文: Kou Ishimaru 編:Kou Ishimaru
2025年5月、福岡で結成された大学生4人組バンド・Duqcy。"ネオアシッドジャズ"というコンセプトを掲げる彼らは、イギリスのアシッドジャズバンドの代表格・Jamiroquai(ジャミロクワイ)からの影響を受けて結成された。アシッドジャズのみならず、ファンクやロックといった音楽をポップス的な感性で再解釈する――そんな野心を胸に集まった4人は、結成からわずか7ヶ月で1st EP『Trailer Gauche』を完成させた。
全4曲入りの本作は、ソングライターである林田泥リ(Gt. / Vo.)の脳内で膨らんだアイデアが結実したものだ。同時に、メンバーそれぞれの演奏力や音楽的な好奇心、そして林田のアイデアを尊重したいという献身性の賜物でもある。
完成度の高い作品を生み出した彼らだが、ライブ活動に関してはまだ手探りの状態だ。現体制では一度もライブを行っておらず、取材時には遠征地でのライブや音楽サーキットフェス出演への意欲が初々しく語られた。
今回はそんなDuqcyに、結成の経緯や1st EPの制作について、そして今後の展望を伺った。
ーまず始めに、音楽の原体験について教えてください。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
車の中でEGO-WRAPPIN'、LOVE PSYCHEDELICOとかが流れているような家庭で。そこから昭和歌謡やジャズ、ファンク、フュージョンみたいなものが根付いた音楽に触れてきました。今のギターのフレーズもそのあたりに影響を受けていると思います。
iso(Ba.):
(幼少期に)車の中でよく流れていたTHE YELLOW MONKEYが好きでした。高校受験の時期は、勉強のためにスマホを触らないようにしていて、その頃に使い始めたiPodで『ミュージックライン』とか『SCHOOL OF LOCK!』といったラジオ番組を聴くなかでバンドに出会ったんです。それから高校では軽音楽部に入って楽器を始めたんですが、KroiやLUCKY TAPESだったりをよく聴くようになったのが、いまのバンドの音楽性にも繋がるところかなと思います。
Takumi(Key. / Syn.):
藤井フミヤと嵐を親が垂れ流していて、それを聴いてた感じです。それと、ピアノを習っていたのでそこでクラシックを聴いたりとか。高校に入ってからはバンドを始めて、作曲にも興味があったのでいろんな曲に触れるようになりましたね。当時一番よく聴いていた米津玄師は今でも好きなアーティストです。
Rintaro(Dr.):
父親がDJをしていたので、物心つく前からヒップホップやR&Bが身近にあったみたいで。中学生のときに、King Gnuに出会ったんですけど、ドラマーの勢喜遊さんがニュージャックスウィングっていうR&Bのジャンルがお好きということを知ってから、そういう音楽も聴くようになって。高校に入ってからはD'Angelo(ディアンジェロ)とかErykah Badu(エリカ・バドゥ)とか、ネオソウルのアーティストを聴いていて今に至ります。ー皆さんが出会ったのは大学生になってからですかね。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
そうですね。それまで僕は個人でずっと音楽を作っていたんですけど、一人でやってると手癖が出てしまって新しい曲が作れなくなるのでバンドをやりたくなったんです。それで、2025年の3月くらいに私が大学のキャンパスを移動したときに新しい土地でバンドを始めようと考えて。
iso(Ba.):
Takumiは、僕がもともと同じ高校の部活で一緒にバンドをやっていたという繋がりがあって誘ったんです。
林田泥リ(Gt. / Vo.):
いろんな人に聴いてもらえるようなポップスの要素もバンドに欲しいよね、と話していたのでバックグラウンドにポップスがあるTakumiが適任で。正規のドラマーはしばらくいなかったんですけど、2025年の11月にRintaroと出会って、セッションを経てから正式に加入してもらいました。ー4人が揃ったのは最近なんですね。“ネオアシッドジャズ”というコンセプトを掲げて活動されていますが、バンドを組む際にリファレンスに挙がったアーティストはいましたか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
やっぱりJamiroquaiですね。ーJamiroquaiのどういう部分に魅力を感じたのでしょうか?

