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文: ヨシヤアツキ 写:遥南 碧
ー1番最初に買ったCD覚えていますか?
ORANGE RANGEの『ミチシルベ』でした。小学校6年生くらいの時でしたね。当時友達の間で話題になっていたので僕も聴き始め、そのタイミングで発売されたのが『ミチシルベ』だったんです。
ーその頃、他にはどんなアーティストを聴いていましたか?
YUIやBUMP OF CHICKENなどですね。特にYUIは同じ福岡出身ということもあって、話題になり始めた時にすぐ好きになりましたね。初期の頃の曲が特に好きです。
ー友人や流行りから音楽を知ることが多かった印象を受けましたが、自分から新しい音楽を探す事はありましたか?
中学校の昼休みにパソコンを使うことができたので、ミュージックビデオのまとめサイトをよく見てて、新しい音楽を探していましたね。あとはラジオを聴いていて、TOKYO FMで放送されている『SCHOOL OF LOCK!』をよく聴いていました。
ーラジオで出会った音楽で、記憶に残っているものはありますか?
第一回の<閃光ライオット>(※)に出ていたFOOLONというバンドが好きでした。ちなみに、僕が初めてライヴハウスへ行ったのも、そのバンドのライヴだったんですよね。
※『SHOOL OF LOCK!』、TOKYO FM、Sony Music、auが主催をしていた、10代限定の音楽イベント。(2008年〜2014年開催)
ーそうだったんですね!初めてのライヴハウスはどうでしたか?
地元の福岡・天神にあるキャパが100人もないライヴハウスだったんですが、そもそもライヴハウスというものがどんな場所なのかさえ分からないし、一緒に行く友達もいなかったので不安がありました。でも、FOOLONを見たいという思いが強く、勇気を出して向かったのを覚えています(笑)。ライヴを見終わったあとは高揚感に溢れたまま自転車を漕いで帰りましたね。
ーラジオがきっかけの、いい体験ですね。
そうですね。ラジオはメジャーなアーティストの曲も流れますが、<閃光ライオット>のように、インディーズのアーティストも取り上げられていたので、そこで“名前は知らないけど聴いてみよう”という考えが生まれたような気がします。<閃光ライオット>に関しては思い入れが強かったので、そこに出ていたバンドの曲を集めたアルバムを作ったり、自分の好きな曲をまとめたプレイリストを制作してCDに焼いて、友達と交換したりしていました。
ー石松さんは中学生の頃から音楽がとても好きだったんですね。その時は自身でバンドや何か楽器はしていましたか?
中学から部活の野球に打ち込んでいたので、家にあったクラシックギターを時々触る程度でした。その当時はTHE BACK HORNとか9mm Parabellum Bullet、凛として時雨、toeなどをよく聴いていて、漠然としたギターへの憧れがありましたね。怪我もあり、高校2年生の夏に野球を辞めた時、自然にエレキギターを始めました。高校のときは一人で弾いていただけだったので、大学はバンドをやりたい気持ち一心で入りました(笑)。
ーなるほど。大学に入って実現できましたか?
九州大学でBe-Rockという100人くらい所属している大きなバンドサークルに入り、コピーもオリジナルもやりました。コピーしたのはSyrup16g、相対性理論、ART-SCHOOL、LITE、People In The Boxとか。オリジナルバンドはGirl in a blue skirtという名前でやっていて、スーパーカーやSpangle Call Lllie Lineなどから影響を受けていましたね。
ーオリジナルバンドについて聞きたいです。何か一番大きな活動はありますか?
12ヶ月それぞれの曲を制作し、『揺れる四季と少女の物語。』というテーマで、12曲入りのアルバムを卒業制作として作りました。レコーディングからミックス、マスタリングまで全部自分たちでやったのはとても良い経験でしたね。
ーバンドサークルではイベントや何か作ったりなどしていましたか?
サークルでは毎年「Days of Be-Rock」というコンピレーションアルバムを作っていて、3,4年生の頃にはそのアルバムをインターネットで広める企画を実施しました。特設サイトをつくってフリーダウンロードできるようにしたり、TwitterアカウントやFacebookページを作ってサークルのバンドを紹介したり。毎年200近くダウンロードされていましたね。
—大学時代、他に活動はしましたか?
「9on fes」という学内フェスを主催しました。九州大学の芸術工学部には、映像や音響などを学んでいる学生がいて。彼らの専門性を活かしておもしろいことができればと思い、就活で仲良くなった芸術工学部の方と共同で企画しました。コンセプトを作り、ロゴ・メインビジュアルを決め、特設ページやポスターなどを制作。ライブにはVJをつけて演出にこだわり、転換時にはゲームでサークル間交流を図るなど、これまでにないイベントにできたかなと思います。文化祭みたいでしたね。
ーこの時から企画することに関心があったんですね。この経験から今のディレクターという仕事が見えてきますね
そこまで意識していませんでしたが、確かにそうですね。今言われて気づきました(笑)。“もっと面白くできそうだな”という気持ちが企画を考える力になっている気がします。ディレクターという仕事もですが、1人ではできないような大きなことを、色んな人と作っていくこと。その中で誰にどんなことをお願いして、どんな変化が起きてより良いものができるかを考えながら試行錯誤すること。そこにとても楽しさを感じますね。
ー現在はCINRAに勤めていらっしゃいますが、どんなことをしているんですか?
CINRAは大きく分けて制作チームとメディアチームに分かれるのですが、僕はディレクターという職種で制作チームに所属しています。デザイナーやエンジニア、編集者と一緒に、企業の課題に対して企画を練り、企業担当者とやりとりしながら、クリエイティブ制作やプロモーション施策を進めるのが主な仕事ですね。最近だと、CINRAのコーポレートサイトのリニューアルも担当させていただきました。
ーCINRAで働き始めて、何か感じた事や気付いたことはありますか?
音楽やアート、映画などカルチャーが好きな人が多く集まっているので、居心地がいいなと感じていますね。クリエイティブ制作の場でも、カルチャーの力で企業課題を解決することを目指しています。企業に対しても、ブランディングやマーケティングにおいて新しい切り口での提案ができ、カルチャーシーンに対してもプラスになるという方法は、CINRAだからできる仕事として魅力を感じていますね。
ー音楽に焦点を当てると、石松さんは消費をする立場/生産をする立場/支援をする立場の3つにいる訳で、この様々な立場から物事を考えられるということが、仕事に活かされているんじゃないかと思っています。ご自身はどう思っていますか?
そうでありたいと思っています。ディレクター歴でいうとまだ短いので、これからどんどん磨かないといけないと思っていますね。やっぱり、作り手の目線とそれを受け取る人の目線の両方から物事を見ないと良いものはできないと思いますし、本当に心に響かないと思っています。
ー石松さん自身のこれからの展望を教えてください
仕事を通して色んなことに挑戦させてもらっているので、その経験も活かしつつ、好きな音楽の場で自分が企画したプロジェクトをやりたいです。例えば、リアルな場所が持つ力は強いと感じてるので、イベントを開催し、多くの人を巻き込みたいと思っています。早くやらないと、と思ってますね。
ー焦ってるように見えますが(笑)。
焦ってます!(笑)。色々なものの企画、コンセプトを考えるのは好きなので、自分にしか出来ない事、今まで誰もやってこなかった事をどんどん生み出していきたいです。それが、自分の価値になればと思っています。
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