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日本のサウンドシステム(註:音楽を提供する集団。またはクルー)を代表するMighty Crownファミリーのアーティスト同士で結成したFIRE BALLのDee Jay(註:レゲエ音楽で歌う人のことを指す)であり、10代からマイクを握ってきた「ハマのストーリー・テラー」の異名を持つChozen Lee。FIRE BALLは活動休止中だが、自身のバンドThe Bang Attackやソロでの作品も重ねてきた。
その彼が自身のルーツを形成したニューヨークで旧知のエンジニアMIKI TSUTSUMIを介して、Mark Evich(マーク・エーヴィッチ)プロデュースによる「Believe it or Not」を制作。音楽と歴史へのリスペクトに溢れるこの曲をきっかけに、従来にないサウンドで聴かせるEP『experience』を完成させた。ここでは「Believe it or Not」制作の経緯を起点に、直近のモードとそのモチベーションについて話してもらった。
BIG UP!
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『BIG UP!』はエイベックスが運営する音楽配信代行サービス。 配信申請手数料『0円』で誰でも世界中に音楽を配信することが可能で、様々なサービスでアーティストの音楽活動をサポート。また、企業やイベントとタッグを組んだオーディションの開催やイベントチケットの販売や楽曲の版権管理、CDパッケージ制作などアーティスト活動に役立つサービスも充実している。
さらに、音楽メディアも運営しており、BIG UP!スタッフによるプレイリスト配信、インタビュー、レビューなどアーティストの魅力を広く紹介している。
▼official site
https://big-up.style/
ーこれまでと音像がかなり変化した「Believe it or Not」ですが、ニューヨークで制作されたことも含めどんな経緯があったんでしょうか。
もともとニューヨークには1998年から2000年まで住んでいて、一旦日本に行ってまたNYに帰るつもりだったんですけど、2001年に9.11(アメリカ同時多発テロ)があって。ニューヨークに帰るタイミングを失ってたんです。そしたらFIRE BALLがメジャー契約したり、日本での活動がちょっと忙しくなってきて戻れなくなったんですが、ニューヨークは自分にとってかなり鍛えあげられたというか、いろんな経験させてくれましたね。
その後、2023年の年末にMighty Crownが休止する前の最後の海外ツアーをやったんですよ。それで「久しぶりだし行くか」となって、ニューヨークでデッカいイベントをやって。そのときに僕の高校の同級生で親友のMIKI TSUTSUMIのところに転がり込んで。彼はR&BアーティストのH.E.R.(ハー)とかいろんなアーティストのエンジニアをしてるんですけど、僕は昔からのつながりでずっと作品のエンジニアをやってもらったりしてたんですね。で、どうせだったら作品を作りたいということで、MIKIがMark Evichを紹介してくれて。それで「Believe it or Not」を作るためにまず、「こういうのを作りたい」というイメージを伝えたらトラックが送られてきて「これめっちゃいい!」となって。そのときに「electric lady」の元となるトラックも送られてきて、それもまたすごく良かったんです。
ーマークさんの音楽や彼自身の最初の印象ってどうでしたか?
洗練されてますね。ミュージシャンでもあるので、ギターもベースも打ち込みのドラムも全部自分でやれる人なんです。ただ自分がやってきたジャンルともちょっと違うし、身近にいるタイプじゃなかったんですけど、彼が作ってきてくれたトラックにビビッと来て。音楽的にすごくいいなと思ったのと今までやりたくてもやれてなかったことをいきなり持って来られたのに加えて、親友のMIKIがワンクッションとしてあったんで、たぶん周波数も一緒だろうし、スッと気が合った感じですかね。
ーこの曲にはThe Bang AttackのギタリストのYota Kobayashiさんやボストンで活躍するレゲエキーボーディストのYusaku Yoshimuraさんが参加しています。ふたりのプレイの魅力はどんな部分ですか?
やっぱすごいんですよ。インストのことを詳しくは語れないですけど、誰が聴いてもいいなって思えるギターだったりオルガンだったりキーボードだったりで。マニアックな人がマニアックな聴き方してもすごいだろうし、ド素人が聴いただけでも、何がすごいのかわかんないけど演奏自体がすごいということはわかるというか。
ーこの曲に生楽器が入ることは必然だったと。
最近は曲の中にそういう楽器のソロを入れたいというのがあったりして、必然的に入ってきた感じですね。
ーリリックはどんなことからインスピレーションを受けて書かれたものですか?
