naomi paris tokyoが描く近くて遠い東京。コロナ禍で生み出されたソロ作品を紐解く

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文: 黒田 隆太朗  写:Yosuke Demukai 

jan and naomiのメンバーとして活動し、昨年12月からはnaomi paris tokyo名義のソロ活動を行なっているnaomi。彼の創作の原点を辿りながらこれからの活動について伺った。

天から降りてくる子守唄のような、神秘的な優しさを感じる。naomiの声は残酷なまでに美しく、痛いくらいに綺麗だ。jan and naomiとして活動してきた彼が、「naomi paris tokyo」としてソロ活動を始めたのが昨年の12月。そこで初のEP『21SS』をリリースし、2021年7月には2枚目のEP『21FW』を発表。作詞作曲はもちろん、アレンジやミックスまでもひとりで行うなど、コロナ禍で積極的に新たなクリエイティブを試みている。

今作は写真家・岩本幸一郎の写真展、『Self Harm』のために制作した楽曲を中心に構成。そこに「Tokyo pt2」と「Vase」の2曲を追加して作られたものである。前者はリリック、サウンド共に2020年以降のnaomiの心境が如実に反映されており、寂寞感と祝祭感が混在する不思議な音楽になっている。また、後者は彼らしい優雅で静謐な美を湛えた名曲である。ソロ始動の経緯から新作『21FW』の制作背景、そして彼の創作の原点を聞きながら、これからの活動について伺った。

ソロワーク始動の動機

ー『21FW』の制作にあたり、何かビジョンやイメージはありましたか。

昨年末に初めてソロ名義でEP(『21SS』)を出して、今回が2作目の作品になるんですけど。引き続き“naomi paris tokyoとはこういった感じですよ”っていう提示をしている感じなので、特に深くコンセプトを立てているわけではなく、自然体で制作していきました。コロナ禍に家にいて、自然と出てくる楽曲を集めたようなEPです。

ー昨年ソロ名義での活動を始めた理由はなんですか?

2020年の5月にjan and naomiでアルバムを2枚同時に出した時に、naomi版(『YES』)とjan版(『NEUTRINO』)で完璧にプロダクションを分けて作ったんですよね。言葉ではなんとも説明しづらいんですけど、janの曲とnaomiの曲を織り交ぜてひとつの作品にするのは難しいんじゃないかと思い、去年のアルバムに関してはふたつの作品に分けました。で、次はコンセプトなりビジョンを掲げて、ふたりでそこに向かっていくようなつくり方をしようという話もしているんですけど、そうなった時に、自分本位な楽曲のアウトプットはソロで発表するのがいいのかなと思っていました。

ーそれがソロを始める動機になったと。

複数で楽曲を制作することは、それがバンドでもあるし、それによって思いもしなかった音楽に行き着くのが面白さでもあるんだけど、同時に何も作為的なものがない、自分の中から自然に生み出される音楽のアウトプットは、ソロで持っておきたいってことも思っていたんですね。ただ、こんなに早くやるとは思ってなかったです。昨年コロナ禍になったことで、ひとりで完結するように作品を作って発表するしか音楽の活動ができないのでないかと思い、予定より早くソロを始めたという感じです。

ーコロナ禍の社会の空気は、どれくらい音楽に影響されたと思いますか?

かなり大きいと思います。リズムやコード、和音といった楽曲の主軸となる部分は本質的に変わらないところなので、あんまり社会の状況は関係ないと思うんです。でも、一番外側にある歌詞だとか、楽曲の雰囲気にはかなり影響していると思います。音作りの最後の仕上げで、キラッとさせるよりもちょっと濁したり、歌詞を断定するよりも曖昧にしていたり、そういうところで今の気分やモードがありますね。

ーなるほど。

なのでリバーブが深くかかった感じや、ドラムを奥に置くことは意識していました。あと、昨年出した『21SS』の「Tokyo」で言えば、アレンジで音数を沢山入れたいとは思っていたんですけど、それによって派手にならないように気をつけました。ギターの音を大きくするとアグレッシブ性が強まったりするので、なるべく下げたり、片方に振ったりすることで賑やかな感じにならないように心がけました。それがどこまでコロナ禍の自分のメンタルと結びついてるのかはわからないけど、そういうサウンドにしようという気持ちはありました。

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jan and naomiのnaomiのソロ名義。中性的で柔らかな声、繊細且つ洗練されたメロディアスなサウンドアーティスト。
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