなベースなどを絡めた一曲。音の抜き差しで展開を作り、歌声のサンプリングなども挿入してクールに仕上げている。続く「K.I.M.」もダイナミズムのあるドラムがいかにもブーンバップ的な魅力を生み出しながら、シンセやベースがメロウ&ファンキーなエッセンスを加えた良曲。時折入る「ドゥドゥドゥ」という銃声のオノマトペの声ネタも絶妙だ。「Alkaline City」でも、アグレッシヴで骨太なドラムとGファンク的な音色のシンセが光っている。途中で異なる(が、通じる魅力を持つ)ビートに自然と切り替わる展開もある。
ここまでは「ブーンバップ系譜のくっきりとしたドラム+Gファンク系譜のメロウネス」の組み合わせが印象的なサウンドだが、4曲目「Seaside Vacation」はシンセの味付けは控えめでエレピの心地良さで聴かせるような路線を披露。1990年代R&Bのような魅力があり、メロウなムードは継続しつつも若干の変化を付けてきている。続く「Caramelon」はウワモノ・ドラム共にドリーミーな印象で、基本はメロウなブーンバップながらここも少し変化を持たせた作りだ。「Raw Exclusives」では、繊細なドラムにコリコリとしたギターや都会的なピアノを合わせたビートを披露。後半ではスクラッチ音やストリングスが効いたビートにスイッチし、都会的な空気をキープしつつも異なるビートを繋いでいる。この「Raw Exclusives」や先述した「Alkaline City」のようなビートスイッチの仕掛けは、DJとしてのミックスもリリースしている二人らしいアプローチとも言えるだろう。
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