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文: Kou Ishimaru 編:Kou Ishimaru
ラッパー・JUBEEが、JESSE(RIZE / The BONEZ)を客演に迎えた最新曲「Vision feat. JESSE」をリリース。さらに楽曲制作の裏側や、2人が共演した恵比寿リキッドルームでのイベント<CROSSOVER>に密着したドキュメンタリーテイストのMVもあわせて公開されているほか、ライター・石井恵梨子による同曲にまつわるレポートも到着した。
この曲が初披露されたのは5月2日のリキッドルーム。JUBEEがオーガナイザーを務めるミクスチャーイベント「CROSSOVER」にThe BONEZとAge Factoryが登場した日のことだ。
2組のロックバンドを招き、自らアウェイの立場に立つJUBEEの、なんとも楽しそうだったこと。ジャンルの壁を飛び越え、The BONEZのメンバー全員と肩を組み、Age Factoryのステージでは誰よりいかついシャウトをかます。そこに借り物感はまったくなかった。ただ単にバンドをやりたい人なのかといえばそうでもなくて、自分のステージではDJ BAKUとの2ターンテーブルセットで「ヒップホップの流儀でやる」とまっすぐ語りだす。
歪んだエレキギターを遠慮なくサンプリングしたトラックに乗り、思わず首を振りたくなるタテノリを強調したラップをぶちかますJUBEEが、今最もロックシーンに近い場所にいるMCであることは理解できた。彼がこよなく愛しているのがマッドカプセルマーケッツであることも、90年代の空気を知る世代にはよくわかると思う。
既視感がある。だが同じではない。確実にフレッシュな何かをまとっている。
ロック×ラップの競演を遡れば、アンスラックスとパブリック・エネミーの「Bring The Noise」(1991年)、まるごと異種交流企画となったサントラ『JUDGEMENT NIGHT』(1993年)などの例がある。互いにリスペクトがあり、商業ベースではなくマインドで繋がっていた。そのうえで、ここから本気で面白いことを巻き起こしていく気概があった。そうした海外の潮流に呼応しながら進化していったのが90年代中盤のマッドカプセルマーケッツであり、そのマッドに強く影響を受けていたのが2000年にデビューしたRIZE、JESEE率いるミクスチャー・バンドだった。これらのスピリットを継承するJUBEEが望むのは、そのような興奮を現代に再び巻き起こすこと。ヒップホップの流儀を貫いたまま、こちらから現役ロックバンドに熱い眼差しを注ぎ、複数名で作るグルーヴの中に飛び込んでいくことなのだと思う。
90年代はガチンコの正面衝突だったロック×ラップは、2024年の今、より多面的で柔らかい歌のかたちになる。ひとまわり年の離れたJESSEの胸を借り、ゆったり歌い、共に声を出す。〈舗装ない道彷徨ってた〉JUBEEと、〈未知なる物にそそられて生きた〉JESSEが、〈同じ道行く同士〉だと気づく過程がとても美しい「Vision」。これがヒップホップかロックかはどちらでもいいだろう。ただ、両者のファンを巻き込んでいきそうな「みんなの歌」が生まれた。80年代のアンスラックスも、90年代のマッドカプセルマーケッツもそうだ。あらゆるパイオニアは最初ジャンルの常識に囚われないはみ出し者だった。その意味ではJUBEEが今ヒップホップ・シーン随一のはみ出し者である。言い換えれば、何かを変えようと本気で動き出している、ということだ。
RELEASE INFORMATION
『Vision feat. JESSE』
2024年5月22日(水)
JUBEE,JESSE
配信リリース外部リンク
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