文: 黒田 隆太朗
素晴らしい未来を予感させる。シーンの中でも、恐らく異彩を放つ存在になるだろう。それどころか、アジアの音楽が急速に世界へと進出している今、その気運に日本から乗っていける音楽家かもしれない。それが本稿で紹介するNazというソウル・シンガーである。
きっかけは昨年リリースされた冨田ラボのアルバム、『M-P-C "Mentality, Physicality, Computer"』だった。
長岡亮介や七尾旅人、Ryohuといった、練達のミュージシャン達が多数参加した極上のジャズ・ソウルアルバムに、まだ自身の音源を1曲も発表していない無名の彼女が抜擢された。冨田にフックアップされることで、Nazは表舞台へと飛び出す最初のきっかけを得たのである。零れてくる陽の光を感じながら森林を進む彼女の姿は、アンニュイな歌声とも相まって神秘的だ。
そのNazが7月24日に初めて個人名義での作品、『JUQCY』を発表する。冨田やWONKの江﨑文武によるプロデュースで生まれたそれは、Jorja Smithら現行のソウル・シーンとも共振する新しい歌だ。沖縄在住の19歳、輝かしい原石にどこよりも速くメールでのインタヴューを試みた。
ーNazさんがどのような音楽に触れて育ってきたのかを教えていただけますか。
幼い頃は、両親の好きな音楽と映画がいつもそばにありました。その中でも、Bjorkの『Volumen』が大好きで人生の中で一番多く観た作品です。 映画では、『プリシラ』(監督:ステファン・エリオット)のダンスシーンと、『少林サッカー』(監督:チャウ・シンチー)で、ムイがカンフーで饅頭を作るシーンをずっと真似していました。
ーBjörkの音楽のどういうところを好きになりましたか。
歌声が凄く好きです。Björkのヴォーカルは自分が一番気持ちいいところを、気持ちいい時に思いっきり歌ってるように感じて、私はそれが凄く心地いいです。The Sugarcubes(Björkが所属していたバンド)でもそれは凄く感じました。私もオリジナルでそういった事ができていけたらいいです。
ー海の向こうのシンガーやアーティストに感銘を受け、そちらが肌に馴染んだのはどういう理由からでしょうか。
私がお腹にいる時から、両親がずっと聴かせてくれていたり、私が赤ちゃんで夜泣きしてる時は、Stingを聴かせてくれていたそうです。そのお陰で、そういった音楽が私の中で、安心する存在になっているのだと感じています。言葉がまだわからない頃から、自然に音楽を楽しめる環境にあったので、今、私の中での音楽がこんなに大きいものになっているのだと思います。
ーNazさんの歌や音からはブラック・ミュージックに通ずるものを感じますが、そうした音楽でよく聴かれるものはありますか。
ブラック・ミュージック自体は母親があまり聴いていなくて、家庭ではUKロックが多かったです。『バーレスク』(監督:スティーヴ・アンティン)を見たのがきっかけで、自分で音楽を掘り始めたのはその時期だったと思います。Cristina Aguilera、Tom Jones、Destiny's Childは凄く聴いています。EminemやThe Black Eyed Peaseは小さい頃から好きで、この時期からHip Hopもよく聴くようになりました。私はWill.I.amが好きなので、彼が好きだったというのを聞いてA Tribe Called Questもよく聴いています。
ールーツの面とは別に、ここ2~3年でよく聴いていた音楽があれば教えてください。
1番好きなのはDie Antwoordです。あと、最近はレトロフューチャーっぽいものや、テクノ、少しユーモアを感じるようなサウンドに惹かれています。アーティストでいうとKraftwerk、Moloko、Fat Boy Slim、Duft Punkが好きです。『トレインスポッティング』(監督:ダニー・ ボイル)を観てから、The Prodigy、Run DMC、Iggy Popもよく聴くようになりました。
ー音楽以外のもので、ご自身のアイデンティティ形成に深く影響を与えたようなものがあれば教えてください。
映画です。音楽と一緒に、いつも映画は私の生活のなかにありました。
ーフェイバリットの3作品を挙げるとしたら何になりますか?
1番大好きなのは『トゥルー・ロマンス』(監督:トニー・スコット)。ハッピーエンドだから『月の輝く夜に』(監督:ノーマン・ジュイソン)。チャッキーシリーズで、1番好きな『チャッキーの種』(監督:ドン・マンシーニ)です。
RELATED PLAYLIST
記事関連プレイリスト
POPULAR
人気記事