クラシックをルーツに、ポップスを再構築するKitri。姉妹ピアノ連弾ユニットの音楽背景に迫る

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文: 黒田 隆太朗  写:井出眞諭 

MonaとHinaによる姉妹連弾ユニットKitri。ふたりが5曲ずつセレクトした、「影響を受けた楽曲」プレイリストを紐解きながら、彼女達のルーツを辿るインタヴューを行った。クラシックとポップスが混在する彼女達の音楽背景と、7月にリリースした『Secondo』に込めた想いに迫る。

短調がもたらす悲しみの旋律には人を惹きつける魔力がある。大橋トリオのプロデュースで、今年の1月にメジャーデビューを果たした姉妹連弾ユニット・Kitri。彼女達が作る楽曲も、そうした人の孤独にそっと触れるような旋律を持つ音楽である。今回のインタヴューでは、MonaとHinaがそれぞれ5曲ずつ選んだKitriのルーツとなるプレイリストを作ってもらい、クラシックを出発点にポップスを作るようになった経緯から、今のKitriの音楽観までをまるっと語ってもらった。神秘の森に連れていかれるような空想的なポップス、その音楽背景を楽しんでもらいたい。

闇や悲しみを感じる短調の魅力

ー今日はおふたりのルーツからプレイリストを作っていただいたので、それに紐づけてインタヴューさせていただければと思います。

Mona&Hina:

よろしくお願いいたします。

ーSPEEDのようなJ-POPも入っていますね。

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Mona:

SPEEDの「My Graduation」は幼い時にテレビから聴こえてきて知った曲なんですけど、最初は穏やかに始まって、サビでガツンとくる。なんでこんなに悲しい気持ちにさせられるんだろうって、J-POPの歌のよさを実感した曲です。転調、メロディの劇的さ、コードがすべて合わさって人の心に歌が響くということを体験をした曲で、凄く影響を受けています。

ー「悲しい気持ちにさせられる」っていうのは、Kitriの曲にもこのプレイリストにも共通している感覚ですよね。短調が多いのかなって思います。

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Hina:

そうですね(笑)。
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Mona:

ご指摘の通りです(笑)。曲の中の闇を短調に感じて、「なんで明るい曲を書くこともできるのに、こう暗くいくんだ!」っていう、その魅力に惹かれています。
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Hina:

私は昔は長調のほうが好きだったんですけど、最近は短調も好きになりました。Kitriの曲は転調を繰り返す曲が多くて、短調から長調、長調から短調へと変わっていくところにグッときます。

ー音楽を聴くことで悲しい気持ちになることを求めていますか?

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Mona:

意識して求めてるってことはないんですけど、悲しい曲こそ聴いた時に素直になれたり、本当の自分と向き合える気がしています。明るいエネルギーを持っていたいとは思うんですけど、悲しい曲に支えられてきたこともあるし、どこか自分の中に孤独みたいなものがあって、悲しい曲調が多くなるのかなって思います。

ープレイリストの中に連弾の曲はありますか?

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Mona:

1曲目のグリーグの「ノルウェー舞曲 op.35-No.1」は連弾のアレンジの曲です。小学生の時に初めて聴いた連弾曲で、ちょっと年上のお姉さん達が舞台で弾いているのを見て虜になってしまいました。ふたりとも全然違うことをしているのに、なんでひとつの音楽になっているんだろう?って思い、凄く衝撃を受けていまだに好きな曲です。

ー連弾の一番の魅力って何だと思いますか。

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Mona:

息を合わせてひとつの音楽を作るところかなと思います。
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Hina:

一台のピアノをふたりで弾いているのに、ひとりで弾いているように聴こえるっていうのが面白いですよね。

ーおふたりが連弾を始めたのはいつ頃ですか?

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Mona:

このユニットが始まったのは2015年ですが、連弾を初めてやったのは私が中学生で、Hinaが小学生の時でした。クラシックの曲を先生にもらって弾くっていう時に初めてやりました。

ーなるほど。プレイリストの話に戻ると、Queenの「Killer Queen」は少し意外でした。

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Hina:

父が好きで昔よく聴いてたみたいで、家にレコードがあるのでそれで私も聴いていました。上手く言葉にできないんですけど、メロディが凄く心地いいなって思います。後から歌詞の意味も知って、「女の人の魅力」を面白い言葉で表現しているところも好きです。ふとした時に口ずさんじゃう曲ですね。

ー複数の鍵盤が重なっている曲ですが、何かシンパシーを感じるところはありますか?

