邦楽と洋楽をシームレスに聴く時代。音楽シーンのこれからについて|Newave Japan #005

Newave Japan

文: スギタヨウヘイ  写:遥南 碧 

今、若い世代と音楽との関係が大きく変化しているという。今回取材を行なったのは、TumblrやSNSを通して、インディーズバンドについての情報を発信している鈴木さん。ライブレポートやインタビュー、海外バンドのツアーサポートといった多岐に渡る活動の中で彼が感じたこととは?

音楽は、消費するためにあるんじゃない

ーまずは、鈴木さんが運営している00cross00(クロス)について教えてください。

00cross00(クロス)はメタルコア・ハードコアなどを中心としたバンドの情報を発信しているメディアです。2005年に立ち上げて、国内のバンドの情報を海外向けに発信したり、海外のバンドの情報を国内向けに発信したりしています。

00cross00

基本的に、YouTubeやmyspace、SoundCloudから情報を集めていて、以前はmixiのコミュニティを活用していたこともありました。

ーメディアの運営を通じて、生活に変化はありましたか?

新しい繋がりが増えましたね。日本語でも英語でも読めるように、両方の言葉でライブレポートを書いていたら、オーストラリア在住の方からコメントがあって、連絡を取り合うようになりました。

他には、海外のバンドから、「日本でツアーしたいので、協力してほしい」という話がくるようになったんです。知名度を上げるための宣伝とか、日本語でツイートするための翻訳とか、色々やりましたね。

海外のバンドは、英語圏ではない日本に対してハードルが高いと感じているみたいで。アジアツアーといっても、日本以外の国で行なわれることがよくあるんですよ。

ー10代からコンスタントに活動されていますが、今後について思い描いていることはありますか?

若い世代の居場所作りがしたいですね。そのアクセス手段として、音楽をうまく機能させられないか、と考えています。

僕自身、17~18歳の頃は地元の静岡のライブハウスに入り浸っていました。2011年にFACTというバンドが国内ツアーをして、その時初めて、YouTubeで聴いていたバンドを生で観たんです。目の前で観ると全然違うな、すげーなと思って。そういう音楽体験を大事にしていきたいですね。

さらにいうと、音楽の価値をもっと高めたいと思っています。今は、音楽が商品として扱われているように感じていて。たとえばYouTubeだと、1回の再生でいくらとか。

音楽は消費だけじゃなくて、その人の生き方を変えるような力を持っているはずなんです。「あの曲があるから、あのライブにいってたから、今の自分がある」みたいな。音楽をきっかけに結婚した知り合いがいることもあって、なおさらそう思いますね。

邦楽と洋楽の境目がなくなってきている。

ー他に、音楽シーンの変化について感じることはありますか?

邦楽と洋楽の境目がなくなってきていると思います。特に若い子は、CDをあまり買わないから、邦楽や洋楽のコーナーで音楽を選ぶっていう経験をしていない。

だから、「YouTubeで関連動画に出てきた」「Twitterで知り合いがつぶやいてた」っていう流れで音楽を聴くことの方が多いんです。楽曲の良い・悪いをナチュラルに音で判断している。シームレスなんですよね。

今、個人的に注目しているabstracts(アブストラクツ)というバンドがいるんですけど、YouTubeでパッと見たら邦楽か洋楽かわからないんです。海外のバンドに引けを取らないテクニックを持っているところがポイントになっていると思いますね。

すごくおもしろい時代だなと。楽曲の良し悪しに重きが置かれるとなると、たくさんの人の耳が肥えてくる。そう考えると、今後は音楽をディグリまくる人たちの影響力が強くなる気がしていますね。

インフルエンサーじゃないですけど、シームレスな環境というだけに、音楽を深く掘り下げた人が発信する情報には説得力があると思うんです。

プレイリストから、とんでもない曲に出会う。

ーこれまでで、一番ハマったバンドは?

よく聴いていたのは、Emarosa(エマロサ)ですね。アメリカのポスト・ハードコアバンドなんですけど、ボーカルがR&Bやソウル寄りの哀愁のある歌い方をするので、秋になると聴きたくなるんです。中でも、「A Toast To The Future Kids」っていう曲が好きで、18歳の頃から聴いてます。

ーちなみに、音楽サブスクリプションサービスは使われてますか?

Spotifyを使っています。「なんかおもしろいバンドいないかな」と思った時に、Spotifyで色々な方のプレイリストを聴いていますね。好きなバンドを調べて、ランダムにプレイリストを再生する。そうすると、とんでもない曲に偶然出会うことがあるんです。

最近では、DJ OKAWARIさんのプレイリストがめちゃくちゃいいなと思いました。あまり接点がないジャンルの曲も入っているんですけど、聴きやすくて気に入っています。調べてみたら、DJ OKAWARIさんは僕と同じ静岡出身みたいで、勝手なシンパシーを感じました。(笑)

プレイリストを通して音楽を掘っていると、「きっかけさえあれば、どんなジャンルでも入りやすいんじゃないか」そんなふうに感じますね。

SNSで記事をシェア

SNSフォローで
最新カルチャー情報をゲット!

TumblrやSNSを通して、インディーズバンドについての情報を発信中。
閉じる