林田泥リ(Gt. / Vo.):
ダンサブルな音楽でありながら、強烈なバックグラウンドとかグルーヴを感じるところですね。ニッチなところもありつつ聴きやすさも両立できている部分になるのかなぁと。ーDuqcyというバンド名の由来も気になりました。バンドのプロフィールには、『男子児童が発する“デュクシ”という言葉に由来して「遊び心を忘れない」という想いを込めている』と書かれていますね。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
そうですね(笑)。でもこれは後付けでもあって…。はじめてスタジオに入ってセッションしたときに「バンド名決めなきゃね」っていう話にはなったんですけど全然決まらなくて。どうするかうやむやにしたままスタジオを出て。で、帰りの電車で切符を改札に入れるときに僕が「デュクシ!」って言って、「あ、これか」と閃いた感じです(笑)。
ーでは、普段の制作方法についても教えてください。曲作りはどうやって進めるんですか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
音のほうから積み上げていってますね。弾き語りで歌を歌いながら、とかではなくてトラックから作っていく感じです。ーデモ音源をもとに、他のメンバーにそれぞれのパートを考えてもらうこともあるんでしょうか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
そうですね。バンドのLINEグループにデモをポンと送って、聴いてもらいつつ、ベース、ドラムをメンバー個人が考えて、それぞれに入れてもらってアレンジしていく形になります。今回のEPで言うと、4曲目の「ERROR」は、ベースもドラムも僕の手持ちのデモ音源とはテクスチャーもフレーズも全然違っています。ー心強いですね。isoさん、Rintaroさんはどういったことを意識してフレーズを考えているんですか。

iso(Ba.):
EPに関して言うと、「ERROR」はサビのパートからスラップが入るんですけど、基本的には4コードのループなので、ループ以外にも敢えて指弾きのオカズのフレーズを入れたり2曲目の「Kalmia」はフレーズの場所によってはオクターバーを入れてみたりとかですね。宅録なので林田の家で二人で作業するんですけど、そのときに「こういう音色はどうだろう?」って試しにコーラスを入れてみたり、ファズを入れてみたりして。僕がいろんなエフェクターのプラグインを持っているので実験的なことをしたりもしますし、林田もベースが弾けるのでディスカッションしながらフレーズを考えています。
Rintaro(Dr.):
デモ音源で打ち込まれているドラムのフレーズが、良い意味でドラマーにはないアイデアをくれるものになっているんですよ。なので、そういうところは活かしてレコーディングするときの譜面には残しつつ、ライブでやることも想定しながらグルーヴが出せるフレーズになるように削ったり、音数が欲しいところは付け足したりしていて。自分の中でいくつか案が出てきたときは、候補を林田に提案してみたりもして、その中から(林田が)「いいな」と思ったものを自由に使ってもらいました。ーキーボードとシンセに関してはどうでしょう。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
キーボードとシンセは基本的には原作に忠実にやってもらいましたね。特に僕がずっと鍵盤楽器を操っていたっていうこともあって、こだわりが前面に出てしまうところではあるので。「このとおり弾いて」っていう感じでした。
Takumi(Key. / Syn.):
自分がアシッドジャズに関しての深い知識とか、雰囲気がまだあんまり掴めていなくて、泥リの出す雰囲気に完全に同調しきれない部分があるのは制作ですごく悩んだところだったんです。
ー歌詞やメロディは林田さんが考えられているとのことですが、どういったときにアイデアが浮かびますか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
歌詞に関しては人間観察からインスピレーションを受けています。1stシングルの「Room202」がわかりやすいと思うんですけど、東京・渋谷のMIYASHITA PARKで一日中ボーッと人を眺めていたときがあって。ナンパしていたり、ナンパ待ちしていたりする若い人たちがたくさんいるのを見ながら、同時に心の寂しさも垣間見えるような感覚を歌詞に落とし込んだり。そこにいた若い男女のシチュエーションを自分に落とし込んだときに、「(もし自分だったら)どう感じるのかな」っていうのを想像したりして歌詞を書いている次第です。福岡にもいろんなディープなスポットがあってそこで人間観察したりもしています。ーなるほど。サンプリングのような仕掛けがある曲もありますよね。「Kalmia」で登場する英文のセリフのサンプリングの内容も気になりました。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
ちゃんとは覚えていないんですけど《Welcome to the Virtual Insanity》みたいなことを言っていた気がします。“仮想現実へようこそ”みたいな感じで(笑)。このバンドの方向性を「アシッドジャズでいこう」って決めてすぐに作った曲なので、Jamiroquaiの代表曲「Virtual Insanity」から影響を受けていて、Jamiroquaiの遺伝子を受け継ぐためにもそういう要素を入れたくて、このサンプルを用意したんだと思います。ー「Vague」はボーカルチョップが入っていますね。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
