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文: 黒田隆太朗 写:Ryutaro Izaki
エレガントな音像から溢れ出す4人のソウル、パッション、ロマン…そしてメランコリー。だからこの音楽は美しい。これはあなたの心に訴えかける音楽だ。2018年にMATTON、inui、TiMT、 msd.の4人で結成されたPEARL CENTERが、初のアルバム『Orb』をリリースした。
潤んだ瞳で星を見つめるロマンティックなオープニング「Orion」、光のカーテンに包まれて踊るようなニューウェイブ「GAMES」、余白たっぷりの理知的なトラックにうっとりする「2 hearts」、夏の景色に感じる瞬間と永遠を綴ったミッドナンバー「Flutter」、レイドバックしたリズムと淡い音像に惹かれる「Hula Hoop」、そして清らかな音色に未来を思うシンセポップ「NEVER TOO LATE」…中盤から後半にかけて続く、MATTONとinuiのソロボーカルにも、息を飲むような美しさがある。『Orb』はどこを切り取ってもブリリアントなアルバムだ。
EP『Humor』のリリースから1年半。自身らのルーツにある80’sや90’sの音を、現代のサウンドでアップデートしようという方向性はそのままに、より多面的な発展を遂げた作品と言えるだろう。UK/USの“モダンポップ”を研究して作られたという本作には、現在という地点から、過去と未来の両方へと手を伸ばそうという意思を感じる。4人にZOOMを繋ぎ、新作に込めた思いをざっくばらんに語ってもらった。
ー昨年12月に「Orion」がリリースされましたが、その頃には『Orb』の制作は始まっていたんですか?
inui:
いや、「Orion」の頃はアルバムのことは考えていなかったです。MATTON:
アルバムを作ろうってなったのは、年明けてからですね。ーそこで共有したテーマや、作品の方向性について思い描いていたものはありますか?
MATTON:
『Humor』を出した頃は“これからライブで自分たちを売っていこう”って時だったので、ライブをイメージしてもらえるような音作りを意識していたんですけど…そういう世にはならなかったから。『Orb』はそれよりもリスニングできるものというか、心地良さに重きを置いた作品になった気はします。TiMT:
そこを意識しなくなったのは、ライブでの曲の化けさせ方をわかってきたのも、ひとつ理由としてありますね。音を抜いてもライブでやった時に補完されることを実感したので、ライブでのセットを想定できるようになったのも大きいです。MATTON:
それが既発曲のライブアレンジにもかなり反映されたよね。ライブと離した音源にすればするほど、ライブバージョンにした時のドキドキが大きくなることがわかったから、『Orb』ではほとんどの曲をすっきりさせる方にいったかなと思います。ー確かにそうした印象は受けました。
TiMT:
なので「Orion」まではゴリゴリと音を足していってたんですけど、「Alright」くらいからはちょっと引いていくっていう風にシフトしています。MATTON:
あと、『Humor』の時はJ-POPを意識してたんですよね。自分たちにDNAレベルで流れているJ-POPのフィーリングを入れることを考えていたけど、今作においてはそれが全くない。ーそれがなくなった代わりに、何が念頭にあったと思いますか?
MATTON:
現行の音楽と自分たちのルーツをミックスすること。そして、そこに自分たちのエモーショナルな部分をどうバランス良くブレンドをするかってことですね。inui:
「Orion」はTiMTがモダンポップスをどんどん作ろうっていうモードになった走りじゃない?MATTON:
『Humor』期を抜けた作品だね。歌謡やJ-POPではない、今の音を自分たちの色でやってみたい。そして、それを日本語の歌で聴かせたいというところから制作していった曲でした。TiMT:
トラック先行で作った曲で、タイミングとしては「さよならなら聞きたくないよ」の次ぐらいにできた曲かな。US/UKのモダンポップスの素晴らしさ、綿密さみたいなところに惹かれていたので、トラックメイクとしてそこの研究をしていた時に作った曲です。ーPEARL CENTERの4人にとって、モダンなポップと聞いてイメージするものは?
inui:
トロイ・シヴァン(Troye Sivan)とか最近のテイラー・スウィフト(Taylor Swift)の曲は、メンバーと共有していました。あとはジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)のアルバムもサウンド的に影響を受けたと思います。TiMT:
ザ・ウィークエンド(The Weekend)もデカいよね。inui:
だから“信じられないぐらい売れてるカッコいい音楽”が、PEARL CENTERにおいてのモダンポップですね。ーなるほど。
inui:
TiMTはコナン・グレイ(Conan Grey)も好きだよね。TiMT:
コナン・グレイは好きだね。今回のアルバムで直接的にリファレンスになった曲はない気がするけど、凄く聴いてた。『Orb』ではプロデューサー的な聴き方をし始めた時期なので、プロデューサー陣がガッツリ入ってるMaroon5の『Red Pill Blues』とか、トロイ・シヴァンのプロデューサーでもあるオスカー・ホルター(Oscar Holter)の諸作を聴いてました。ープロデューサー的な聴き方を意識した時に、注意していたことは?
TiMT:
まずはトラック作りと、そのトラックにおけるボーカルの在り方です。日本は割とボーカルはボーカルとして存在させていると思うんですけど、USやUKのモダンポップスって、ボーカルの扱われ方が凄く多彩なんですよ。一個のテイクを複数のトラックに分けて処理することで音響的に聴かせたり、シンセを入れずにドラムとベースとボーカルだけにすることで、曲のラストをメインボーカルだけで成り立たせたり、細かく聴いていくといろんな工夫があることに気づきます。そういう楽曲の組み立て方を勉強し始めたことが、今作では大きかったです。ー作曲家としても、ふたりの声を活かすことはひとつ重要なテーマだったと。
TiMT:
そうですね。声を楽器的に扱うことで得られるものって、他のどういう楽器にも替えがたい効果があると思います。inuiくんも積極的にガヤみたいなものを入れてくれて、たとえば「doubt」ではよく聴くとinuiくんが後ろでもじゃもじゃ言っているんですけど、あれがあるとないとでは楽曲の奥行きが変わってくるんですよね。こういうことって日本ではそんなにチャレンジしているバンドが少ないんじゃないかなと思います。TAG;
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