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文: 黒田 隆太朗 写:木村篤史
昨年12月、Maison book girlがポップな作風が際立つアルバム『海と宇宙の子供たち』をリリースした。21曲を収録した濃密なコンセプト・アルバム、『yume』とはいかにも対照的である。今回は新作で芽生えた変化について、Maison book girlのプロデューサー・サクライケンタと、Maison book girlにそれぞれインタビューを行った。サクライケンタには、「メタ世界から飛び出したイメージがある」という新作と、自身の今後の活動について語ってもらった。
ーメンバーが一様に言っていたのが、『海と宇宙の子供たち』はとっつきやすいアルバムであり、より自分達の存在を知ってもらうきっかっけになる作品になるんじゃないかということです。サクライさんは今作の制作で何を意識していましたか。
そうですね。出来てしまったものはしょうがないんですけど、去年のアルバム(『yume』)はなんでか重たいアルバムになってしまったところがあって。
ーコンセプチュアルな作風で21曲収録、大作と言ってもいいようなアルバムだったと思います。
そうなんですよね。それで今回は裏テーマみたいなものはありつつも、アルバムとしては割とサラッと聴けるようなものがいいかなと思って。街中でイヤホンをしながら、なんとなく聴くこともできるような感触に仕上げたいと思って作りました。
ーテーマというのは?
『SOUP』と『umbla』という2枚のシングルを出しているんですけど、1枚目の『SOUP』を作り始める時から、今回のアルバムの構想が自分の中にあって。「SOUP」は海のイメージ、「umbla」は宇宙のイメージで、その子供達というような感じでアルバムとしてまとめようと思いました。
ー最初のアルバムが『bath room』であるように、いわば密室的な感覚があるところからMaison book girlの歴史は始まっています。キャリアを通して外界へ出て行っているイメージがありますが、そうした感覚はサクライさんの中にはありますか?
抽象的な表現になってしまいますが、前作『yume』までのMaison book girlは、誰かに作られた世界にいるようなイメージが僕にはありました。そういうメタ世界に『yume』までのMaison book girlがあったとしたら、その上の階層に海があり、そのまた上に宇宙があるようなイメージで、そのメタ部分に気付き始めているメンバー達をシングルを追ってアルバムまでで表現したかった。作品を経る毎に外へと移動しているイメージはありましたね。
ーそれはMaison book girlがより広いフィールドへ出ていくことともリンクしていますか?
はい。漠然とですけど、Maison book girlが狭いところからだんだん広いところに行くイメージもありましたね。彼女達自身、いわゆるアイドルのような、言われたことをただやるようなところから抜け出してきているような気はしているので。メンバーの変化や成長に引きずられるように僕の作曲も変わってきています。
ーコショージさんも、「最初の頃はサクライさんの中にMaison book girlがあったのが、今は自分達がMaison book girlになってきている」と言われていて、それは今の話に通ずるところかなと思いました。
そうですね。昔は実力が追いついていなかったところはあったと思うんですけど、今は曲を作る段階で「今のメンバーならこんな歌が歌えるんじゃないか」とか、「もっと歌をフューチャーするような曲の作り方ができるんじゃないか」など、そういうことをかなり意識しています。作曲や作詞の面でも、メンバーの変化を見せていけるような表現方法ができたらと考えています。
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