かなり刻んでピッチも変えていじりまくったようなものなので、素材の原型はないかもしれないですね。楽曲の雰囲気に合うようにチョップを作りました。ーちなみに1stシングル「Room202」も冒頭でビットクラッシュのようなエフェクトがトラック全体にかかっていたのも印象的でした。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
ずっと頭の中にあったアイデアを久しぶりに「Room202」では形にできたんです。ビットクラッシュで鍵盤とドラムをかなり歪ませた状態から、パーンと何かアクションがあってグルーヴィな音が流れるという構想でした。ー『Trailer Gauche』というEPのタイトルに込めた想いや意味についてもお伺いしたいです。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
Trailerは「トラック」とか「トレーラー」のことで、Gaucheは「不器用な」っていう意味があって。フランス語が語源で本来の意味では「左手の」っていう意味なんです。ジャケットには右腕がないダビデ像がのっているんですけど、ミロのヴィーナスでよく言われているように体が欠損しているからこそ想像の余地があってそれに伴う美しさがある、と。で、現代社会だったら合理関数(人間や表現を“計算可能なもの”として扱う発想)とか効率を重視しすぎて、完璧なものを求めてしまう風潮にあると思っていて。その行為自体は右腕のないダビデ像に対して実物の人間の右腕をつけているようなものだな、というふうに思ったんです。そこから、まずジャケットのイメージを作りきった後に、それならタイトルも「『Trailer Gauche』だろ」と思って名前をつけました。“不完全なものを愛する、不完全な音源”っていうのを体現したようなタイトルですね。
ー「Mad Blue」の歌詞にも《Trailer Gauche》というワードが出てきていますよね。これはどのタイミングに作ったんでしょうか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
「Mad Blue」は、EPのコンセプトが決まった後、1曲目に持ってこようってずっと考えていたんです。なのでこのコンセプトが決まってから、歌詞に落とし込んだものになります。ーそんな今作はご自身にとって、もしくはバンドにとってどんな作品になったと感じていますか。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
今までやってなかったことをやれた作品ですかね。自分の頼れる人にベースを弾いてもらう、ドラムを叩いてもらう、キーボードも含めていろんな人を巻き込んで総力戦でものを作ることに初めてチャレンジして作りきれたものだなという印象です。
iso(Ba.):
デモから変わった部分がいろいろあったり、レコーディングの大変さも経験したりして。はじめてのEPでもありつつ、実験的な部分もあって、幅のある作品になったと僕は感じています。聴いていて飽きなくて楽しい、すごくワクワクできる作品になったんじゃないかなぁと。
Rintaro(Dr.):
自分が加入してからDuqcyの曲をめちゃくちゃ聴いていて。なので、好きなものを自分で作れる楽しさとか、そのモチベーションの高さを維持しながら制作できた作品でした。
Takumi(Key. / Syn.):
どちらかといえば作曲者の泥リちゃんのアイデアに寄った作品になったなっていうのが自分の思っているところですね。「泥リちゃんってすげぇな」って感じながら作った作品でした。ーとても良いご関係に見えます。今後バンドでやりたいことがあれば聞かせてほしいです。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
私個人としては東京でもライブがしてみたいですね。あと、制作でいうとアルバムを作りたいなとも漠然と考えていて。今回のEPで得た幅をさらに広げて面白いものを作っていきたいなとも思っています。
iso(Ba.):
まずは月に何本かライブをしたいっていうのがあります。その後のステップでいうと<TOKYO CALLING>、福岡でいえば<TENJIN ONTAQ>のようなサーキットフェスに出てみたいなと。ライブ力を養いつつ、大型のフェスのオーディションステージとかにも積極的に挑戦していきたいですね。アルバムのリリースツアーとかもやってみたいです。
Rintaro(Dr.):
ブラックミュージックの中でもいろんなジャンルを聴いてきたので、そういったところから制作面でのアプローチを泥リに投げかけてみたいです。あと、ライブでは多分同期音源にも対応していくことになると思うんですけど、そこで失われるグルーヴ感もあると思うので、ドラムのサンプラーパッドを使ってみたりして、なるべく生に近い温度感を届けられるようなライブを作れたらいいなと思っています。
Takumi(Key. / Syn.):
個人的には早くライブして気持ちよくなりてぇなって思います(笑)。ー楽しみですね。では最後にバンドとしての野望があれば教えてください。

林田泥リ(Gt. / Vo.):
一人一人がどこからそこからいろんなものを持ってきてまだ誰も聴いたことのないものを作るっていうことが、一貫してやりたいことですね。
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