映画まとめ|年末だからこそ観たい、LGBTQ+の人々を描いた物語

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文: 安藤エヌ  編:Mao Ohya 

LGBTQ+当事者たちが登場するクィア映画は、時代の変遷に合わせて描かれ方が変わってきた。本記事では、『キャロル』『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』など、ラブストーリーから青春映画、ロマンス溢れる物語や芸術美をきわめた作品まで、年末である今だからこそ観たいクィア映画を8本を厳選。

LGBTQ+当事者たちが登場するクィア映画は、時代の変遷に合わせて描かれ方が変わってきた。多様性(ダイバーシティ)の尊重を目指す社会となり、彼らの存在と自由な生き方について考えることは、欧米諸国だけでなく世界中で重要性を持つようになってきている。

今ではNetflixをはじめとした大手配信サイトで映画コンテンツがより気軽に視聴できるようになり、多様な人々について考えるきっかけを与えてくれる。

そこで、年末である今だからこそ観たいクィア映画を8本厳選した。ラブストーリーから青春映画、ロマンス溢れる物語や芸術美をきわめた作品まで勢揃いなので、ぜひこの機会に触れていただけたらと思う。

年末だからこそ観たいクィア映画 8選

恋と葛藤を瑞々しく描く『トムボーイ』

全編を通して女性が主体となっている『燃ゆる女の肖像』を手掛けたセリーヌ・シアマ監督の作品。主人公である10歳の少女・ロールが、引っ越し先の土地で新たに知り合った友人たちに自分を少年であると思いこませ、そこから生まれる恋と葛藤を瑞々しく描く。

幼少期におけるアイデンティティーの混乱という繊細なテーマを、シアマ監督がオーディションの初日に運命の出会いを果たしたという主演のゾエ・エランがフレッシュに演じた。『燃ゆる女の肖像』で2019年・第72回カンヌ国際映画祭における脚本賞を受賞した監督の手腕が光る一作となっている。

身も心も焦がすような恋『キャロル』

『オーシャンズ8』『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットに『her/世界でひとつの彼女』のルーニー・マーラという、美貌だけでなく確かな演技力を兼ね備えた二大女優の共演で描かれたロマンス映画。

舞台は1950年代ニューヨーク。クリスマスに出会った女性2人が、身も心も焦がすような恋に落ちるさまをドラマチックに描く。

現実のわずらわしさや苦しみから離れるために逃避行をするふたり。情愛や嫉妬、憧れや喪失といった心の機微を、まるで上質な小説を読んでいるかのように編みだす主演ふたりの演技は必見。ぜひ、クリスマスの夜に観てもらいたい。

青年2人の葛藤を描いた『マティアス&マキシム』

『わたしはロランス』『Mommy/マミー』など、鮮烈かつ芸術的な作品を世に送り出し続け、自身も俳優として活躍している気鋭グザヴィエ・ドランの監督&主演作。

幼なじみで親友でもあるマティアスとマキシム。つかず離れずの関係だったふたりだが、とある出来事を経て、長らく変わらなかった関係性が変容していく。友情と恋心の狭間で揺れる青年2人の葛藤を描いた青春ラブストーリー。

主人公の1人であるマキシムをドランが演じ、彼の友人役として実際にドランの友人たちが出演したり、自身の故郷であるカナダのケベック州で撮影するなど、彼にとってのホームともいえる作品となっている。

青春ラブストーリー『BOYS/ボーイズ』

こちらも青年が主人公の青春ラブストーリー。

主人公は陸上部に所属する15歳の青年・シーヘル。チャンピオンシップ大会に向けて結成された強化チームのメンバーに加わることになった彼は、同じチームのマークという青年に出会う。快活で自由な彼と接しているうち、シーヘルの中に友愛なのか恋なのか分からない感情が芽生え始め……

オランダの悠然で穏やかな自然美が際立つ本作。湖を泳ぎ、互いの身体を向けあいほんの一瞬だけ触れ合うシーヘルとマークの姿は特に印象的で、ポスタービジュアルにも採用されている。ティーンが抱く青々しい恋と、その美しさを味わえる1本。

情熱的に織り成すドラマ『ダンサー そして私たちは踊った』

ジョージアの国立舞踏団を舞台に、若きダンサーたちが情熱的に織り成すドラマを描いた作品。

主人公メラブを演じたレバン・ゲルバヒアニが魅せる圧倒的なダンスシーンを含め、類まれな芸術美で観客を魅了し、第92回アカデミー賞国際長編映画(外国語映画)部門のスウェーデン代表に選出された。

心をかき乱し、愛というものを知り、世界を大きく変えられたメラブがラストシーンで見せるジョージアダンスは圧巻。”すべてを狂わせた恋だけが、彼を変えていく”というキャッチコピーが胸に沁みる、美と躍動感を兼ね備えた作品となっている。

短い時間で恋に落ちる『WEEKEND ウィークエンド』

『荒野にて』『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が2011年に手がけたラブストーリー。タイトルの通り、週末の2日間という短い時間で恋に落ち、互いをさらけ出し、求め合う青年2人を描いた作品。

全編を通して人間性の描写に富んでおり、主人公であるラッセルとグレンのこだわりや普段考えていることなどを会話劇として長回しするシーンが目立つ。

互いに別々の人間であり、好きなものや生い立ちも違うけれど、ふたりは凹凸を埋めるように愛し合う。欠陥や憎めない部分も含めた人間の愛おしさを感じられる、週末に観たい1本。

孤独な青年の愛の行方を描く『ゴッズ・オウン・カントリー』

今年4月に劇場公開された『アンモナイトの目覚め』を手掛け、女性同士の激しくも美しい恋を活写したフランシス・リー監督の長編第1作。

“神の恵みの地”と呼ばれるヨークシャーを舞台に、大自然の中で求め合う2人の孤独な青年の愛の行方を描く。当初わずかな劇場のみで上映されていたのが口コミで話題となり、規模を拡大して公開された。

リー監督の作風ともいえる自然描写が際立っており、凍えるような北風、荒廃した大地、焚火の音など、視覚や聴覚で感じられる自然の雄大さに注目。主人公ふたりが見せる、剥き出しの情愛に呼応するような世界の息吹を感じてもらいたい。

高校生活最後の一夜『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

『リチャード・ジュエル』『トロン:レガシー』などに出演した女優オリビア・ワイルドの長編監督デビュー作。主演は今年10月に公開された『ビルド・ア・ガール』でも主演を務め、”次世代のエンパワーメント女優”として話題沸騰中のビーニー・フェルドスタインと、『ショート・ターム』のケイトリン・デバー。

クラスメイトたちが想像以上に日々を謳歌していたことを知りショックを受けた真面目なふたりが、高校生活最後の一夜に羽目を外そうと意気込み、パーティーに躍り出る。

ハイテンションなティーン映画でありながら、LGBTQ+やルッキズムへの気づきを得られるシーンを盛り込んでおり、彼女たちと同じ年代の学生たちにぜひとも観てもらいたい作品。


友人や家族と、恋人やクラスメイトと……映画を観たあとにどう感じたかをディベートしたり、好きなシーンを言い合ったりできるような作品ばかりなので、楽しく学びの多い時間を過ごしてもらえたら幸いだ。

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