ペンギンラッシュが歌う、自愛と自由の証明。『皆空色』に込めた想いに迫る

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文: 黒田 隆太朗  写:Yosuke Demukai 

『皆空色』でメジャーデビューを果たしたペンギンラッシュにインタビュー。「『皆空色』と一緒に聴きたい曲」をテーマにセレクトしたプレイリストと共に、新作に込めた想いに迫る

取材を受けてくれた望世と真結には、「『皆空色』と一緒に聴きたい曲」というテーマでプレイリストを作ってもらった。ここでセレクトされたのは、Arcaやコーネリアスをはじめとした聴き手の想像力を刺激するものばかり。「ペンギンラッシュと言えばジャズ」、という先入観を持っている者は、ド頭のディープテクノで面を食らうだろう。だが、それこそが彼女達が望んだ音楽体験であり、いわばふたりが『皆空色』で目指した表現もそこにある。ペンギンラッシュの新作『皆空色』は、リスナーの感受性を揺さぶる音楽である。

「嘘をつかないこと」をルールに創作された本作には、彼女達の自由な音楽的発想と、社会への偽らざる本音が詰まっている。自分達に貼られたレッテルに抗すること、女性であることの誇り、そして純粋に音楽を楽しむ好奇心…ペンギンラッシュが何に抗い、何を愛しているかについてのインタビューとなった。

Corneliusを聴いたら景色が変わる

ー昨年取材させていただいた時は、メンバー4人のルーツをまとめたプレイリストを作っていただきましたが、今回は少しだけ趣向を変えてみました。

インタビュイー画像

望世:

『皆空色』と一緒に聴きたい曲ですね。
M1~5 Selected by 望世、M6~10 Selected By 真結、M11~15 Selected By 黒田

ー今回僭越ながら私がセレクトした楽曲も入れていただきましたが…おふたりがセレクトした楽曲は、敢えて「ジャズ」とは異なる音楽性のものをメインに据えている印象を受けました。

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望世:

そうですね。今までお客さんからの感想だったり、Twitterの反響を見ていると、割と勘違いされているなと思う部分もあって。

ー勘違い?

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望世:

凄くジャズが好きな少女達、みたいな。

ーなるほど(笑)。

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真結:

「若いのにジャズ好きなんだ」とか、「女の子なのにジャズ聴いているんだね」みたいなことを言われることが多いよね。
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望世:

そうそう。
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真結:

ジャズクラブで働いて、ジャズを聴きまくって、それでこういう音楽が生まれてるんですね、みたいな。でも、そんなことないんですよね。
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望世:

私達にはルーツがいっぱいあるし、普段どこで遊んでるかって言ったらクラブだったりして。もちろんジャズは好きなんですけど、そこにフォーカスされ過ぎているかなって思います。自分のSNSで好きな音楽を載せてもあまり反応は来なかったり、ジャジーな音楽性に関して発信したほうが喜ばれることに少し窮屈さを覚えていて。それでテクノを入れたりしていますね。

ー1曲めのWata Igarashi「Pomme」はクールなディープテクノですね。

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望世:

そもそもジャズには歌がないので、私は普段歌ものをあまり聴かなかったんだなって気づいて、ビート・ミュージックがより好きになった気がします。普段曲を作る時にもリズムから作っていくことが多いし、最近は4つ打ちとかを浴びるのが好きです。

ーCampanellaやHEIZEをセレクトされていますが、ペンギンラッシュの新作からも、ヒップホップからの影響も確かにそこはかとなく感じます。

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望世:

トラップを使っている「高鳴り」や韻を踏んでる「月草」ですかね。前回のルーツ・プレイリストにもNo nameを入れたんですけど、私も真結もヒップホップは昔から好きで、高校の頃から聴いていたので割と身近な音楽ですね。

Campanellaは地元も一緒ですね。

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望世:

そうなんです。地元の名古屋が凄いんですよ。中でもキャンピーは一番好きですね。ヒップホップやラップ・ミュージックって、本当に自分のことを歌うじゃないですか。その人たちのリアリティが凄く伝わってくるし、ラップはポップスよりも言葉数が多いので、言いたいことをしっかり言っている人が沢山いるんですよね。音楽としてももちろん好きなんですし、マインド的な部分でもカッコいいなって思います。

ー真結さんがセレクトした楽曲を見ると、Cornelius以降の3曲は想像力を刺激するようなイマジナリーな音楽が続きますね。

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真結:

まさにそういう音楽が好きです。自分自身、曲を作る時にはその曲の世界を作るような感覚で音を選ぶので、自然とそういう音楽から影響を受けているのかなと思います。Corneliusの曲って、聴く側の感覚が研ぎ澄まされてく感じがありますよね。曲の中にある音を一つひとつの聴き取れるのが気持ち良いんです。Corneliusの「Fit Song」を聴いてもらって、その感覚を持っている状態で私達の曲を聴いてもらいたい。そうすると、ペンギンラッシュの曲も違う音が聴こえるんじゃないかなって思います。

ーPeople In the Boxは、Narikenさんも好きって言ってましたね。

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真結:

はい。Narikenさんから薦められてハマった口です(笑)。この曲(「風景を一瞬で変える方法」)はタイトル通りの曲というか、本当に曲の中で景色が変わるんですよね。しかもそれぞれの景色が凄く深いところまで見える気がするような、凄く広い世界を感じる1曲です。波多野さんの声によるところもあると思うんですけど、音使いやコード感が独特で、曲の世界を広げるような作られ方がされているなって思います。

ーつまり、真結さんも曲を作る時にはそれを心がけていると。

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真結:

そうですね。私はその曲が持つ世界を大事にしたいので、プレイヤーが演奏しているイメージをなくしたいんですよね。一番に音楽の世界があって、私達はその曲に必要な音を弾いているだけ、という感覚があります。今回のSnarky Puppyの「Beep box」を選んだのもそこに理由があって、Snarky Puppyって、天才バンドみたいなグループじゃないですか。実際私も彼らの超絶技巧を聴いて参考にしたりするんですけど、「Beep box」はプレイよりも曲の景色が先に入ってくる曲だと思うんです。

ー死ぬほど技術うまい人達が、技術より曲の情景を大切にした曲だと。

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真結:

あんな凄い人達が作るそういう曲って、面白いですよね。雰囲気というか、空気感を重視して作られたような曲で、この曲が一番アルバムのジャケット風景をイメージさせるんです。私はこの曲を聴いて乾いた砂の上に椅子が置いてあるジャケを思い浮かべたので、私達の曲からも聴いてくれた人が景色を感じてくれたら嬉しいです。
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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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Yosuke Demukai

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Ba.浩太郎、Key.真結、Dr.Nariken、Vo.Gt.望世

名古屋出身。高校の同級生であった望世、真結を中心に結成。
2017年に2人をサポートしていた浩太郎とNarikenが正式加入し現4人体勢に。
昨今のバンドサウンドとは一線を画す、ジャンルレスなアンサンブル、独自のメロディライン、言い換えるならば現在のPOPs シーンに存在しない“違和感” で構成されるJ-POP。
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