歌に日々を乗せる田渕冬也

Review

文: DIGLE編集部 

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回は田渕冬也をご紹介します。

個人的な想いに光を当てて

私たちはそれぞれに、一人で抱えておくには持て余してしまうほどの想いを、どうにか飼い慣らして生きている。その方法は人の数だけあって、例えば、ただひたすら心の中で向き合ったり、日記を書いたり、運動をしたり、写真を撮ったり。
きっと、田渕冬也にとっては、歌を歌うことがそうなのだと思う。

ロックバンド・Bambi clubのフロントマンとしても活動する田渕冬也のファーストアルバム『うたのうたかた』がリリースされた。全編アコースティックギターでの弾き語りを軸としたシンプルな構成は、まっすぐに田渕の歌と言葉を伝えてくれる。暮らしの中に揺蕩う憂鬱や閉塞感、人と関わることで生まれてしまう摩擦といったものがテーマとしてたびたび上がっているが、それを苦しみのまま閉じ込めるのではなく、まろやかな歌として昇華するところに光を感じるこの作品。言葉に浮かぶネガティヴなイメージを包み込む軽やかなメロディラインは心地よく、明るさと暗さ、どちらにも傾きすぎないそのバランスがぴたりと心に寄り添ってくれるような1枚になっている。

生活や天気に惑わされ、揺らぎやすくもなるこの季節。このアルバムは、お守りのようにあなたの日々へ馴染んでくれるだろう。

田渕冬也

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