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関西を中心に活動するシンガー、FLEURが2023年2月8日に新曲「NO TIME!!」をリリースした。
2019年にShin SakiuraやA.G.O、SoulflexのMori Zentaroらが参加したセルフタイトルの1st EPをリリースしたFLEUR。持ち前のシルキーな質感を湛えたボーカルと、感情の機微を詩的に表現する作詞センス、そして気鋭のプロデューサー陣との共作による多彩な音楽的アプローチで注目を集めた。
以降もマイペースながら作品リリースを重ね、R&Bを軸とした新世代アーティストとのコラボも積極的に行っている。2023年第1弾リリースとなる「NO TIME!!」は先述のMori Zentaroとおよそ4年ぶりに共作を行った1曲。ミニマムなビートの上で、ラップ調のフロウとメロウなフックを展開している。
今回のインタビューでは改めてそのルーツとここまでの足取りを辿りつつ、コロナ禍で失速していた時期、そして新曲の制作背景から今後の活動についてまで語ってもらった。
BIG UP!
『BIG UP!』はエイベックスが運営する音楽配信代行サービス。 配信申請手数料『0円』で誰でも世界中に音楽を配信することが可能で、様々なサービスでアーティストの音楽活動をサポート。また、企業やイベントとタッグを組んだオーディションの開催やイベントチケットの販売や楽曲の版権管理、CDパッケージ制作などアーティスト活動に役立つサービスも充実している。
さらに、音楽メディアも運営しており、BIG UP!スタッフによるプレイリスト配信、インタビュー、レビューなどアーティストの魅力を広く紹介している。
▼official site
https://big-up.style
ー最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃ですか?
小さい頃は音楽よりも漫画が好きで、スクリーントーンを買って結構ガチで描いていた時期もあったくらいなんです。その延長でアニメもよく観ていたので、カラオケでアニソンをよく歌うようになって。それこそgirl next doorやSunSet Swish、FLOWなどですね。
ー当時から歌うことも好きだったんですね。
そうですね。ただ、より歌うことを意識するようになったのは、歌のオーディションに参加してからです。高校生のときに「有名人に会えるから」という理由で友だちと受けたんですけど、当然そんな中途半端な人間が受かるわけもなく、速攻で落ちまして(笑)。オーディションの様子はTVで放送されていたので、その後の審査とかも観てたんですけど、そのうちに段々と悔しくなってきて。そこからカラオケに行く頻度が上がりました。
ーなるほど。
あと、小中高と野球部だったんですけど、高校のときに「追いコン」みたいなパーティで、出し物のひとつとして歌ったんです。そしたら何人かの部員が泣いてくれて。それまで自信を持てたり、人に誇れるようなことが全くなかった自分にとっては、その経験も大きくて。
野球も長く続けてはいたものの、自分が特別秀でていると感じることもなかったですし、自己評価も低かったんですけど、その頃から「歌なら自信が持てるかも」と思うようになりました。
ー初めての手応えを感じたと。
そうですね。それから路上ライブを観に行くようになって、そこで話しかけた方たちと仲良くなって、クラブやライブハウスにも足を運ぶようになりました。当時はタイプビートもなかったですし、まだオリジナルを歌っている人は少なかったんですけど、僕が仲良くなった先輩たちは自分たちで作ったオリジナル楽曲を歌っていて。それに影響されて自分もやってみようと思いました。
ーその当初はどのような音楽を志向していたんですか?
当時はどういう音楽がやりたいのかもわかってなかったので、自分が歌える、歌いやすい曲を探っていました。友だちから「声が似てるね」って言われた清水翔太さんをはじめ、自然とR&Bテイストの曲を聴いたり歌ったりすることが多かったですね。
大学では「なんかカッコよさそうだな」と思ってダンス・サークルに入ったんですけど、そこでポップ・ダンスというジャンルに出会って。自分はロック(・ダンス)をやっていたんですけど、すぐ隣でポップを練習している人たちがかけてる音楽にどんどん惹かれていったんです。それをShazamして、Mura Masa(ムラ・マサ)やStwo(ストゥー)など、どんどん新しい音楽をディグっていきました。
ーR&Bとも隣接している、当時の先鋭的なビート・ミュージックというか。
はい。それともうひとつ大きかったのが、Majestic Casual(YouTubeを軸とした人気サブミッション・メディア)で。Medasin(メダシン)とかMasego(マセーゴ)だったり、今でも大好きなアーティストに出会うことができました。ダンスをやり始めたことによって、ちょうど音楽を聴く耳も変わってきた頃だったんで、すごくタイミングがよかったなと思います。
ー「音楽を聴く耳も変わってきた」という部分について、もう少し具体的に教えてもらえますか?
それまではほとんど歌とメロディしか聴いてなかったと思うんですけど、ダンスでは細かい音やブレイク、各楽器のフレーズに合わせて体を動かすので、自然とビートだったり歌以外の部分にも意識がいくようになりました。偶然にも今、仲良くしてもらってるプロデューサーさんなども、ダンスから音楽に入った人が結構多いんですよね。
ー作曲についてはどのように始めたんですか?
