mdrmが連れてくる夜明け

Review

文: DIGLE編集部  編:Kou Ishimaru 

BIG UP! ユーザーの中から、今聴きたいアーティストをピックアップ! 今回はあじさい切符でをご紹介します。

孤独に寄り添う言葉と音

きっと、どの時代だって若者は悩んでいる。
それにしても、2022年現在、これだけ混乱の時代を生き抜かねばならない世代はそういないのではないだろうか。
mdrmは、今までにない閉塞感と向き合う私たちの等身大に寄り添う音楽を作り出す。

ローファイビートやベッドルームポップ、シューゲイザーの空気を纏い、温度は低く、しかし湿度は感じられるようなトラックの上で男声と女声がやわらかく重なる。
そんなEP『緩やかな窒息』に収録されている楽曲のタイトルは『宵の口』『奈落』『明朝にて』そして表題『緩やかな窒息』と、移ろう時代の中への寄る辺なさを感じさせるフレーズ選びだ。
歌い上げると言うよりも、訥々と語るように、ひとつひとつ言葉を手放していくように表現されるボーカルは、聞き手の心の奥までするりと入り込んでいく。
そうして描かれる心象風景は決して明るいものではないが、ただ後ろを向いているだけでもない。
このEPに立ちこめる暗さは、どこへも行けない孤独の暗闇ではない。
諦めと希望が溶け合う、夜明け前の空の暗さなのだ。

やるせない自己否定も、やり場ない怒りも、誰かに分かってほしいわけじゃないけれど、ずっと一人でいるのも苦しい。
そんなとき、mdrmの音楽となら、分かち合えるものがある気がしてしまう。

mdrm

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