ニューヨークに行ったとき、マークもそうだしMIKIもそうだし、マスタリングエンジニアのHata Ryojiさんもそうだし、向こうのメインストリームで頑張ってる人からインスピレーションを受けたりするんです。それ以外にもニューヨークのセッション箱でお寿司握りながらDJやってるKAMUIくんであったりとか、吉田実代ちゃんってボクシングの世界チャンピオンになった人、Dragon76ってグラフィックアーティストもそうですね。メインストリームでやってる人も、そうじゃないけどニューヨークで生活しながら夢を持って頑張ってる人とも交わりがあって、それぞれからすごい影響を受けて。それをリリックに昇華したって感じですかね。
ー実際に2023年にリーさんがニューヨークで出会った人たちが発端になり、次へ向かって動いていくイメージがある歌詞だと思いました。
“夢は必ず(叶う)”的な歌詞じゃないですか。でも夢って叶わないことのほうが絶対多い。だから「望めば何にだってなれる」なんていう言葉は無責任ではあると思うんですよね。ただ「やりゃあできる」って思わないと絶対無理じゃないですか。そう思った人だけが道をつなぐことができるというか、そう思わないことには絶対そうはならない。というところで、無責任な言葉ではあるけど、それは絶対条件として必要な言葉だし想いというか。
ー自分を鼓舞する言葉でもあるしエネルギーのある歌詞でありつつ、トラックが洗練されているので聴こえ方が新鮮で。
もちろんメッセージの重要性は昔から自分の中にあるんですが、最近になって思うのはやっぱ音楽なのでそこが主役じゃないというか。この曲のトラックを聴いたときも「踊れる音楽っていいな」っていうのもあって、踊れる音楽をメッセージで邪魔しちゃいけないっていう想いがなんとなくありましたね。
そう思ったきっかけの一つに、日本でセッションライブに飛び込むことが多くなって、ミュージシャンに目や耳が行くことが多くなったこともありますね。江川ゲンタさんっていう日本のドラム界ではかなりすごい方がいるんですけど、彼らのインストのセッションを聴いてると、「もう言葉いらないじゃん、邪魔じゃん」と思うぐらいすごいセッションだったりするんです。そこへ自分が飛び込んだときに邪魔をしちゃいけないし、自分も消耗しないようにしつつ、そこのバランスをとることが自分の中でレベルアップになって。それもゲンタさんとの出会いから得たものなんですけど、自分を成長させてくれたところですかね。
ーここからはEP『experience』についてお聞きするのですが、「Believe it or Not」ができたことによってリーさんの中で見えたことがあった?
そのときにはもう見えてましたね。もちろんルーツレゲエとか今のダンスホールみたいなこともやりたいけど、それよりも「Believe it or Not」とか「electric lady」ができたことで、とりあえずこの感じでEPかアルバムまでつなげたいなと思って。で、ワンプロデューサー、ワンエンジニアでやると絶対音もまとまるし、作品を通したときにもいいんだろうなと思って、マークとMIKIとで作りましたね。
ーEPには、Mummy-Dさんをフィーチャリングに迎え、去年リリースした「Andante~ワタシ好みのbpm~」も収録されています。
この曲もマークに頼んで。最初僕はファンクっぽいオケで作ってたんですが、マークなりのレゲエにしてくれって頼んだらこのトラックが送られてきたんです。で、これができたときにはもう入る人がMummy-Dしか頭になくて。プリプロでDくん(Mummy-D)にラップを入れてほしい場所だけ空けて歌も作って、デモではイントロでMummy-Dの名前も呼んじゃってDくんに送って「これやってもらえませんか」って。そしたら「名前入ってんじゃねえかよ」って(笑)。
ー確信犯ですね(笑)。ちなみにMummy-Dさんとの出会いはリーさんが高校生のときにクラブでRHYMESTERを見たことだったとか。
そうですね。そもそもRHYMESTERのDJ JINくんがうちの兄貴の高校の同級生で、うちの実家に泊まりに来てたんですよ。もちろんそのときはRHYMESTERじゃなかったんですけど。で、JINくんも覚えてくれてて。僕、兄貴の友達とかにめっちゃ礼儀正しかったんですよ。うちに来ると挨拶に行って「ゆっくりしてってください」みたいな(笑)。
ーMummy-Dさんとはいつかコラボしようと?
RHYMESTERとはFIRE BALLでコラボしてるんですけど、やっぱりDくんのリリックセンスというか言葉選びがすごいから。この曲調ではやっぱりDくんしか思い浮かばなくて。
ー「Irresistible」と「electric lady」に参加しているHana Ardieさんもニューヨークで出会ったんですか?