最初はオンライン上でビートを買って、そこにメロディと歌詞を乗せる形で作っていました。ただ、当時は今ほどクオリティの高いビートは見つけられなくて。ブーンバップ調のビートにピアノが少し鳴ってる、みたいなやつで曲を作ったんですけど、やっぱりそんなカッコいいと思えるものにはならなかったんです。それで、さっきお話した路上ライブで出会った先輩たちに色々な人を紹介してもらったり、色々な人のライブやイベントに遊びに行って、そこでも繋がった方にお願いしたりするようになって。
ー1st EP『FLEUR』に参加しているプロデューサー陣とも、その流れで出会ったのでしょうか?
最初のシングル「シンクロニシティ」を手がけてくれたMONBEEさんは僕がSoundCloudにアップしていた曲を聴いてくれて、Twitterをフォローしてくれたんです。それから連絡を取るようになっていきました。KOHDくんは僕の友だちの作品をプロデュースしていて、それがすごくカッコよかったので、自分からコンタクトを取ったんです。
A.G.Oさんは以前CIRRRCLEのディレクターをやられていた方からの紹介ですね。SNSでたまたま繋がって、東京まで会いに行きました。Shin Sakiuraさんも東京で出会ってます。SIRUPさんが今の名義に変えてすぐのライブでお会いしました。
ー新曲「NO TIME!!」でもタッグを組んでいるMori Zentaroさんはいかがですか?
それこそSIRUPさんが前名義で活動されていたときのワンマンに遊びに行ったのがきっかけですね。普通にお客さんとして遊びに行ったんですけど、ライブが終わった後も会場をウロウロしてたら打ち上げに誘ってもらえて。そこでZentaroさんやSIRUPさんともお話しすることができて、「一緒に曲を作ってくれませんか」って話をしました。
ー初期のアーティスト写真もSoulflexの木村華子さんが撮っていましたよね。Soulflexとの出会いは大きかったんじゃないでしょうか。
間違いないです。まぁ、僕が一方的に好きで遊びに行っていただけなんですけどね。Soulflex周りの方たちは年齢とか関係なくフラットに接してくれる方が多くて、すごく嬉しかったです。
だからなのか、尊敬する先輩であると同時に、勝手にライバル心も抱いていて。勝ち負けじゃないけど、みんなをあっと言わせるような曲を作りたいっていう気持ちもあります。
ー最初に話してくれたオーディションの件もそうですし、負けん気というか、競争心みたいなものが原動力になることは多いですか?
そうですね。それこそ1stシングルの「シンクロニシティ」では当時好きだった女の子に振られたときの感情と、そのときの日本のオーバーグラウンドな音楽に対する不満というか、「インディでもこんなおもしろい音楽作れるんだぞ」っていう気持ちをごちゃ混ぜにしていて。そういったハングリー精神みたいなものはずっとあるかもしれないです。それこそ新曲「NO TIME!!」もそういう気持ちで書いた曲ですね。
ただ、曲によって色々な表情を見せたいと思っているので、常にそういった気持ちを曲に出そうとは思っていません。歌詞はメロディやサウンドに寄り添うべきだと考えているので。
ー今お名前が挙がった方たちもそうですし、近年コラボを果たしたSalaさんやVivaOlaさん、lo-key designのmarsh willowさんなども含め、音楽的にも共通項を見い出だせるアーティストの活躍が目立ちます。こういった状況はFLEURさんにとっても刺激的なんじゃないでしょうか。
めちゃくちゃおもしろくなってきたなと思いますし、リスナーの自分としてはある種理想に近い形になってきています。ただ、その一方で劣等感も感じていて。みんなが活躍してくれたおかげで、すごくおもしろい音楽シーンが生まれているのに対して、自分は納得のいく活動ができていないというか。特にコロナ禍以降の2年くらいは自己肯定感が下がっていて、ライブも全然やってなかったですし、歌詞も書けない時期が続きました。
ーそうなんですね。
コロナ以降はより一層ネットやSNSでのプロモーションが上手い人が伸びるようになったなと感じていて。それ自体は当然のことだし、決して悪いことではないと思うんですけど、自分は少し苦手な分野でもあって。だから、そうやって売れていく人たちに対しての嫉妬の気持ちもあったんだと思います。
ーその気持ちは今も引きずっている?
いえ、最近はライブも増やす方向性にシフトして、気持ちも切り替えたつもりです。制限も緩和されてきて、外に出る機会が増えたことで他のアーティストの方たちとまた話す機会が増えてきて。彼らのヴィジョンとかを聞いているうちに、自分も触発されてきたという部分が大きいです。……やっぱり、外に出ないとダメなんだなって思いましたね(笑)。
コロナ前は2021年くらいに1stアルバムを出そうと計画していたんですけど、それも全然進まなくなっちゃって。最近になってから制作を再開して、一気に進めています。
ー今回リリースされた「NO TIME!!」はアルバムからの先行シングルになるのでしょうか?
