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文: 黒田 隆太朗 写:Dennis Elliott
Sen Morimotoの作る独創性なポップは、瞬く間にインディリスナーを魅了した。ジャズのサックス奏者として培われた変幻自在の即興性と、ヒップホップのエッセンスをブレンドするセンスは、紛れもなく今求められる才能だったのだろう。
88risingのメディアで公開されバズを起こした「Cannonball」と、その気運のまま高い評価を獲得した前作アルバムから2年。Sen Morimotoがセルフタイトルのセカンドアルバムを完成させた。この2年の間に各地をツアーする中で受けた刺激とアイデアが、ふんだんに盛り込まれているというアルバムで、夢の中へと溶けていくような淡い色彩の音色と、美しいソングライティングには一層磨きがかかっている。また、KAINAやJOSEPH CHILLIAMSをはじめとした多くのシカゴ・ミュージシャンが名を連ねる本作は、彼の所属するシカゴ・コミュニティの豊かさを証明するものでもある。コロナ禍のシカゴで暮らすSen MorimotoにZOOMを通して接触。新作について話を聞いた。
ーAAAMYYYとコラボした「Deep Down」のリリースは、日本のファンにとっても嬉しいニュースでした。どのような経緯で実現したものですか。
彼女のことは昨年の日本ツアーの時に紹介してもらって、ほとんどすべての公演を彼女と一緒に回ったんだよね。事前に音楽をチェックしたら、音としてミニマリストだったし、きっと完璧主義者なんだろうなと思うほど全てが整っていて、ライブも素晴らしかったね。それでツアーを終えてアメリカに帰ったあと、この作品を作り始めた時にTwitterを通して連絡して。一緒に楽曲を作ろうと思ったんだ。
ーこの1、2年愛聴していた作品や、影響を受けた音楽はありますか。
Jon Bapをよく聴いているよ。数学的なバランスで、調和の取れた音楽だと思う。自身の家でレコーディングをするDIYなところとか、インストルメンタルの使い方やメロディが凄く好きなんだよね。あと、もうひとりはイギリスで活動しているRina Sawayama。彼女の音楽は、2000年代初頭のJustin TimberlakeやSlipknotを思わせる、めちゃくちゃイカした爆発的なポップミュージックだと思う。
ーアジアにルーツがあるという点で、Senさんとも共通点がありますね。
僕はアメリカ人としてアメリカにおける音楽、特にジャズやR&Bから影響を受けているし、きっと(イギリスで育った)彼女もそうだと思うんだよね。つまり、僕はアジア以外の音楽に影響を受けた、アジアにルーツを持つアーティストがどんな表現をするのかっていうのことに興味があるんだ。もしかしたら、それも彼女に惹かれる理由のひとつなのかもしれないな。
ーセルフタイトルの新作『Sen Morimoto』は、柔らかくドリーミーな音色が印象的で、どちらかと言えば前作よりも内生的な作風になっているように思いました。ご自身ではどんな手応えを持っていますか。
多くの要素は夢からきていて、現実をどうキャプションするかっていうことを考えて作ったところがあるから、そこで今言ってくれたようなドリーミーさが出ているのかなと思う。
ーなるほど。
ツアーをしたことが凄く良かったんだよね。前作の『キャノンボール』をリリースしてからすぐにこの作品に取り掛かったんだけど、アルバムのツアーでは慣れない土地を旅して、自分の知らない環境で眠るわけだよね。そうした非現実的な活動が、僕の思考に影響を与えたみたいなんだ。そこで生まれた新しい感覚が音には表れていると思う。トラベリングしている感覚を、たとえば水の動きであったりメタファーを使って表現していているんだ。そして『キャノンボール』よりもサウンドにフォーカスしたアルバムで、いろんなことを試したエクスペリメンタルな作品になったと思う。
ーサウンドにフォーカスしたというのは?
今回は「どんな音を作り、どんな作風にするのか」っていうサウンドのデザインを、事前に考えてからレコーディングに臨んだんだ。それは僕にとってニュープロセスだったんだよね。たとえば一緒にツアーをしたAAAMYYYから学んだことでもあったし、他のツアーで一緒になったアーティストからも学ばせてもらったことで、正確にビジョンが見えていることで一つひとつのサウンドに集中して作ることができる。今回のアルバムではその行程を凄く大切にしていたよ。
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