いや、東京の渋谷の琥珀というセッション箱のジャズバーですね。Yusakuが日本に帰ってきたときに「やるから遊びに来なよ」って誘われて行ったらHanaもいたんですよ。で、セッションしてて「この子うまいな」ってなって、僕がセッションやったときもHanaを呼び込んで一緒にやって気が合って。それで「electric lady」を作ったときに絶対に女性ボーカルを入れたくて、これもうHanaしかいないなと思ったので「セッションのときみたいにフリーになんでもいいからやって」って頼んだんですね。でもちゃんとリリックを歌ってもらって一緒に曲も出したいなと思って、それが「Irresistible」につながるんですけど。
ーそういう経緯だったんですね。ちなみに「Irresistible」は“たまらない”みたいな意味だと思うんですが、声で作る空間が気持ち良くて。
そうなんですよ。彼女の持ってる雰囲気がすごい良くて。出会った当時はまだ23歳くらいだったと思うんですけど、これからすごいんじゃないですかね? またニューヨークに行っていろんなものを吸収して活躍していくんじゃないかな。
ーこの曲はレゲエはもちろんですが、ジャズやアフロビーツなどいろいろ混ざったトラックですね。
そうですね。アフロビーツはちょっとやってみたいなってのがあって。
ー「electric lady」もマークさんのトラックです。
この曲は自分の中でリリックやメロディが降りてくる瞬間を具現化したというか、僕はアイデアとかメロディを女神として捉えていて。で、その女神が“イ・ハモニ”っていう名前なんです。歌詞の《いいハーモニー》って韓国語の名前っぽいじゃないですか?
ーだからリリックが《君はelectric lady 突然降りてきたいいハーモニー》なんですね。トラックはダブをさらに加工したテクノみたいな感じもあって面白いです。
これもジャマイカ人が作らないであろうレゲエトラックっていうか、すごいモダンな感じがして。ちょうどこの曲の制作時に、MIKIがエンジニアで入ってたことがあったのでJimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)のElectric Lady Studios(註:1970年にジミ・ヘンドリックスが建てたスタジオ)に行ったんです。今回使ってはないんですけど、そこがすごく面白くてまたビリビリ来ちゃって。その感覚もサウンドに影響しているようにも感じます。
ー今回のEPは、総勢どれぐらいの人が直接的/間接的に関係してるんだろう?って作品になってますよね。リーさんにとってどんな作品になりましたか?
いやもう大人になったなと思いましたね、自分でも。リリックにしても雰囲気にしても何にしても。自分をさらに成長させてくれたっていうか、タイトルの『experience』にもある通り、経験が詰まってる。自分だけの経験じゃなくて人の経験も含めてですが。
ーでは、これからこのEPはどういう意味を成しそうですか?
どうですかね? もちろん自分の作品の一部になって過去に流れていくとは思うんですけど、自分でもなかなかそう満足いくものってできなくて。でも自分の中でマスターピースに入ってくる作品になるかなっていうか。転機だと思うし、ここからまた何かありそうな気はしていますね。
ーリリース後のライブやイベントの企画はありますか?
そういうのやったほうがいいですよね(笑)。なにぶんグッズのことだったりライブのことだったりレコーディングのことだったり、全部自分でやってみてるんですけど、「俺、無理だな」って思ってますね。一番苦手なのがお金の交渉。好きじゃないですね(笑)。
ーそれはぜひ誰か協力いただいて実現していただきたいです。今回のEPに合いそうな会場とか良さそうじゃないですか?
BLUE NOTEとかBillboard Liveとかでやりたいですね。
ーHanaさんをフィーチャーした曲もライブで観てみたいですし。
今のところいつ、とは言えないけどやりたいですね。
ーこのEPを今後の制作やライブにつなげていきたいですか?
そうですね。つないでいきたいですね。やっぱ次は自分のバンド(The Bang Attack)でアルバムを作りたいと思ってて。それはもっとレゲエに寄りたいなっていうのもありますね。
RELEASE INFORMATION
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New EP『exrerience』
2025年2月14日(金)リリース
Label:Sound of Delight1. Belive it or Not
2. electric lady
3. Irresistible feat. Hana Ardie
4. Andante~ワタシ好みのbpm~feat. Mummy-D
5. electric lady dub
BIG UP!
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『BIG UP!』はエイベックスが運営する音楽配信代行サービス。 配信申請手数料『0円』で誰でも世界中に音楽を配信することが可能で、様々なサービスでアーティストの音楽活動をサポート。また、企業やイベントとタッグを組んだオーディションの開催やイベントチケットの販売や楽曲の版権管理、CDパッケージ制作などアーティスト活動に役立つサービスも充実している。
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