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文: 黒田隆太朗 写:木村篤史
時代の空気と向き合いながら、最後には明るいバイブスを投げかける。これは他でもない、君に語りかける音楽だ。
YAJICO GIRLの四方颯人は、今回のインタビューで次のように語っている。「自分の考えや価値観とは違うものを受け入れることが重要になっている時代」だと。そして、今こそ必要なのは「ファンク&ソウル」なのだと。SNSでの殺伐とした空気は、きっと誰もが感じているだろう。ニュースでは海の向こうの困難な現実と闘争が伝えられる。コロナ禍の社会の中で、誰もが疲弊している時代である。彼は開放感のある音に未来への期待と、今交わしたい言葉を託して歌を歌う。
2年前にリリースされた『インドア』は、『YAJICO GIRL』にとって変化作と言える作品だった。それまでベースとしていたギターロックを封印し、フランク・オーシャンやチャンス・ザ・ラッパーと言った世界のポップカルチャーとリンクする音楽性を獲得。内省的なリリックには、同時に音楽家としての覚悟が滲んでいたように思う。
新作の『アウトドア』は前作で獲得した音楽性を引き継ぎながら、再びバンドとしてのアイデンティティ強く意識した作品になっている。『アウトドア』のリファレンスとなったプレイリスト「Essential songs for OUTDOOR」を紐解きながら、四方颯人の胸中に迫る。
ー最初のシングル「街の中で」がリリースされたのが去年の2月でした。その時点でこのアルバムの構成はあったんでしょうか。
『アウトドア』っていうタイトルはぼんやりと決めていて、それに合ったような開けた曲を作りたいなっていうことは、『インドア』を作り終えた頃からありました。
ー開けた作品を作りたいという思惑があった中、昨年コロナ禍となり、社会的にはむしろ閉塞感に包まれたムードが生まれましたよね。つまり、四方さんのモードと社会の雰囲気が乖離していったところがあると思いますが、そこはどう折り合いをつけていきましたか。
“折り合いをつけた”っていう言い方がまさしくという感じです。元々はライブもどんどんやっていくつもりだったし、それに向けてある程度ライブで映えるような曲作りをしていくつもりだったんですけど、ライブの数も減るし、メリハリのある曲をずっと家の中で聴くのは違うなって感じになって。そこで当初持っていた「アウトドア」というイメージと、自分達の環境と、今の時代性の3つのバランスを考えて作っていきました。
ーでは、バランスを考えた時に一番重要視したこと、もしくはこの時代の中で不可欠な要素だと思ったことはなんですか。
不可欠なこと…“分断”が気になりましたね。
ー昨年はみんなが家にいるようになって、フィジカルなコミュニケーションが希薄になったし、SNSでは殺伐とした雰囲気が蔓延し、例えばBLM(Black Lives Matter)の問題にも直面しましたよね。
今言われた3つはまさに今回の制作と完全にシンクロしてて。やっぱ他者と繋がることだったり、自分の考えや価値観とは違うものを受け入れることがかなり重要になる時代になっていると思います。で、それなら僕らでも歌えるなっていうのがありました。
ー“それなら歌える”というのは?
やっぱりバンドミュージックって、個人個人の関係性の音楽だと思うんです。『インドア』の時にバンドミュージックらしくない音楽を作ったことで、改めて“バンドミュージックってなんなんだろう?”って考え直すきっかけを持てて。人と会えない状況が続いた中で、人との繋がりだったり、価値観が合わなかったとしても一緒にやっていく社会の縮図みたいなものを、僕はバンドに感じたんですよね。
ーなるほど。
僕らも必ずしも同じような意見を持っていたり、価値観が一緒だったりするわけじゃないけど、どっかで折り合いをつけたり、気が合う部分を見つけたりしながら一緒にバンドをやっている。その共同体が大阪から東京に来るっていうことで、僕らは環境を変えるタイミングでもあって。やりたかった音楽性とバンドの状態、そして今自分が書けるテーマが一致していった感じですね。
ーやっぱり人と人との摩擦の中でこそ、苦しみも喜びもあるっていうことだと思いますし、それが今の分断の世の中とも重なり、共存みたいなことがテーマになっていったのかなと思いました。
そうですね。そのコンセプトで作ったらサウンドも広がって聴こえるんじゃないかなっていう狙いもありました。それこそ音に関して言えば、今回はメンバーのやりたいことや、アレンジャーの方が言ってることを聞いて、一緒に作り上げていく過程を楽しみながら作っていきました。僕だけでは出来なかったアルバムになった実感が強いです。
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