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Hina:

「Killer Queen」(Queen)はコーラスのほうがメインになるようなところがあって、そういうところはKitiriにも通ずるところかなって思います。

ーEric Claptonもお父さんの影響ですか?

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Hina:

「Tears in Heaven」(Eric Clapton)は私が初めてギターを人前で披露した曲です(笑)。父に教わりながら小学生の高学年の時に始めたんですが、発表の機会があってこの曲を弾きながら歌いました。

ーQueenもそうですが、Hinaさんのほうが海外のポップスを聴かれていたんですか?

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Mona:

そうですね。私は子供の頃には通ってきてなくて、Hinaのほうが海外の音楽にアンテナを張っていたと思います。

ーじゃあMonaさんのほうはがっつりクラシックを聴かれてました?

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Mona:

はい。私は聴く時間も練習する時間も長くて、クラシック漬けの日々でしたね。

ープレイリストにはショパンの「ピアノソナタ第2番 変ロ短調 op.35-1」が入っていますね。

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Mona:

ショパンには影響を受けていますね。ただ、その曲は演奏しているイーヴォ・ポゴレリチっていうピアニストの演奏が衝撃で心に残っている1曲です。他のピアニストのショパンの解釈と全然違うというか、奇抜で大胆だからショパン国際ピアノコンクールでもほとんどの審査員に酷評されて、落選しているんです。

ーでも、Monaさんには惹かれるものがある?

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Mona:

個性がきらっと光っているピアニストだと思います。クラシックって譜面に書いてあるものをしっかり読んで、作曲家の意図を正しく演奏するのが理想とされてますけど、こういうアプローチもありなんだなっていう発見をさせてもらった、私にとってびっくりした曲です。

ー歌詞見ていても、Kitiriはどこかレールから外れた挑戦的なものが好きなのかなって思いました。

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Mona:

歴史や伝統に影響を受けてきたことは間違いないので、その伝統や歴史がある音楽の中でKitriがどうやって今までにはなかった表現ができるのかっていうのを考えるのが好きなんですね。そういうところが歌詞にも出ているのかなって思います。
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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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井出眞諭

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Kitri(キトリ)姉のMona (モナ)とHina(ヒナ)によるピアノ連弾ボーカルユニット。 Mona はボーカル、ピアノ低音部(Primo)を担当、Hinaはコーラス、ピアノ高音部(Secondo)を担当、ギター、パーカッション他。 幼い頃よりクラシックピアノを習いMonaは大学で作曲を専攻。 2015年~京都を拠点に音楽活動を開始。2016年ライブで京都を訪れていた大橋トリオの手に自主制作盤が渡り、その音源を聴いた大橋が絶賛。 大橋が手掛ていた、映画「PとJK」(廣木隆一監督、亀梨和也・土屋太鳳主演)の劇伴音楽に、テーマ曲のボーカルとハミングで参加する。 2017年、過去の音源を大橋トリオプロデュースにより再録音して、ユニット名「Kitri」として、パイロット盤「Opus 0」が完成する。 試験的にストリーミング配信をしたところ反響を呼び、自主音源にしてラジオのパワープレイ獲得、出演スタジオ演奏披露などを行う。 2018年 9月 「Slow LIVE '18 in 池上本門寺」フェスのオープニングアクトに出演。 同12月7日 大橋トリオが毎年恒例としている大編成でのスペシャルライブ「ohashiTrio & THE PRETAPORTERS YEAR END PARTY LIVE 2018」で オープニングアクトとして「GOLD FUNK」のピアノ連弾を披露、ライブ本編でもコーラスとして参加。 2019年1月23日、日本コロムビアより、先鋭的なアーティストを輩出してきた BETTER DAYSレーベルのニューカマーとして1st EP「プリモ」でメジャーデビュー。 全国ラジオ局の多くでパワープレイを獲得。O.A.で曲を聞いた多くのユーザーにより、 先行公開したリードトラック「羅針鳥」MVが話題に。同1月「Kitriの音楽会♯1」と題し、大阪、東京、福岡、熊本で 初のワンマンツアーを開催各会各会場ソールドアウトて好評を得る。
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