いえ、この曲はまた別で。実は3〜4年前にもらったビートで作っていた曲なんですけど、そのときは完成させることができなくて。長らく保留になっていたんですけど、他の曲の制作で行き詰まったときに、過去のデモやビートを聴き返していたら、「これ、今だったら完成させられるかも」って思ったんです。ただ、そのビートをくれた方がちょっと忙しくて、仕上げのアレンジが難しいとのことだったので、許可をもらった上で今回はZentaroさんに最終アレンジをお願いしました。最近、Zentaroさんと全然曲を作れてなかったし、この感じだったらおもしろい作品になりそうだなと思って。
ーMori Zentaroさんとはどのようなやり取りを?
「とにかく尖りたい」ってお伝えしました。「俺、みんなが思ってるほどいいやつじゃないよ?」っていう感じで、本当の自分を出したいなと思ったんです。自分の作品は大きく括ればR&Bだと思うし、自分もR&Bが大好きだけど、だからってベタな恋愛の曲ばかり書かなくてもいいし、好きなことを歌うべきだと思うんです。なので、この曲は自分の実体験からきたネガティブな感情をそのまま綴っています。
ー曲の尺はかなり短いですよね。今っぽいなと思う反面、FLEURさんの作品としては新鮮でした。
歌詞の内容的に、あまりグチグチ長くするのも嫌だなと思って(笑)。デモの段階でバシッとハマった感覚があったので、これ以上伸ばさなくていいなと感じました。僕は京都出身なので、歌詞では少し遠回しな表現とかもしていて、そこも注目してくれると嬉しいですね。
ートラックは重心の低いネオソウル感が印象的です。
土臭い感じもありますよね。でも、SIRUPさんの「No Stress」とかで使っていたようなボイスサンプルの感じもあって、Zentaroさんの明るい側面と暗い側面が上手いこと噛み合ったような作品だなって思います。シンセベースの使い方も相変わらず特徴的で最高だなと。
ー現在はアルバムを制作中とのことでしたが、どのような作品になりそうか、言える範囲で教えてもらえますか?
あと3曲仕上げて完成という感じなんですけど、アルバム全体でひとつの演劇を観ているような作品にしようと思っていて。ひとつの物語のなかでシーンが目まぐるしく変わるように、色々なタイプの曲に挑戦したつもりです。ある意味自分の色々な側面を出したアルバムとも言えるかも知れません。今の自分の名刺代わりの作品というか。
アルバムがいつ出るかはまだ言えないんですけど、大好きなAmber Mark(アンバー・マーク)がやっていたように、先行シングルをコンスタントにリリースして、徐々にアルバムの全体像が見えてくる、みたいな発表の仕方ができればなと考えています。
ーリリースがすごく楽しみです。ライブについてはいかがですか?
ライブも最近は積極的に増やしていて。今年の目標としてはサーキット・フェスや野外フェスなど、大きいイベントに出たいですね。そこで自分自身も納得のいくパフォーマンスができるようにしっかりと準備をする。なんとなく「出たいなぁ」って思うだけではなく、そのために必要なこと、やるべきことを考えて、一歩一歩着実に進んでいきたいです。そこで初めて見えてくるものもある気がしていて。
ーコロナで落ちていた時期を経て、今はとても堅実に前を見据えているんですね。
尊敬するみんなにすぐにでも追いつきたいけど、まずは目線を低くして目の前のことに取り組まなきゃなと。
ー今の話とは真逆になってしまいますが、敢えて大きな目標や夢を挙げるとするとしたら、どのようなことが思い浮かびますか?
やっぱり<Coachella>ですよね(笑)。88risingを筆頭に、アジア圏のアーティストも多く出演するようになってきましたし。あとはWez AtlasくんやVivaOlaくんも出ていた<SXSW>もそうですね。
去年、SIRUPさんの日本武道館公演を観に行ってめちゃくちゃ感銘を受けたので、大きい会場で歌ってみたいっていう気持ちは大きいです。ただ、あくまで一番の目標はいい曲を書き続けることなので、そこはこれからもブレずに歩いていきたいと思っています。
Release Information
BIG UP!
『BIG UP!』はエイベックスが運営する音楽配信代行サービス。 配信申請手数料『0円』で誰でも世界中に音楽を配信することが可能で、様々なサービスでアーティストの音楽活動をサポート。また、企業やイベントとタッグを組んだオーディションの開催やイベントチケットの販売や楽曲の版権管理、CDパッケージ制作などアーティスト活動に役立つサービスも充実している。
さらに、音楽メディアも運営しており、BIG UP!スタッフによるプレイリスト配信、インタビュー、レビューなどアーティストの魅力を広く紹介している。
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