境界を溶かすsamayuzameの音楽

Review

文: vcr  編:Kou Ishimaru 

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はsamayuzameをご紹介します。

身も心も委ねてリラックスして

ジャンルのボーダーがなくなりつつある、現代の音楽。これからは、現実、空想、仮想といった、世界の境界をも超えることが可能かもしれない。samayuzameの生み出す音楽は、そんな世界を期待させてくれる。

1998年生まれの新世代シンガーソングクリエイター、samayuzame。彼女はボーカロイドに影響を受け、10代から独学で楽曲制作をはじめ、インターネット上で楽曲を発表してきた。2018年からシンガーソングライターとしての活動もはじめ、東京藝術大学 音楽環境創造科を卒業後は、自身の楽曲以外にも劇伴や楽曲提供を行うなどインディペンデントな活動を続けている。

2ndアルバム発売後初となるデジタルシングル「クロニック・クリニック」は作詞から編曲、マニピュレートに至るまでsamayuzame個人で完結させた作品。無機質な電子音をベースとしながらも、不規則なリズム、柔らかな歌声によって、不思議な有機さを感じるエレクトロニカ的サウンド。変化していくトラックからは、何かに抗う者の静かな葛藤が感じられる。

彼女の楽曲は、別世界をみているようで、実際は彼女のフィルターを通して見た現実の世界なのだろう。現実逃避のようであり、しっかりと現実に囚われているというアイロニーは、中毒性抜群だ。

無機、有機、現実、空想、仮想といった境界の狭間を浮遊できるのでは、ボーカロイドから受けた影響や花譜、ヰ世界情緒らKAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガーへの楽曲提供を行ってきた、彼女だからこそ感じられる感覚があるのだろう。

油断すると、自分の世界線を見失ってしまいそうだ。

samayuzame

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